焦げ付き防止のフライパンに食べ物がこびりつく原因とは?
「焦げ付き防止」をうたったフライパンなのに「加熱中に食べ物がこびりついた」という経験のある人も多いはず。焦げ付き防止のフライパンに食べ物がこびりつく現象について、チェコ科学アカデミーが「温度差によって油の厚みに差ができることが原因」という研究結果を発表しました。
On formation of dry spots in heated liquid films: Physics of Fluids: Vol 33, No 2
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0035547
Why food sticks to nonstick frying pans
https://phys.org/news/2021-02-food-nonstick-pans.html
チェコ科学アカデミーのアル・フェドルチェンコ氏らが行った実験は、焦げ付き防止をうたうセラミックフライパンとテフロン加工のフライパンの2つでひまわり油を加熱するというもの。フェドルチェンコ氏らは、実験の様子をビデオ撮影することで、加熱中にはフライパン中央部に油のない部分が形成されることを確認しました。
この現象について、フェドルチェンコ氏らは温度勾配が原因だと指摘。「ひまわり油などの一般的な液体の場合は温度の上昇に応じて表面張力が低下するため、特に温度の高い中心部の表面張力は他に比べて一段と低くなり、結果として油膜が中心部から破断する」と結論づけました。フライパンの中央に油がない部分が生まれることで、中央部分に焦げ付きやこびりつきが発生しやすくなるというわけです。
さらにフェドルチェンコ氏らは流体力学に基づいた計算によって、油膜が中央部から破断する条件を特定。焦げ付かないように中央部にまで油をとどめておくには、「油の量を増やす」「加熱をほどほどにする」「キレイにフライパンの表面に油を引く」「底の厚いフライパンを使う」「調理中に適時かき混ぜる」ことがポイントだと語りました。
フェドルチェンコ氏らは、問題の現象が大気汚染防止装置の洗浄塔などの工業設備においても発生しうると指摘し、「油膜の破断は電子部品の急激な加熱を引き起こし、ダメージを与えます」と言及。今回の研究結果がフライパンに限らず、幅広い分野に転用できる可能性があると語っています。
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