すばるの「六連星」は10万年前は「七連星」だったかもしれないと天文学者が語る
自動車メーカー・SUBARUの名前の由来である「すばる(昴)」こと、おうし座の散開星団「プレアデス」は、SUBARUのロゴマークにも描かれるように「六連星」として知られています。これは、望遠鏡で見るともっと多くの星が見えるものの、肉眼ではだいたい6つに見えるためです。しかし、過去にははっきりと「七連星」に見えていたのではないかという見方を天文学者が示しています。
The world's oldest story? Astronomers say global myths about 'seven sisters' stars may reach back 100,000 years
https://theconversation.com/the-worlds-oldest-story-astronomers-say-global-myths-about-seven-sisters-stars-may-reach-back-100-000-years-151568
ウエスタンシドニー大学のレイ・ノリス教授によると、プレアデス星団はギリシャ神話をはじめとする多くの文化で「7姉妹」として扱われているとのこと。
ギリシャ神話の場合、ティターン神族の勇者アトラスと下級女神(ニンフ)・プレイオネの娘で、マイア、エレクトラ、タユゲテ、アルキュオネ、ケラエノ、アステロペ、メロペの7人が「プレアデス(プレイアデス)」と呼ばれています。
ゼウス率いるオリュンポスの神々と、クロノス率いるティターン神族との戦いが起きたとき、オリュンポス側が勝利してほとんどのティターン神族は冥界(タルタロス)に送られましたが、アトラスのみ、世界の西の果てで天空を支えるという重い罰を与えられました。
アトラスが不在になると、プレアデスはギリシャ神話一の狩人で好色なオリオンに追い回されるようになり、ゼウスの計らいで星となりました。
7姉妹なので7つ星になるはずですが、「姉妹のうち1人が人間と恋に落ちて隠れるようになったから」などの理由で星は1つ少ない6つ星である……というのが、各所の伝承に残されています。
ノリス教授によれば、この種の伝承はヨーロッパ、アフリカ、アジア、インドネシア、ネイティブアメリカン、アボリジニ(オーストラリア先住民)に伝わっているとのこと。当初、教授はヨーロッパ人がオーストラリアにギリシャ神話を持ち込んだのではないかと考えましたが、アボリジニの伝承はヨーロッパ人と接触するより前からのものであるとみられました。この場合、アボリジニは5万年にわたりほとんど他の文化とは接触していないことから、相当昔から似たような伝承が世界に存在したということになります。
ノリス教授が推測した、伝承が世界に散らばる理由は、プレアデス星団の星の位置にあります。つまり、10万年前の星の位置であれば、2020年時点でほぼ重なって見える星が離れていたので「6つ星」ではなく「7つ星」に見えていた、という考えです。
実際に、ガイア宇宙望遠鏡などを用いた観測でも、2つの星がほぼ重なっていて、1つの星のようにも見えているとのこと。このことから、そもそも「7姉妹」の伝承は、人類がアフリカから出る以前の10万年前に存在し、その後、各地で語られるようになったのではないか、というわけです。
もしこの推測通りであれば、ひょっとするとプレアデスにまつわる話は、世界最古の物語なのかもしれません。
なお、実際にはプレアデスは7姉妹だけではなく、父・アトラスや母・プレイオネの名をつけられた星もあります。2020年(上)と10万年前(下)の位置関係はノリス教授によると以下のような感じ。
星の明るさを示す等級順に7つ並べるとアルキュオネ、アトラス、エレクトラ、マイア、メロペ、タユゲテ、プレイオネとなり、アトラスにプレイオネが重なっている状態なので、姉妹うんぬんのエピソードは当てはまらないことになります。
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