ダーウィンが「進化論」に関するアイデアを記したノートが図書館から消える、盗難の可能性も
イギリスの自然科学者であるチャールズ・ダーウィンは、さまざまな生物種が自然選択によって進化して現在の形態になったとする説を唱え、「種の起源」を出版したことで知られています。そんなダーウィンの「種の起源」のアイデアが書き記された貴重なノートが紛失し、盗難に遭った可能性もあると、ケンブリッジ大学図書館が2020年11月24日に発表しました。
Darwin's missing notebooks
https://www.cam.ac.uk/stories/DarwinAppeal
Giant Search Confirms Charles Darwin's Notebooks Are Missing, Presumed Stolen
https://www.sciencealert.com/charles-darwin-notebooks-stolen-from-cambridge-university-20-years-ago
Cambridge University says Darwin's iconic notebooks, missing for years, were stolen
https://www.nbcnews.com/science/science-news/cambridge-university-says-darwin-s-iconic-notebooks-missing-years-were-n1248985
ダーウィンが進化論や自然選択説を唱える上で重要な出来事となったのが、1831年末にイギリスを出港したイギリス海軍の測量船・ビーグル号に乗船し、世界各地を見て回ったことでした。ダーウィンは航海の中で南半球における動物相や植物相の違いを感じ、生物の種は不変のものではない可能性があると考え始めたとのこと。
1836年10月に帰国したダーウィンは1837年の夏に、種が分岐する可能性を示した「生命の樹」と呼ばれるスケッチや、進化論に関する先駆的なアイデアを革張りのノートに書きとめました。以下の写真が、実際にダーウィンのノートに記された「生命の樹」です。ダーウィンはこのアイデアを発展させ、航海から20年以上が経過した1859年に「種の起源」を発表しました。
by Charles Darwin/University of Cambridge
ケンブリッジ大学図書館には世界で最も重要とされるダーウィンに関するコレクションを有しており、その中でも特に希少で価値があるものを「Special Collections Strong Rooms」という特別保管庫に収蔵していました。この保管庫の中では、「生命の樹」が記された「Notebook B」というノートが、「Notebook C」と名付けられたノートと同じ箱で保管されていたそうです。
2001年1月の定期点検時に、Notebook BとNotebook Cのを収めたペーパーバックサイズの箱が適切な場所に戻されておらず、2冊のノートが行方不明となっていることが発覚。詳しい調査を行ったところ、2000年9月に行われた写真撮影の際に持ち出されて以降、保管庫に戻されていなかったことが明らかになりました。
当初、これらのノートは広大なケンブリッジ図書館のどこかにあると考えられていましたが、長年にわたって2冊のノートが発見されることはありませんでした。2020年初頭になって、ケンブリッジ大学図書館は専門のスタッフを動員して、直線距離にして約100mにも及ぶダーウィン関連資料を収めた棚を含む広範囲を捜索。しかし、この図書館史上最大規模の捜索でもノートは発見されず、ケンブリッジ大学図書館は「ノートが紛失しており、盗まれた可能性がある」と結論づけました。
ケンブリッジ大学図書館はダーウィンの貴重なノートが紛失したことを、1859年11月24日に「種の起源」が出版されたことを記念して制定された「進化の日」に合わせ、2020年11月24日に公式ウェブサイト上で発表しました。すでにケンブリッジシャー警察にノートが紛失し、盗難された可能性があると届け出ているほか、国際刑事警察機構(ICPO)が管理する盗難された文化財データベース「Psyche」にも登録したとのこと。
今回紛失したノートの価値についてケンブリッジ大学図書館は、「ノートブックの価値を見積もるのは困難ですが、おそらく数百万ポンド(数億円)に達するでしょう」とコメント。2017年から大学図書館員兼図書館サービスディレクターを務めるジェシカ・ガードナー博士は、「私はダーウィンの象徴的な『生命の樹』を含むノートが所在不明であることに心を痛めています」と述べ、発見のために全力を注ぐと表明しました。
ガードナー博士は、世間に向けたアピールによってノートが安全に戻る可能性があると主張しており、過去のスタッフや書籍業界の関係者、研究者、一般の人々からノートの行方に関する情報を集めたいと訴えています。また、ケンブリッジ大学図書館全体では210kmに及ぶ棚があり、「Special Collections Strong Rooms」だけでも棚の直線距離が45kmもあるため、依然として図書館のどこかに置かれている可能性もあるとのこと。資料が箱の中に収められているケースも多く、全ての範囲を捜索するにはさらに数年以上がかかるとみられています。
ケンブリッジシャー警察のシャロン・バレル氏は、「これらの貴重な文化財の所在を知っている人が私たちに連絡するように呼びかけています。ノートは大学や科学史に興味がある人にとって非常に貴重かつ重要です」と述べ、一般の人々からも広く情報を募るとしています。
なお、Notebook BとNotebook Cはいずれもデジタルアーカイブが残っているため、ケンブリッジ大学図書館の公式ページから内容を見ることが可能です。
Darwin Manuscripts : Notebook B
https://cudl.lib.cam.ac.uk/view/MS-DAR-00121/1
Darwin Manuscripts : Notebook C
https://cudl.lib.cam.ac.uk/view/MS-DAR-00122/1
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in メモ, Posted by log1h_ik
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