なぜコーヒー好きのイタリア人はカプチーノを午前11時以降に飲まないのか?
世界にはさまざまなコーヒー文化があり、スパイスを入れたり、チーズと合わせたり、生たまごを泡立てたものをのせたりと、色んな飲まれ方がされています。イタリアでは独自の文化が深く根付いているために、スターバックスが2018年まで進出できなかったほど。そんなイタリアのコーヒーショップ「バール」には「午前11時以降はカプチーノを飲まない」という不文律があるとのこと。なぜこのようなルールができたのか、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップで優勝して世界一のバリスタとして認められたJames Hoffmannさんが解説しています。
Why Italians Don't Drink a Cappuccino After 11am - YouTube
イタリアにはコーヒー文化が深く根付いており、観光客がバールに行くと、いくつもの不文律に遭遇することになる……とHoffmannさんは語ります。
その1つが「午前11時以降はカプチーノを飲まない」というもの。
バールの店員は11時以降にカプチーノを飲まない理由について「牛乳が重すぎる」と語ります。
Hoffmannさんは午前11時以降にカプチーノが避けられる理由として「イタリア人の多くが乳糖不耐症であること」を述べています。乳糖不耐症は「乳糖吸収不全」とも呼ばれ、体内で乳糖(ラクトース)がうまく吸収されない結果、下痢や消化不良などが発生することをいいます。
乳糖はガラクトースとグルコース(ブドウ糖)が結合した二糖です。
乳糖が消化・吸収されるためにはまずはこの2つの糖を分解する必要がありますが、2つの繋がりは固く、分解のためにはラクターゼという酵素が必要になります。
動物の多くは生まれた時からラクターゼを作り出すことができます。赤ん坊は親の母乳で育つため、乳糖を分解できる必要があるためです。
なお、乳糖は果糖やブドウ糖に比べて甘さの少ない糖といわれています。一般的に料理に使われるスクロース(ショ糖)の甘さを1とすると、乳糖は0.16ほどの甘さ。これは赤ん坊が母乳を求めつつも、飲み過ぎを防ぐためだと考えられています。
ほとんどの動物は固形物を食べるようになると、母乳といった動物の乳を飲まなくなりますが……
人間だけは例外で、成長してからも牛乳などを飲みます。
しかし、他の哺乳類と同じく、人間も成長すると乳糖を分解するラクターゼの生成がストップするとのこと。このため、牛乳を飲むと分解されないままの乳糖がお腹の中に残り、菌のエサとなることで、ガスが発生したり、消化不良や下痢を起こしたりするわけです。
世界人口のうち実に65%が乳糖を分解できないといわれているそうです。
一方で、「家畜として牛を飼う歴史が長い場所とそうでない場所」や「牛乳を保存できる気候とそうでない気候の場所」といった要素で、地域によって乳糖不耐症である人口の割合に差があるといわれています。
また、ヨーグルトやケフィアなどは発酵の過程で乳糖が一部分解されており、消化・吸収されやすくなっています。
チーズも同様で、ハードなタイプのチーズは牛乳に比べて5%ほどの乳糖しか含まれていないとのこと。
このため、チーズという乳製品を多く食べるイタリアでも、乳糖不耐症の人が多くいます。イタリア国内の調査では、他の国に比べて乳糖不耐症の人が多いこと、北部は南部に比べて乳糖不耐症の人が少ないことが示されているとHoffmannさんは語ります。
イタリアではミルクをたっぷり使ったカプチーノがよく飲まれますが、カプチーノが提供されるカップは非常に小さく、使われる牛乳の量は100mlほど。一度に150mlほどであれば、乳糖不耐症の症状を経験する人は少ないそうです。
イタリア人は朝にカプチーノを飲むことが多いので、「1日2杯以上のカプチーノを飲まない方がいい」という経験が、「朝11時以降にカプチーノを飲むべきではない」という認識になったのだとHoffmannさんは解説。このため、1日で1杯目のコーヒーや、2杯目でも少量であれば、午前11時以降に飲んでも実は問題無いとHoffmannさんは述べています。
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