わずか6分で電気自動車を90%まで充電する可能性を秘めたバッテリー材料が開発される
世界的に普及が進んでいる電気自動車にはエネルギー密度が高いリチウムイオンバッテリーが採用されており、バッテリーの性能が電気自動車の全体的な性能に影響します。韓国の研究チームが新たに発表した論文では、「わずか6分で最大90%の充電を可能にするリチウムイオンバッテリーの材料を開発した」と報告されています。
Ultrafast kinetics in a phase separating electrode material by forming an intermediate phase without reducing the particle size - Energy & Environmental Science (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2020/EE/D0EE02518F
Charging electric cars up to 90% in six minutes
https://techxplore.com/news/2020-10-electric-cars-minutes.html
リチウムイオンバッテリーにおいて充電および放電の時間を短縮することは、バッテリーの性能向上に大きく関係してきます。これまで、リチウムイオンバッテリーにおける充電・放電性能の改善には、電極材料の粒度を小さくするという方法が用いられてきましたが、電極の粒子サイズを小さくするとエネルギー密度が低下するという欠点があったとのこと。
新たに韓国の浦項工科大学校と成均館大学校の研究チームは、電極材料の粒子サイズを小さくすることなく、急速な充電・放電を行い、高出力を実現する手法を開発したと報告しました。
リチウムイオンバッテリーの電極に使われる材料は複数ありますが、充放電中に「リチウムイオンに富んだ相」と「リチウムイオンに乏しい相」に分離する相分離材料では、異なる体積を持つ2つの相が単一の粒子内に現れます。この2つの相の界面上には多くの構造的な欠陥が存在しており、これが粒子内に新たな相が成長することを阻害し、急速な充電と放電を妨げるとのこと。
研究チームが新たに開発した手法は、粒子内に緩衝構造として機能する中間相を誘導するというもので、2つの相における体積変化を劇的に減らすことが可能。中間層は粒子内に新たな相が形成・成長するのを助け、粒子内におけるリチウムイオンの挿入・除去の速度を向上するそうです。
実際に研究チームが、今回の手法によって形成された中間層がリチウムイオンバッテリーの性能に与える影響を評価したところ、中間層が形成された電極内では電気化学反応がより均一となり、バッテリーの充電および放電速度が向上したとのこと。新たな電極をリチウムイオンバッテリーに用いることで、わずか6分でバッテリーを90%充電し、18秒で54%放電することが可能だと研究チームは報告しています。
研究チームのByoungwoo Kang教授は、「粒子サイズの縮小による従来のアプローチは、低エネルギー密度と充放電速度のトレードオフでした。この研究は、急速な充放電と高エネルギー密度を実現するリチウムイオンバッテリー開発に向けた基礎を築きました」と述べました。
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