20年前のブラウン管モニターが4K液晶ディスプレイより優れている部分とは?
グラフィックボードなどのPC周辺機器の進化、PlayStation 5やXbox Series Xなどの次世代ゲーム機の登場によって、4Kゲーミングが当たり前の時代となり、4K解像度対応の液晶ディスプレイモニターやテレビも広く普及しました。しかし、ゲームをプレイする上では、20年前に使われていたようなブラウン管(CRT)モニターにも4K解像度の液晶ディスプレイに勝る点があるといわれています。
Why This 20-Year-Old CRT Monitor Is Better Than a 4K LCD
https://www.vice.com/en/article/kz4gqm/why-this-20-year-old-crt-monitor-is-better-than-a-4k-lcd
We played modern games on a CRT monitor - and the results are phenomenal • Eurogamer.net
https://www.eurogamer.net/articles/digitalfoundry-2019-modern-games-look-beautiful-on-crt-monitors
デスクトップPC向けの液晶ディスプレイモニターの上位モデルは、4K~8Kの高解像度や、144Hzや240Hzといった高リフレッシュレートに対応しています。また、ワイドディスプレイを採用したモニターの中には画面の両端が前に向かって湾曲する曲面型もあり、より広く迫力のある映像を楽しめるものもあります。
しかし、ある程度古いゲームを遊ぶ人の中には、「CRTモニターの方が液晶ディスプレイモニターよりも入力への応答が早く、遅延が少ない」と主張して、解像度が低い上に画面が小さく、容積も大きいCRTモニターを選ぶ人もいます。例えば、縦スクロールシューティングゲーム「怒首領蜂 大往生」のPlayStation 2版における最難度モード「デスレーベル」を2010年に史上初めてクリアしたMON氏は、極力遅延を減らすために、25型ブラウン管テレビを縦画面にしてプレイしているとインタビューで答えていました。
CRTモニターの画面は、数百万の蛍光体ドットでコーティングされており、それぞれのピクセルが赤・緑・青の3色で構成されています。そして、ブラウン管の奥から電子ビームを画面上部の走査線から下の走査線まで高速に照射し、3色の蛍光ドットから放たれる光の混色と残像効果でカラーの画面を映し出します。
by Peo~commonswiki
一方で、液晶ディスプレイモニターでは、ディスプレイの背面にあるバックライトから放出された白色光が、偏光フィルターを介して液晶パネルを通過します。この時、電圧の調整によってねじれた液晶の光学的性質が変わることで、光の透過量が変化し、画面が表示されます。
液晶ディスプレイモニターは液晶を物理的に変化させるのに対し、CRTモニターは電子が光子に変換するだけなので、表示方式に関して言えば、CRTモニターの方が理論的に遅延が少なくなります。また、画面全体に動きが多い場合、液晶ディスプレイモニターには動きぼやけが発生してしまうこともあります。こういった理由から、液晶ディスプレイモニターではなくCRTモニターをあえて選択するゲーマーも存在します。
YouTuberのアダム・テイラー氏は、液晶ディスプレイモニターではなくCRTモニターにこだわる1人で、Sonyの24型平面CRTモニターのGDM-FW900の動作品を見つけるため、何年も費やしているそうです。
テイラー氏によると、GDM-FW900は画面縦横比が16:10であり、4:3であるほとんどのCRTモニターよりも広いのが利点だとのこと。記事作成時点でもほとんどのゲームが16:10のアスペクト比をサポートしているため、GDM-FW900でも問題なく遊べるとのこと。また、モニターの最大解像度はリフレッシュレート80Hz固定で2304×1440ピクセルで、解像度を半分にすれば、リフレッシュレート160Hzでも表示可能と、最新の液晶ディスプレイモニターにも劣らない性能です。
実際に、SonyのGDM-FW900でPC版「CONTROL」を1920×1200ピクセル・60Hz 垂直同期の最高設定でプレイするところを、以下のムービーの5分19秒辺りから見ることができます。古いモニターなので走査線が見える部分はあるものの、映像の動きにブレやぼやけはなく、液晶ディスプレイモニターよりも暗い影の黒色がより深くなったことで、闇と光のコントラストがハッキリしている印象です。
DF Direct! Modern Games Look Amazing On CRT Monitors... Yes, Better than LCD! - YouTube
ただし、CRTモニターは液晶ディスプレイモニターよりも遅延が少ないという利点はありますが、入手や維持にお金も労力も果てしなくかかるというデメリットがあります。GDM-FW900が発売されたのは2000年7月で、すでに生産は終了しています。同様のCRTモニターは他にも、HP A7217A、sgi GDM-FW9011、Sun microsystems GDM-FW9010が販売されていましたが、記事作成時点ではどれも入手が非常に困難です。
また、CRTモニターの蛍光体ドットには寿命があり、経年劣化で画面輝度が下がっていきますが、修理は液晶ディスプレイよりも難しく危険で、今となっては修理をしてくれる店も技術者もほとんど存在しないので、買い直すのもひと苦労。また、たとえ状態のいいCRTモニターが見つかっても、アナログ出力を備えたグラフィックボード、あるいはデジタル出力をアナログ出力に変換するコンバーターが必要です。
しかし、CRTモニターの利用にどれだけ手間がかかっても、テイラー氏は「発売から20年経って市場に出回っているCRTモニターは、そのほとんどが倉庫やガレージの奥深くに眠っていて「邪魔になったからオークションに出品した」というものがほとんどです。決して訪れないリサイクルのチャンスを待つよりは、CRTモニターを遊びに使いたい人の手に渡す方がいいでしょう」と述べています。
なお、近年開発されている有機ELディスプレイ(OLED)は、電圧を加えると発光する素子層を使ったディスプレイです。製造コストが高いため、広く普及するまでには時間が必要ですが、電子を光子に変換するという意味ではCRTモニターと似ているため、液晶ディスプレイが抱える遅延や動きぼやけといった問題を解決できると期待されています。
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