サイエンス

赤ちゃんでさえ自分の選択を事後に正当化していることが判明


ドラッグストアでたくさん種類がある歯磨き粉の中から1つ選んで買ったり、パン屋の店先でパンを選んだりと、人は毎日何らかの選択をしています。多くの場合、人は「自分が好きなもの選んでいる」と考えていますが、実際には「選択が好みを決定する」というケースが存在することが、赤ちゃんを使った研究で判明しました。

When Not Choosing Leads to Not Liking: Choice-Induced Preference in Infancy - Alex M. Silver, Aimee E. Stahl, Rita Loiotile, Alexis S. Smith-Flores, Lisa Feigenson, 2020
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797620954491

Babies' random choices become their preferences -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/10/201002091027.htm

ピッツバーグ大学の心理学者であるアレックス・シルバー氏らの研究チームによると、過去の研究により「人はどちらも同じように好きなものから一方を選んだ場合、選ばなかった方を避けるようになる」ということが分かっているとのこと。しかし、こうした研究のほとんどは成人に焦点を当てたものだったため、「好みの形成にはどの程度の人生経験が必要なのか?」といった疑問が残されたままでした。


そこで研究チームは、生後10~20か月の赤ちゃん189人を対象に、「色が異なるソフトブロック」を2つ与える実験を行いました。実験では、まず赤ちゃんから少し離れた場所に各ソフトブロックが置いて、赤ちゃんがどちらか一方を選ばなければならないようにしました。

赤ちゃんが2つのうちどちらかを選んだら、次に赤ちゃんが選んだブロックを別のブロックに交換し、もう一度赤ちゃんにブロックを選ばせました。その結果、赤ちゃんの多くは新しいブロックを選択するということが確かめられました。

また、追加の実験として、最初の選択を赤ちゃんではなく研究者自身が行ってみたところ、赤ちゃんが新しい方を選ぶという現象は観察されなくなったとのこと。このことから、赤ちゃんが目新しさや本質的な好みによって選択を行っているわけではないことが示されました。


この結果について、論文の共著者であるジョンズ・ホプキンズ大学のリサ・ファイゲンソン氏は、「赤ちゃんはまるで『うーん。前回、このブロックを選ばなかったから、私はこれが好きじゃないんだと思う』と言っているかのように、確実に、自分が選択しなかったオブジェクトではなく新しいオブジェクトを選択しました」「大人には、たとえ最初の時点で好みを持っていなくても、選ばなかった方を好きではなくなる傾向があります。これと同様に赤ちゃんも選ばなかったオブジェクトのことが好きではなくなるのです」と話しました。

こうした実験からシルバー氏は、「選択をするという行為は、選択肢となったものに対する私たちの気持ちに影響を与えます」と述べ、この偏りが大人だけのものではなく、「選択」を経験し始めたばかりの乳児でさえ持っていると結論づけました。


また、ファイゲンソン氏は「人は無意識に、『私がこれを選んだのだから、私はこれを好きに違いない。私が選んでいないものは、あまりよくないに違いない』という推論を行います。つまり、我々は選択の後に自分の選択を正当化しているのです」と述べています。

研究チームは今後、赤ちゃんの選択がどのように発達するのかを確かめるため、多すぎる選択肢が人にとって負担となるという「選択の過負荷」が、赤ちゃんにも発生するのかを確かめる研究を進める予定とのことです。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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