サイエンス

「生命の起源」をアルゴリズムで解き明かす試み


生命がいつ・どこで・どのようにして誕生したのかについての問いは古くから行われてきましたが、いまだに結論は出ていません。この謎を解き明かすために、ポーランド科学アカデミーの研究チームが、「水や窒素などの基本的な分子からどのようにして生命のような複雑な分子が生まれるのか」をアルゴリズムで解き明かそうとしています。

Synthetic connectivity, emergence, and self-regeneration in the network of prebiotic chemistry | Science
https://science.sciencemag.org/content/369/6511/eaaw1955

Algorithm discovers how six simple molecules could evolve into life’s building blocks | Research | Chemistry World
https://www.chemistryworld.com/news/algorithm-discovers-how-six-simple-molecules-could-evolve-into-lifes-building-blocks/4012505.article

初期の地球の条件下において、さまざまな有機反応が起こり得るということは実証されていますが、「生命の起源」についてはほとんど解明されていません。これは初期の地球で誕生する可能性のある分子は非常に多く、特定が困難であることが主な原因とのこと。

そんな生命の起源を解明すべく、ポーランド科学アカデミーの研究チームは、「基本的な分子同士が組み合わさった場合に誕生する分子」をシミュレートするという研究を行いました。スタートとなる基本的な分子は、初期の地球においてありふれていたと考えられる、水・シアン化水素・アンモニア・硫化水素・窒素・メタンの6種類。研究の目的は、この6種類の分子が豊富に存在する環境下で、誕生する可能性のある「生命の起源につながる分子」を特定することです。


水や窒素などの基本分子だけでなく、誕生した分子同士も反応しうるという条件のもとでシミュレーションを7世代まで重ねた場合、誕生する可能性のある分子はおおよそ3万5000種類。そのうち、生命の起源につながる分子は50種類だったとのこと。以下の画像は6種の基本分子から誕生しうる分子を世代ごとに表した図の一部で、赤色が生命の起源につながる分子です。画像では、生命の起源に重要なクエン酸(左の構造式)と尿酸(右の構造式)に至るまでの反応経路が示されています。


今回の研究によって、初期の地球に豊富に存在した6種類の分子から生命の起源につながる分子も誕生しうるものの、ほとんどの場合では生命の起源につながらない分子が生まれるということが示唆されています。生命の起源につながる分子とつながらない分子の差に関して、研究チームは「生命の起源につながる分子は水に溶けやすく、熱力学的に安定しているという特徴を持つ」と指摘。生命が水の中で誕生したというこれまでの通説と合致していると説明しています。

研究チームは、「今回のシミュレーションによって、生命の起源につながる分子を生み出す反応経路を新たに20個発見した」とコメント。分子を合成するシミュレートなどの人間が不慣れな分野においてはコンピュータープログラムが活躍すると語っています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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