海中のメタンハイドレートから放出されるメタンガスが原因で海洋温暖化が進んでいる
海底に堆積しているメタンハイドレート由来のメタンガスが原因で海水の温度が上がる「海洋温暖化」が確認できたと、スウェーデンのリンネ大学の研究チームが報告しました。研究チームは、「温室効果ガスとしても知られるメタンガスが海洋から大量に放出されることで海洋温暖化が進み、長期的な気候変動が引き起こされている」と論じています。
Gas hydrate dissociation linked to contemporary ocean warming in the southern hemisphere | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-020-17289-z
Massive release of methane gas from the seafloor linked to global warming discovered for the first time in the Southern Hemisphere | lnu.se
https://lnu.se/en/meet-linnaeus-university/current/news/2020/massive-release-of-methane-gas-from-the-seafloor-linked-to-global-warming-discovered-for-the-first-time-in-the-southern-hemisphere/
メタンハイドレートは、低温かつ高圧の条件下で水とメタンによって形成される物質で、「燃える氷」とも呼ばれます。メタンハイドレートの材料になるメタンは二酸化炭素のおよそ25倍もの温室効果を持つ気体であり、海底でメタンハイドレートが分解してメタンガスが放出されることで海洋温暖化が促進される可能性が指摘されています。
by Burlasaikiran
リンネ大学生物環境学科のマルセロ・ケッツァー教授は「メタンハイドレートの分解とメタンガスの放出は数世紀にわたって続く長期的なプロセスであり、気候変動に大きな影響を与えるだけでなく、海水を酸性化させるなど、海洋環境の変化につながる可能性もあります」と語りました。
また、ケッツァー教授は「メタンハイドレートには、すべての化石燃料を合わせたよりも多くの炭化水素が、メタンの形で含まれていると推定されています。メタンガス放出による海洋の温暖化によってメタンハイドレートが解け、海中にメタンガスが放出され、そのメタンガスが原因となってさらに海洋温暖化が進む……というループが起こる可能性があります」と解説しています。
「地球の長い歴史の中で起こった過去の気候変動は、メタンハイドレートから放出されたメタンガスが原因の1つである」という考えのもと、ケッツァー教授率いる研究チームはブラジルやフランスの研究者と合同で、メタンハイドレートを採取する装置とリモート操作可能な潜水艦を使って、2011年から南大西洋の海底で探索・研究を行ってきました。
そして今回、メタンハイドレートの分解とメタンガスの大量発生を確認した上で、その流れをモデル化することができたとのこと。ケッツァー教授は「メタンハイドレートの分解とメタンガスの大量放出による海洋温暖化は全世界で起こっている現象だといえます」と述べています。
さらに、「これまでに得られたデータや結果をもとに、研究対象地域にどの程度のメタンが存在するのか、将来的にガスハイドレートが分解して海水に放出される可能性があるのかを把握したいと考えています」とケッツァー教授。メタンハイドレートだけではなく海底の堆積物にもメタンは含まれているため、研究チームは南大西洋よりも水深が浅いバルト海でも探索と研究を行っているそうです。
・関連記事
「燃える氷」ことメタンハイドレートが形成される新たな仕組みが発見される - GIGAZINE
永久凍土が解けることで放出される炭素量が想定以上だったことが判明、地球温暖化対策に影響か - GIGAZINE
突如に出現した巨大な穴は地球温暖化対策が待ったなしを示唆する時限爆弾だと科学者が指摘 - GIGAZINE
日本人研究者が太平洋でレアアース鉱床を発見、埋蔵量は既存の1000倍か - GIGAZINE
世界初、ついに表層メタンハイドレートからガスを解離・回収する実験に成功 - GIGAZINE
・関連コンテンツ