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スーパーコンピューターで新型コロナウイルスが人体を襲う仕組みが判明したとの研究結果


オークリッジ国立研究所の研究チームが、スーパーコンピューターSummitを使用した遺伝子解析により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が人体に致命的なダメージを与えるメカニズムを新たに発見したと報告しました。

A mechanistic model and therapeutic interventions for COVID-19 involving a RAS-mediated bradykinin storm | eLife
https://elifesciences.org/articles/59177

Computational gene study suggests new pathway for COVID-19 inflammatory response | ORNL
https://www.ornl.gov/news/computational-gene-study-suggests-new-pathway-covid-19-inflammatory-response

A Supercomputer's Covid-19 Analysis Yields a New Way to Understand the Virus | Elemental
https://elemental.medium.com/a-supercomputer-analyzed-covid-19-and-an-interesting-new-theory-has-emerged-31cb8eba9d63

世界的に猛威を振るっているCOVID-19に対し、IBM・Amazon・Google・Microsoftなど大手IT企業が集結し、「アメリカのスーパーコンピューティングリソースを解き放つ」と述べて、各社が保有する設備や機器を研究に役立てることを表明しています。

IBM・Amazon・Google・Microsoftが政府と協力し新型コロナウイルスの研究に330ペタFLOPSもの処理能力を提供 - GIGAZINE


IBMのPOWER9プロセッサを搭載したSummitも、COVID-19研究に投入されたスーパーコンピューターの1つ。Summitを所有するアメリカ・オークリッジ国立研究所のダン・ジェイコブソン氏率いる研究チームは、1万7000人から提供された4万件以上の遺伝子データをSummitに分析させ、遺伝子配列とCOVID-19の症状の関係を調べました。

毎秒20京回の計算が可能で、日本の富岳に次ぐ世界第2位の演算能力を誇るSummitでも、25億組みもある遺伝子の組み合わせを検証するのに1週間かかったとのこと。

Summitを使用した分析の結果、COVID-19の患者の肺胞細胞では、ブラジキニンという物質に関係した遺伝子が過剰に発現していることが判明。また、COVID-19患者の遺伝子では、ブラジキニンの働きを抑制させるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の発現が少ないことも分かりました。


ブラジキニンは血管を拡張させて血圧を降下させる作用を持つ物質ですが、過剰になると血管透過性が増して体液が血管から漏れやすくなります。COVID-19患者では、肺に体液が染み出して炎症や呼吸困難の原因になったり、つま先などに水ぶくれやしもやけに似た「(PDFファイル)COVIDつま先(COVID toe)」という皮膚症状が発生したりすることが分かっていますが、これらは過剰なブラジキニンが引き起こす「ブラジキニンストーム」で説明がつくとのこと。

ブラジキニンストームは他にも、筋肉痛、疲労、吐き気、おう吐、下痢、頭痛、認知機能の低下などCOVID-19患者に見られるさまざまな症状を説明することが可能です。また、こうした症状は既にブラジキニンが原因であることが分かっている遺伝性血管性浮腫の症状とも一致します。

これまでの研究では、COVID-19は免疫の過剰反応である「サイトカインストーム」がCOVID-19の重症化に関係しているとの説が唱えられていますが、ジェイコブソン氏らは今回の研究結果から「ブラジキニンストーム」がCOVID-19の症状の原因となっているという「ブラジキニン仮説」を新たに提唱しています。

研究チームの調べによると、今回特定されたメカニズムに作用する既存の薬は、少なくとも10種類はあるとのこと。研究チームは論文の中で「今回の研究結果は、ブラジキニンの生産を減らす医薬品などを中心とした予防と治療がCOVID-19との戦いで有益である可能性を示唆しています」と結論付けています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1l_ks

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