サイエンス

約3000年前の「神の頭部」が発見される、偶像崇拝が禁止されていた時代の珍しい事例か


イスラエルに存在する古代の遺跡で、約3000年前に作成されたと思われる「神の頭部」が発見されました。

3,000-year-old head may be face of God | Live Science
https://www.livescience.com/ancient-clay-head-may-depict-god.html

イスラエルの都市ベト・シェメシュの近くに存在するエラの谷にある古代の要塞遺跡「Khirbet Qeiyafa(エラの要塞)」で、イスラエルの考古学者たちによる調査チームが2インチ(約5cm)ほどの大きさの粘土製の物体を発見しました。

この物体は旧約聖書および新約聖書における唯一神である「ヤハウェ」の頭部を粘土で模したものであると考えられており、非常に珍しいものであるとして注目を集めています。なぜイスラエルで発見された3000年前の神の頭部が珍しいのかというと、古代イスラエルではモーセの十戒偶像崇拝が禁止されていたため、当時のイスラエルでは神の偶像を作成することが禁止されていたためです。そのため、今回発見された神の頭部は本来は禁止されていたはずの古代イスラエル人が神の偶像を作成したという珍しい事例である可能性があります。

以下がエラの要塞で発見された3000年前の「神の頭部」


エラの要塞で神の頭部を発見した発掘チームを率いたのは、ヘブライ大学の考古学研究所の長官であるヨセフ・ガーフィンケル氏。同氏は「発掘された『神の頭部』の首の付け根にあたる部分が存在するので、頭は恐らく体や陶器の器といった別の物体に取り付けられていたものである可能性があります」「頭頂部が平らで、頭・目・耳・鼻が突き出ています」「耳に穴が開いているのでイヤリングがついていた可能性や、頭頂部の周辺にも穴があるため、アクセサリーなどがついていた可能性があります」と記しています。

ガーフィンケル氏は今回発見されたのは、馬にまたがった神を模した置物の一部であると考えています。その理由のひとつは、神の頭部は約3000年前の遺跡であるエラの要塞内で発見された唯一の置物であり、要塞内の宮殿と考えられている場所で発見されたため、当時の宮殿で暮らしていた人々にとって非常に重要なものであった可能性が高いからだそうです。約3000年前の遺跡であることを考えると、神の頭部が発見された過去の宮殿で暮らしていたという人物は、ソロモンである可能性もあるとガーフィンケル氏は指摘しています。

旧約聖書にはヤハウェが空に浮かんでいたという記述が存在しており、旧約聖書の中の一書であるハバクク書には、ヤハウェが馬にまたがっていたという描写があるそうです。


エラの要塞では今回発見された神の頭部以外のものは発見されていませんが、同じような「馬にまたがる神を模したと思われる置物」がイスラエルの寺院や墓地で発見されています。例えば同じイスラエルに存在するTel Moza遺跡では、最近の発掘調査で約3000年前の頭部と馬の置物が発見されており、ガーフィンケル氏はこれらも元は馬にまたがる神の置物だったのではないかと推測しています。

ガーフィンケル氏は宮殿や寺院、墓地などの宗教的に重要な場所で神の置物が発見されているため、「古代イスラエル人にとって神を視覚的に見ることは重要なことだったのだろう」と記しました。加えて、「信者が偶像の顔を見ると、まさにその瞬間に偶像も信者を見ることとなります。これは形而上学的な瞬間であり、地球と天国の狭間の接触、宗教的な経験の中心にあるものです」とも指摘しています。なお、ガーフィンケル氏によると古代の近東では寺院やその他の重要な場所では神の偶像を見ることは「一般的な慣習」だったそうです。


ガーフィンケル氏は「正確なタイミングは不明」としながら、神の描写が古代イスラエルで禁止されたのは「紀元前8世紀頃」と推測しています。

一方、科学系メディアのLive Scienceが、ガーフィンケル氏の調査に関係していない複数の学者に連絡を取り、エラの要塞で発見された神の頭部の解釈について意見を求めたところ、批判的な意見が得られたそうです。

記事公開時点でコメントを得ることができたのはテルアビブ大学の考古学者であり、Tel Mozaでの発掘調査を監督するOded Lipschits氏と、イスラエル古美術当局とテルアビブ大学で考古学者として働くShua Kisilevitz氏の2人。Lipschits氏とKisilevitz氏は共同でガーフィンケル氏の考えを非難しており、「Tel Mozaとエラの要塞で発見された人間の頭部が、神を描写したものであるという可能性を除外することはできません。しかし、古代近東で見られる表現の角・三日月・雄牛などのマークやシンボル、その他属性は今回発見された置物では見られません。また、神が動物と一緒に表現される場合、神が動物の上にまたがることはありませんでした」と述べています。


加えて、Lipschits氏らは考古学的な見解および歴史的研究から、3000年前の近東ではまだヤハウェが信仰されておらず、イスラエルにおける唯一の神ではなかったと指摘。「今回発見された偶像が神を表すものであったとしても、紀元前9世紀以前のイスラエルにヤハウェは現れなかったため、少なくとも紀元前7世紀の終わりまではヤハウェを表現することはありませんでした」とも記しています。なお、2人によると当時のイスラエルで暮らしていたカナン人の間では、パンテオンが崇拝されていたとのこと。

さらに、2人は「全体的にガーフィンケル氏の論文は事実上の不正確さと方法論的なアプローチの誤りがあり、古代近東の文化やTel Moza遺跡の発掘調査に関する研究などの、最も関連性の高い論文を無視したものです」と指摘しています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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