地球の温度がたった2度変化するだけで人類や環境は甚大な影響を受ける
気候変動により、今後数十年で地球の気温は2度上昇するとみられています。「2度」と聞くと小さな変化のようですが、歴史上、気温が2度変化したときには大きな変化が訪れたとして考古学コンサルタントのアラン・ウィリアムズ氏らがその影響の甚大さを指摘しています。
The last ice age tells us why we need to care about a 2℃ change in temperature
https://theconversation.com/the-last-ice-age-tells-us-why-we-need-to-care-about-a-2-change-in-temperature-126923
気候変動が大きな問題として人類の前に立ちはだかっていますが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の直近の報告では、このまま化石燃料の使用量に大きな減少がなければ、今後数十年で世界的に見て平均気温が2度上昇すると予測されています。また緯度の高い場所は、この温度が3~6度にまで上がるとみられています。
「2度の変化」という言葉は大きな変化ではないように聞こえますが、実際には、環境が大きく変化します。例えば地球の歴史上、最後に起こった氷河期は地球の平均気温が2~4度下がるというものでした。
最終氷期はおよそ7万年前に始まり1万年前に終了したといわれていますが、そのピークは2万1000年前だったと考えられています。
世界的に見て、この氷河期が地球に与えた最も大きな影響は北極や南極における氷床の出現でした。厚さ4kmにも及ぶ氷床は北ヨーロッパ、カナダ、北アメリカ、北ロシアを覆いました。同じ現象が現代に起これば、およそ2億5000万人もの人々が移住を余儀なくされることとなります。
そして、水が氷になることで海面水位は今日よりも250メートルも低くなり、多くの土地を露出させました。オーストラリアは現代よりも20%も土地が大きくなり、北部はパプアニューギニアとつながり、ダーウィン港は海岸から300km離れた場所に位置していたとのこと。
このような土地の変化により、オーストラリアはより乾燥し、風が強く吹く場所となりました。オーストラリアの上部3分の1を横切り乾燥した大陸中央に雨を降らせるモンスーンは弱体化するか大陸外に移動し、大陸南部に雨を降らせる冬の西風はより海洋の南部に移動してしまっていたと考えられています。そして雨が少なくなるとともにどんどん乾燥した大地は広がっていき、現代では半乾燥地として農業地帯を形成している場所は、砂漠に変わっていたとみられています。
このような環境変化に対し、考古学的証拠により、人類に2つの変化が起こったと推測されています。1つは、人々が淡水にアクセスしやすい内陸部に移り住むようになったということ。そして2つ目は、食料や水が不足することで最大60%もの人口が減少したということです。今日のオーストラリアの人口に置き換えて考えると、シドニー・メルボルン・ブリスベン・キャンベラ・パース・アデレードでの総人口に相当する1500万人が減少したことになります。
上記の例は「温度が2度下がる」状態であり、「温度が2度上がる」状態とは真逆ですが、今世紀後半のオーストラリアは最終氷期の状態と類似点があるとのこと。オーストラリアでは今後、より暑い日が増え、降雨の変動が増加し、より強烈なサイクロンが北部を襲い、土地の干ばつが加速すると(PDFファイル)予測されています。また海面上昇により海岸線から7km以内に住む住人の50%が影響を受けるとみられています。
最終氷期を生き延びた人々は機動性を持ち、乾いた土地に適応してきましたが、現代を生きる私たちは定住生活を送り、既存の食料生産システムに依存している点が大きな課題になるとのこと。もちろん二酸化炭素の排出を削減すべく私たちは努力を行うべきですが、大きな気候変動が避けられない場合は、影響が出る地域について長期的に持続可能な計画を立てるべきだと研究者は指摘しました。
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