ホラー映画を見ている人の脳内では何が起こっているのか?
by Hello I'm Nik GB
ホラー映画が怖いとわかっていながらも、つい気になって見てしまうという人は多いはず。「なぜ人はホラー映画を見てしまうのか」という疑問について、「ホラー映画を見ている時に人の脳はどのように働いているのか」という側面からトゥルク大学の研究チームが調査し、その結果を発表しています。
Dissociable neural systems for unconditioned acute and sustained fear - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053811920300094
Horror Movies Manipulate Brain Activity Expertly to Enhance Excitement | University of Turku
https://www.utu.fi/en/news/press-release/horror-movies-manipulate-brain-activity-expertly-to-%20enhance-excitement
トゥルク大学の研究チームは、「過去100年で最も怖いホラー映画」として「デビルズ・バックボーン」「哭声/コクソン」「死霊館」「死霊館 エンフィールド事件」「REC/レック2」「インシディアス」「エクソシスト」「グッドナイト・マミー」「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」「アンダー・ザ・シャドウ」の10作品を選出。さらに、被験者37人にホラー映画の視聴習慣についてのアンケートを取り、fMRI(磁気共鳴機能画像法)で被験者の脳の血行動態をモニタリングしながら、ホラー映画を視聴させるという実験を行いました。
まず、アンケートの結果では、72%の人が6カ月に1回はホラー映画を見ていると回答しました。また、ホラー映画を視聴する動機として、恐怖感や不安感の他に「エキサイトするから」というのが主な回答だったそうです。そして、大部分の人が「ホラー映画を見る時は1人ではなく他の人と一緒に見る方が好き」と答えたことから、ホラー映画の視聴には社交的な意味合いもあると研究チームは分析しています。
また、人の本質的な心理に関わるものや実生活に基づくような恐怖を最も怖がること、そのなかでも「実際に目に見えるもの」よりも「目に見えないものや何かを暗示するもの」により恐怖することがアンケートの結果から判明。研究チームの責任者であるLauri Nummenmaa教授は「人が経験する恐怖には、『突然怪物が現れてびっくりさせてくる時の本能的な反応』と『何かがおかしいと思った時にじわじわと感じる恐怖』の2種類が存在します」と解説しています。
そして、以下の画像がホラー映画を見ている時に活発化している脳の領域をfMRIで視覚化したもので、上段が「何かがおかしいと思った時にじわじわと感じる恐怖」を覚えている時、下段が「突然怪物が現れてびっくりさせてくる時の本能的な反応」の時です。
fMRIの結果から、「何かがおかしいと思った時にじわじわと感じる恐怖」を感じている時には、視覚と聴覚に関与する脳の領域が活発になることがわかりました。これは、不安がゆっくりと増加するにつれて、周囲の環境に対して注意深くなり、脅威の手がかりを見つけようとするためだと研究チームは述べています。
また、「突然怪物が現れてびっくりさせてくる時の本能的な反応」の時には、脳の活動は感情処理・脅威評価・意思決定に関与する領域が活発化し、物事に対する迅速な対応が可能になることがわかりました。
つまり、ホラー映画を見ている時の私たちの脳は、起こり得る脅威を予測し、その対応の準備を行っているというわけです。研究チームの1人であるマシュー・ハドソン氏は「ホラー映画は脳の働きをうまく利用して、私たちの興奮を高めます」と論じました。
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