IntelがAI向けチップ「Nervana」製品の開発を正式発表からわずか2カ月で中止すると決断
by Takuya Oikawa
大手半導体メーカーのIntelは2019年11月、AI向けチップである「Nervana」シリーズを正式に発表しました。ところが、正式発表からわずか2カ月後の2020年2月、IntelはNervana製品の開発を中止し、2019年12月に買収したイスラエルのAIチップメーカー「Habana labs」の製品に注力すると発表しました。
Intel Axes Nervana Just Two Months After Launch | WikiChip Fuse
https://fuse.wikichip.org/news/3270/intel-axes-nervana-just-two-months-after-launch/
Intel Officially Axes Nervana | EE Times
https://www.eetimes.com/intel-officially-axes-nervana/
Intelは2019年11月に、AI処理用のデータセンター向けプロセッサとして、深層学習トレーニング用の「Nervana NNP-T」、推論処理用の「Nervana NNP-I」という2製品を正式に発表しました。これらの製品はAIアクセラレーターと呼ばれるハードウェアであり、CPUを増強して機械学習などのAI関連の作業を加速できるとのこと。
NervanaファミリーのAIチップ製品は、2016年にIntelがNervana Systemsというベンチャー起業を買収して以降、継続して開発が行われてきたものです。2018年にはFacebookやGoogleなどの限られた顧客に対し、テストを兼ねて限定的に提供されていましたが、2019年11月には一部の一般顧客にも提供が開始されました。
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ところがNervana製品の正式発表からわずか数週間後の12月16日、IntelはイスラエルのAIプロセッサメーカーであるHabana Labsを約20億ドル(2200億円)で買収したと発表。買収後はIntelに吸収されたNervana Systemsのケースとは違い、Habana Labsは独立子会社として経営陣を引き継ぎました。
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Habana Labsの「Goya」や「Gaudi」といったAIチップシリーズはデータセンターにおける学習と推論をターゲットにしており、Intelが提供を開始したばかりの「Nervana NNP」シリーズと直接競合する製品でした。そのため、Habana Labsの買収直後から「IntelがHabana製品を優先し、Nervana製品を切り捨てるのではないか」とささやかれていたとのこと。
そして2020年2月、ついにIntelは「データセンター向けのAIアクセラレーターを単一のハードウェアアーキテクチャおよびソフトウェアスタックに移行することで、エンジニアリングチームは力を合わせてより迅速なイノベーションを顧客に提供できます」と述べ、開発中だったNervana NNP-Tの開発を中止し、Habana製品のGoyaおよびGaudiに注力することを発表しました。なお、既に提供が行われているNervana NNP-Iについてはしばらくサポートが続くものの、最終的にはHabana製品に移行するとみられています。
ハードウェア関連メディアのWikiChip Fuseは、Intelの下で同じAI市場向けに2つの企業が異なるチップを開発し続ける状況は不自然であり、「1つが切り捨てられるのは時間の問題でした」と指摘。Intelが重要な顧客から、Nervana製品よりHabana製品に好意的なフィードバックを受けた可能性があると主張し、「この重要な決定が正しかったのかどうかは、時間が教えてくれます」と述べました。
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