「個人の投票権」を守るために障害者によるスマホ電子投票を認める法案が可決
by Element5 Digital
アメリカ・ウエストバージニア州の下院で、特定の障害がある有権者による電子投票を認める法案が可決されました。法案はこれで上院・下院を通過して、知事の承認待ちとなります。
Bill To Allow Electronic Voting For West Virginians With Disabilities Passes Legislature | West Virginia Public Broadcasting
https://www.wvpublic.org/post/bill-allow-electronic-voting-west-virginians-disabilities-passes-legislature
West Virginia is expanding its controversial smartphone voting push | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2020/02/west-virginia-poised-to-allow-smartphone-voting-for-disabled-voters/
ウエストバージニア州では2018年にアメリカ国外での任務に従事する軍関係者向けにスマホアプリを用いた電子投票を導入しています。
今回の法案は、軍関係者向けのものと同じ仕組みを障害者向けにも認めるという内容です。電子投票時に必要な機器の導入費用は、モバイル端末を用いた投票を推進している団体「Tusk Philanthropies」が負担するため、法案が通ってもウエストバージニア州や各郡の費用負担はないとのこと。
州務長官法律顧問のドナルド・カーシー氏によると、これまでウエストバージニア州では、不在者投票用紙へ記入を行う際に助けが必要な特定の障害を持つ人々に対して、合理的に利用可能な他の投票手段を用意していなかったとのこと。これは「障害のあるアメリカ人法」に抵触している恐れがあり、また、憲法にある「個人の投票権」の侵害の可能性もありました。このため、今回の法案が州務長官からの要請で提出されることになったとのことです。
すでに、2016年のメリーランド州での選挙や、2017年のオハイオ州での選挙などを巡り、「投票用紙を用いた投票システムは障害者差別である」という連邦判事による判断が下っています。ウエストバージニア州でも、今回の法案が通らない場合にはワシントンD.C.の企業と州内の障害者支援団体が州を相手取った訴訟を起こす予定だとのこと。
下院での法案採決前に、一部議員からは電子投票の拡大に伴う選挙の安全性への懸念が表明されていますが、カーシー氏は「アメリカ全土で、選挙インフラに対しての侵入の試みは常に行われています」と懸念を認めた上で、電子投票拡大を「『計算されたリスク』です」と語り、「電子的な伝達手段がないのは、『障害のあるアメリカ人法』に反します」と、方針はぶれないことを表明しています。
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