サイエンス

高速道路や主要道路の近隣住民は神経障害の発症リスクが高まる可能性

by Joey Kyber

高速道路や主要道路の近隣で暮らす住民は、二酸化窒素や粒子状物質などによる大気汚染に晒されることで、多発性硬化症アルツハイマー病の発症リスクが高まる可能性がある、という論文が環境医学関連の論文を取り扱う科学誌のEnvironmental Healthで発表されました。

Road proximity, air pollution, noise, green space and neurologic disease incidence: a population-based cohort study | Environmental Health | Full Text
https://ehjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12940-020-0565-4

UBC study links living near highways to risk of neurological disorders | Vancouver Sun
https://vancouversun.com/news/local-news/ubc-study-links-living-near-highways-to-risk-of-neurological-disorders

研究に参加したWeiran Yuchi氏は、ブリティッシュコロンビア大学の人口・公衆衛生学部の研究チームと共同で、メトロバンクーバー在住の45~84歳の成人・67万8000人分のデータを分析しました。調査期間は1994~1998年の5年間と、1999~2003年までの5年間で、被験者にはインタビューも行われています。

by David Barajas

研究チームによると、「主要道路から50メートル以内」あるいは「高速道路から150メートル以内」で暮らす人々は、認知症・パーキンソン病・アルツハイマー病・多発性硬化症といった神経障害を発症するリスクが高くなるとのこと。公園や森林などの、緑の近くに住んでいる人は神経障害の発症リスクが低下することも明らかになっています。

Yuchi氏は、「我々の研究では、緑地が神経障害の発生を抑制する効果を持つことがわかりました」と語っています。なお、研究では衛星画像を用いて緑地空間を測定し、分析を行ったとのことです。

研究チームは「大気汚染および交通量と、認知症・パーキンソン病・アルツハイマー病・多発性硬化症といった精神障害との関連性を調査した研究は、今回のものが初めて」と語っています。

by Xan Griffin

主要道路もしくは高速道路の近くに住むことは、認知症の発症リスクを14%高め、パーキンソン病の発症リスクを7%高めることが明らかになっています。同様に、多発性硬化症やアルツハイマー病の発症リスクも高めることが明らかになっていますが、具体的にどの程度発症リスクを高めるのかは不明とのこと。

また、高速道路の近くであっても、周辺に緑地が多く存在することで神経障害の発症リスクを減らすケースがあることも判明。加えて、公園や森の近くに住んでいる人々の場合、神経障害の発症リスクが3~8%も減少することが明らかになっています。

ただし、主要道路の近くに住む人々の神経障害発症リスクを抑える方法について研究チームは言及しておらず、Yuchi氏は「より多くの研究が必要である」と語っています。なお、研究では「高速道路や主要道路の近くに住んでいるものの、自然や公園への訪問に多くの時間を費やしている人」を考慮していないとのことです。

by Eric Weber

研究では自動車の排気ガスに含まれる、カーボンブラックや二酸化窒素といった大気汚染物質が、パーキンソン病や認知症といった精神障害の発症リスクと関連していることが明らかになっています。また、自動車が生み出す騒音は神経障害とは関連していないことも明らかに。加えて、研究チームは緑地の周辺に暮らす人々について「緑から得られる視覚的効果の恩恵を受けている可能性も高い」と述べました。

なお、研究を率いたブリティッシュコロンビア大学のマイケル・ブラウアー教授は、「今回の研究結果は、都市計画の際に緑と公園を組み込むことの重要性を強調しています」と述べています。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by logu_ii

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