カエルの幹細胞から作られた「生体ロボット」が開発される、物質の運搬や自己再生も可能
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/00_m.jpg)
カエルの胚の細胞から再構成された生きたロボット「Xenobot(ゼノボット)」が開発されたことが明らかになりました。自律的に歩行して物質を運搬することが可能なXenobotは、人体内の患部に薬剤を輸送したり、血管内に蓄積された老廃物を除去して動脈硬化を防いだりすることができると期待されています。
A scalable pipeline for designing reconfigurable organisms | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2020/01/07/1910837117
Team Builds the First Living Robots | UVM Today | The University of Vermont
https://www.uvm.edu/uvmnews/news/team-builds-first-living-robots
Scientists use stem cells from frogs to build first living robots | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2020/jan/13/scientists-use-stem-cells-from-frogs-to-build-first-living-robots
世界で最初の「生きたロボット」の開発に成功したのは、バーモント大学で進化ロボティクスについて研究しているジョッシュ・ボンガード氏と、タフツ大学の生物学者マイケル・レビン氏らの研究グループです。研究グループはまず、バーモント大学内にあるスーパーコンピューターを使用して、独自の「進化アルゴリズム」に基づいたシミュレーションを実施。生きた「皮膚細胞」と「心筋細胞」をどのような形状や構造で組み立てれば効率的な運動が可能なのかを、数千種類のデザイン候補の中から選び出しました。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/F1_m.jpg)
研究グループは次に、アフリカツメガエルの生きた胚から幹細胞を採取して培養しました。そして、極小サイズのピンセットと電極を使用して細胞を成形し、デザイン通りのロボットを製造しました。なお、Xenobotという名前は、アフリカツメガエルの学名「Xenopus laevis」から取ったものだとのこと。
実際にXenobotが動作しているところや、製造の様子は以下のムービーから見ることが可能です。
First 'living robots' designed on supercomputer - YouTube
![](https://img.youtube.com/vi/XLI7VtjgOyk/maxresdefault.jpg)
Xenobotを製造するにはまず、アフリカツメガエルの胚を切り開いて幹細胞を取り出し、培養します。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00001_m.jpg)
次に、幹細胞をスーパーコンピューターを使ってデザインした形状に成形します。ロボットのサイズは1mm未満で、活動に必要なエネルギーは細胞内に蓄えられているので、数日間~数週間は水中で稼働し続けることができるとのことです。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00002_m.jpg)
上段はXenobotの動きのシミュレーションで、下段は実際に動いているXenobotを上から見たもの。本体の下の方にある心筋細胞が収縮する動きを利用して、Xenobotがはうように動いているのが分かります。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00005_m.jpg)
Xenobotは生きた細胞で作られているので、もしダメージを受けても……
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00003_m.jpg)
自己再生が可能です。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00004_m.jpg)
Xenobotは自由な形状に組み立てることが可能なので、中に薬剤を収納して運ぶこともできるようになるとのこと。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00006_m.jpg)
ほかにも、海の浄化や動脈内に蓄積された老廃物の除去
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00007_m.jpg)
放射性物質の発見などの用途も検討されています。
![](https://i.gzn.jp/img/2020/01/14/xenobots-living-robots-stem-cell-frog/s00008_m.jpg)
ボンガード氏は「多くのロボットは金属、コンクリート、プラスチックで作られていますが、これらの多くは有害物質なので、人体や環境に悪影響を及ぼします。しかし、生きている細胞から作られたロボットなら、活動が終われば生分解されてしまいます」と述べて、人体や環境への負荷が低いというメリットを強調しました。また、レビン氏は「最終的には血管、神経系、原始的な目などの感覚器官を備えたXenobotを開発する計画です。また、哺乳類細胞で製造すれば、水中だけでなく陸上で活動可能なXenobotを作ることもできます」と話しました。
一方で、オックスフォード上廣応用倫理センターの研究開発部長であるトーマス・ダグラス氏は、イギリスの大手紙The Guardianの取材に対し「Xenobotの研究は今後、『生きたロボットは生物なのか機械なのか?』という難しい問題に直面する事でしょう」と回答し、倫理的な課題は避けて通れないとの見方を示しました。
研究グループは今後、より高度なXenobotの開発を目指すだけではなく、新たな生物学的構造を備えたXenobotを分析して生物の成り立ちを解明することで、がんや先天性欠損症、加齢性疾患などへの理解を深めていく方針だとのことです。
・関連記事
血中を移動して正確にがん腫瘍を攻撃できるナノロボットの開発に成功 - GIGAZINE
超音波と磁力を組み合わせて細胞内を自由に動き回れる微小ナノモーターの製作に成功 - GIGAZINE
3DプリンターとiPS細胞で本物同様に機能する「ミニ肝臓」をプリントすることに成功 - GIGAZINE
はげ頭をフサフサに戻すカギとなるのは「幹細胞」と「3Dプリント技術」 - GIGAZINE
Googleが目の中に液体コンピュータを注入する「眼球内デバイス」の特許を申請 - GIGAZINE
幹細胞を使った治療で「老化防止」の効果を人体で確認 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, 生き物, 動画, Posted by log1l_ks
You can read the machine translated English article `` Bio robot '' made from frog s….