ハードウェア

「構成原子数のわずかな誤差」が同じプロセッサの性能に違いをもたらす可能性があるとの指摘

by ColiN00B

コンピューターにおいてソフトウェアの命令を実行するプロセッサは、コンピューターの構成において非常に重要なハードウェアといえます。しかし、そんなプロセッサの性能について、「プロセッサの製造工程におけるわずかな原子数の差によって、同一のプロセッサにもかかわらず性能にばらつきが出てしまう可能性がある」と、ソフトウェアエンジニアの専門家であるデレク・ジョーンズ氏が主張しています。

The Shape of Code » Performance variation in 2,386 ‘identical’ processors
http://shape-of-code.coding-guidelines.com/2020/01/05/performance-variation-in-2386-identical-processors/

「全てのマイクロプロセッサは、製造工程におけるランダムなばらつきによって異なっています」とジョーンズ氏は述べており、同一の製品として販売されているプロセッサであっても、トランジスタやトランジスタ間の接続を構成する原子の数に違いがあると指摘しています。

ジョーンズ氏によると、製品が数千~数万の原子から構成されている場合、原子の量が多少違ってもほとんど差異が現れないとのこと。しかし、近年のプロセッサは小型化が進み、世界最大の半導体製造企業であるTSMCは、5nmプロセスによるプロセッサ製造を開始したと報じられています。このように、プロセッサの小型化が進んだ記事作成時点では、トランジスタ間の接続部分の幅はわずか原子数十個分に過ぎない場合もあります。そのため、原子数のわずかな差異が性能に顕著な影響を与える可能性があるそうです。

by RemazteredStudio

原子数の差異がプロセッサに与える影響として、ジョーンズ氏は「プロセッサの熱特性が変化してしまう」可能性を指摘しています。つまり、原子のわずかなばらつきによって、特定のプロセッサがほかのプロセッサよりも早く温度が上昇したり、温度の上昇が遅くなったりする可能性があるとのこと。

近年のプロセッサには、自身の温度が上昇しすぎた場合に過熱で壊れてしまわないように、動作周波数や電圧を自動で下げる安全機構が備わっています。そのため、原子のばらつきによってプロセッサの熱特性に違いが出ることで、同一のプロセッサを同じ環境で動作させたとしても、発揮するパフォーマンスに差異が現れるとジョーンズ氏は主張しています。

実際にジョーンズ氏が「同一のプロセッサでもパフォーマンスが変動することを示した素晴らしい例」と主張する、IntelのプロセッサであるSandy Bridge版のXeonを2386個使ったベンチマークテストの結果がこれ。元となったデータはコンピューターサイエンティストのBarry Rountree氏から提供されたもので、いずれのプロセッサも同じ最大電力制限のもとでベンチマークテストを行ったとのこと。同じプロセッサなのに、ベンチマークテストを終了するまでの時間および動作周波数にばらつきが出ていることがわかります。


ジョーンズ氏はSandy Bridge版Xeonのベンチマークテストの結果にばらつきが出た理由として、各プロセッサが接続されているほかのハードウェアデバイスの熱特性やパフォーマンスに影響された可能性を指摘しており、必ずしもこの結果が原子の差異に基づいたものとは限らないとのこと。しかし、熱特性の影響により、同じプロセッサであるのにベンチマークテストの結果に違いが出ることを示すいい例だと述べています。

IntelがSandy Bridgeマイクロアーキテクチャを生産し始めたのは2011年であり、それから8年近くの間で、トランジスタおよびトランジスタ間の接続を構成するために使用される原子の数は縮小してきたとジョーンズ氏は指摘。今日のプロセッサにおいては、原子数のわずかな違いがプロセッサのパフォーマンスに大きなばらつきをもたらす可能性があると、ジョーンズ氏は主張しました。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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