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元Appleの重鎮が指摘する「Apple製品から失われてしまったもの」とは?

by ismael villafranco

Apple黎明期を支えた2人の元Apple社員が、「Apple製品のインターフェースは、見た目のシンプルさやデザインの美しさと引き替えに、マニュアルを見なくても使えるような使いやすさや分かりやすさを失ってしまった」と非難しています。

How Apple Is Giving Design A Bad Name
https://www.fastcompany.com/3053406/how-apple-is-giving-design-a-bad-name

Apple's products are getting harder to use because they ignore the ​principles of design.
https://jnd.org/apples_products_are_getting_harder_to_use_because_they_ignore_principles_of_design/

アメリカの認知科学者ドナルド・ノーマン氏は、AppleのAdvanced Technology Groupのヴァイスプレジデント時代に「ユーザーエクスペリエンス(UX)」という概念を初めて明確化させた人物。また、ノーマン氏の友人であるブルース・トグナツィーニ氏はAppleの元プログラマーで、社員番号66番という古株です。そんなノーマン氏とトグナツィーニ氏が、かつてのApple製品から失われてしまったと指摘しているのが「発見可能性、フィードバック、復元性、一貫性」です。

◆1:発見可能性
発見可能性とは、「製品を使いこなすために必要なアクションやボタンなどを、いかに素早く発見できるか」という考え方です。ノーマン氏らがApple製品のUXを設計していたころは、製品の使用者がその時点で可能なアクションを全てボタン、アイコン、メニューの項目などのオブジェクトで示すことを原則としており、このことをノーマン氏らは「See and Point(見て指す)」と呼んでいました。「See and Point」は長い間、Apple社内で使われていたガイドライン上で最重要事項の1つとして記載されていましたが、iOS 4が登場した2010年の後半には姿を消してしまったとのこと。

by Agence Olloweb

◆2:フィードバック
フィードバック」とは、アクションによって何が起こったのかの手がかりになる反応のことで、アクションによって何が起きるのかを予見させる「フィードフォワード」とともに、UIを考える上で重要になる概念です。現実の世界では、基本的に何がどうなったかは見れば分かるため、ある意味でフィードバックは自動的に行われているといえますが、ソフトウェアの世界で行われる処理はデバイスの中で完結されているため、デザイナーが意識しなければユーザーに伝わりません。ノーマン氏によると、以前のデスクトップPCなどの製品には明確なフィードバックがあったので、ユーザーはいま何が起きているのかを常に把握できていたとのことですが、指先でのジェスチャーが基本となるiOSデバイスなどにはそれが欠けているとのこと。ノーマン氏は、iOS9以降はかなり改善されているとしていますが、「フィードバックを取り戻すのに、一体なぜそんなに時間がかかったのですか?」と疑問を投げかけました。

◆3:復元性
多くのブラウザには「戻る」ボタンや「進む」ボタンがあるほか、Android端末の画面下部にあるナビゲーションバーの左には「戻る」機能が割り当てられており、簡単に操作を取り消したり、元の画面に戻したりできます。こうした「戻る」ボタンはXeroxの子会社であるパロアルト研究所が開発したグラフィカルユーザインタフェース(GUI)が源流だとのこと。XeroxからGUIに関する権利を購入することで、Appleが初期にリリースしたPCであるApple LisaMacintoshは先進的な操作性を備えることができました。しかし、iOSには一目でそれと分かる「戻る」ボタンが存在しません。ノーマン氏は「ブラウザなどには、ユーザーが後戻りできるように『戻る』ボタンがありますが、iOSにはそのような標準的なツールはありません。iOSは『戻る』ボタンと『進む』ボタンを標準で備えるべきです」と主張しています。

by raphaelsilva

◆4:一貫性
「複数のデバイスを使い分けていると、操作性が違って混乱してしまいがちですが、Appleの製品は同じデバイスですら一貫性がありません」とノーマン氏は指摘しています。具体的には、iPhoneの画面を回転させた際にキーボードのレイアウトが変わってしまう点や、iPadの画面を回転させるとアイコンが並び替えられてしまい、アイコンがどこに行ったかがわかりづらくなってしまう点が、その最たるものだとのこと。また、ノーマン氏はAppleのMagic Mouseのジェスチャーが他のApple製品とは異なる点にも言及し、「『一貫性』はまだガイドラインに存在しているはずですが、順守されていません」と述べています。ノーマン氏の見立てでは、一貫性が失われているのはデザイナー同士の交流がなく、個別に仕事をしているためではないかとのことです。

ノーマン氏は、「幸いなことに、これらの現象はiPhoneおよびiPadについてのみ言えることですが、デスクトップ製品にも同様の兆候が出始めています。GoogleもAppleと同じ病に冒されていますが、Androidにはまだマシなメニューバーがあります」と述べました。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1l_ks

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