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「人々は物の値段を言い当てることができなくなっている」と指摘、その理由とは?

by vadymvdrobot

半世紀近く放送され続けている、商品の値段を言い当てるクイズ番組の分析により、「人々が物の値段を言い当てることができなくなってきている」ことが判明しました。

Inattention and Prices Over Time: Experimental Evidence from 'The Price Is Right' (1972-2019) by Jonathan Hartley :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3469008

Why are people getting worse at "The Price Is Right"? — Quartz
https://qz.com/1740513/why-are-people-getting-worse-at-the-price-is-right/

Price Is Right Contestants Have Apparently Gotten Worse Over Time, According To New Study
https://www.cinemablend.com/television/2484434/price-is-right-contestants-have-apparently-gotten-worse-over-time-according-to-new-study

The Price Is Right」は1972年からスタートしたアメリカの長寿番組で、4人の出場者が電化製品やタオルなどの消耗品の価格を予想し、最も正解に近い予想を続けた優勝者が新車などの景品をゲットできるというゲーム番組です。


ハーバード大学ケネディスクールで経済学について研究しているジョナサン・ハートレー氏は、1972年~2019年の間に放送された「The Price Is Right」で出場者が答えた約12万件の価格予想を集計して、精度を分析しました。その結果が以下のグラフで、縦軸が予想と正解の差を、横軸が年代を表しています。ハートレー氏によると、1970年代は誤差が平均-8%で、出場者らは正解に比べて8%安い値段を提示していましたが、2010年代にはこの差が平均-20%に拡大したとのこと。


ハートレー氏は、「The Price Is Right」の出場者らによる値段の予想が実際の価格とかけ離れてしまうようになったのには、大きく分けて3つの経済的な要因が関係しているとみています。1つ目は「インフレーションの収束」です。1970年代から80年代にかけて、アメリカのインフレ率は非常に高く、物価も安定していませんでした。インフレ率が高いということは、その分物価が押し上げられるということを意味しているため、当時の人々は近年に比べて値上がりに敏感で、物の値段がどれだけ上がったかに関心を向けていたと、ハートレー氏は考えています。

第2の要因が「eコマースの台頭」です。ハーバード・ビジネス・スクールの経済学者であるアルベルト・カバロ氏の調査では、Amazon.comに代表されるようなインターネットを介した通信販売の価格と、実店舗での販売価格は年々縮まっていることが判明しています。ハートレー氏は、こうした状況によりオンラインとオフラインでの価格を比較する必要性がなくなった結果、人々の値段に対する敏感さが低下している可能性があると見ています。

第3の要因が「商品の種類の増加」です。ボストン大学ロースクール経済学者であるジェームズ・ベッセン氏の調査によると、スーパーマーケットが取り扱う商品の種類は過去80年の間に50倍に増加したとのこと。これは、企業の戦略が価格競争ではなく、多様な商品を生産することによる差別化にシフトしていることに起因しています。市場に並ぶ商品の種類が増加した結果、「The Price Is Right」の出場者が見慣れない商品が出題されるケースが増えたのではないかというのが、ハートレー氏の見立てです。

by Kamalakannan PM

なお、テレビ番組や映画の情報を専門とするニュースサイトCinemaBlendは、経済学者のハートレー氏とは少し違った観点から、「The Price Is Right」の出場者の予想が外れるようになった理由を推測しています。幼少期から「The Price Is Right」の大ファンで、出題傾向と商品の価格を知り尽くしてしまったあまりにドキュメンタリー映画「Perfect Bid:The Contestant The Know Too Much」の主人公にもなったTed Slauson氏によると、初期の「The Price Is Right」はよく同じ商品を出題していました。しかし、2008年ごろから出題傾向を変えて同じ商品を出題しなくなったので、出場者らが価格を的中させるのが難しくなったとのことです。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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