生き物

「絶滅の危機だったザトウクジラの個体数が驚くほどに回復している」という報告

by shadowfaxone

北半球から南半球まで世界中の海域に生息するザトウクジラは、地域ごとに個体群を形成してまとまって行動することで知られています。南大西洋西部のザトウクジラ個体群は、かつて絶滅の危機に瀕していましたが、近年では研究者も驚くほどの回復を見せていることが明らかとなりました。

Assessing the recovery of an Antarctic predator from historical exploitation | Royal Society Open Science
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.190368

Humpback Whales Are Doing Surprisingly Well After a Close Brush With Extinction
https://www.sciencealert.com/humpback-whales-are-doing-surprisingly-well-after-a-close-brush-with-extinction


世界中に分布するザトウクジラは、いくつかの海域ごとに個体群を形成しており、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は全部で14の個体群に分類しています。そんなザトウクジラは1700年代後半から1900年代半ばにかけて捕鯨の対象となっており、この期間中に世界中で30万頭ものザトウクジラが捕獲されたといわれています。

1900年代になると南大西洋にあるサウスジョージア島付近でも盛んに捕鯨が行われ、1904年~1916年の約12年間には南大西洋西部の個体群(WSA個体群)だけで、2万5000頭ものザトウクジラが捕獲されたとのこと。1830年には、WSA個体群はおよそ2万7000頭ほどだったとされていますが、1950年代にはわずか450頭にまで個体数が減少し、絶滅の危機に瀕してしまいました。

しかし、ザトウクジラを保護しようという気運の高まりから、1966年には全世界的にザトウクジラの商業捕鯨が禁止されるなどの取り組みがスタート。次第にWSA個体群のザトウクジラは個体数が回復していきました。2006年には、研究者らが「WSA個体群の個体数はかつての3分の1ほどに回復した」と推定しました。ところが、クジラの個体数を推定することは容易ではないそうで、NOAAの海洋生物学者であるAlexandre Zerbini氏は、「以前の評価では個体数規模の推定が正確ではありませんでした」と指摘しています。

by ArtTower

そこで、Zerbini氏らの研究チームは航空および船舶による最新の調査データをもとに、ザトウクジラの個体数を再度推定しました。Zerbini氏らの研究チームが割り出したWSA個体群の推定個体数は、なんと2万4900頭と報告されており、捕鯨が行われる前の個体数である2万7000頭の93%近くに相当します。

NOAAが2016年に発表したレポートによると、14のザトウクジラ個体群のうち9個体群で個体数の増加が確認され、アメリカの絶滅危惧種リストから外されました。「WSA個体群のケースは、正しいことを行えば個体数が回復するという明確な例です」と、Zerbini氏はコメントしました。

by Pixabay

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in 生き物, Posted by log1h_ik

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