サイエンス

言語による情報伝達速度はどの言語でも約40bps

by Timothy Dykes

イタリア人は「世界で最も早口」といわれていて、1秒に最大9音節を発声します。一方で、同じヨーロッパのドイツ人は1秒間で5~6音節の発声で、しゃべる速度には大きな差があります。しかし研究により、どんな言語でも情報伝達速度はモールス信号の約2倍に相当する秒間39ビット(39bps)ぐらいに収束することがわかりました。

Different languages, similar encoding efficiency: Comparable information rates across the human communicative niche | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/5/9/eaaw2594


Human speech may have a universal transmission rate: 39 bits per second | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2019/09/human-speech-may-have-universal-transmission-rate-39-bits-second

調査対象となったのは以下の9語族・17言語です。

・インド・ヨーロッパ語族:英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、カタルーニャ語、セルビア語
・バスク語
・ウラル語族:フィンランド語(スオミ語)、ハンガリー語(マジャル語)
・テュルク語族:トルコ語
・タイ・カダイ語族:タイ語
・オーストロアジア語族:ベトナム語
・シナ・チベット語族:官話(マンダリン)、広東語
・朝鮮語族:朝鮮語(韓国語)
・日本語族:日本語

研究では、上記17言語で文章を読み上げるのにどれぐらいの時間がかかるのか、各言語で書いたサンプル文章を用意。被験者に読み上げてもらった速度と、言語の情報密度を計算し、情報伝達の密度を算出しました。


すると、前述のように話者によってしゃべる速度が大きく異なる一方で、言語による情報密度もバスク語が1音節あたり4.8ビットなのに対して、ベトナム語が1音節あたり8.0ビットと差があり、最終的にはいずれの言語でも、およそ毎秒39.15ビットという情報伝達速度に収束しました。なお、初期のモデムの転送速度が110bpsで、こんにちのインターネットの情報転送速度は平均100Mbps(1億bps)以上です。

論文の共同著者である進化言語学者のフランソワ・ペレグリーノ氏によると、これまで言語科学は文法の複雑さなどに焦点を当てていて、情報伝達率のことは見落とされがちだったとのこと。

今回導かれた「どの言語も同じような情報伝達速度になった」という結論について、ペレグリーノ氏は脳がボトルネックになっているという考えを示しました。なお、人は120%の速度の音を聞いても理解に支障はないことがわかっているため、ボトルネックになっているのは「音声を聞き取る」部分ではなく、考えをまとめる段階であるとみられています。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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