最初の1人がグループ全体の印象を左右してしまう認知バイアス「1人目の経験則」とは?
by kenishirotie
心理学の分野では、最初に接した目安の数字などがその後の判断に大きく影響する「アンカリング」という現象があることが知られています。社会心理学についての複数の研究結果から、同様の現象が数値だけでなく人の評価にも当てはまることが判明しました。
The first-member heuristic: Group members labeled “first” influence judgment and treatment of groups.
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspi0000201
Researchers confirm that people judge entire groups based on the performance of its 'first member'
https://phys.org/news/2019-07-people-entire-groups-based-member.html
キャスビジネススクールでマーケティングの上級講師を務めるジャニナ・スタインメッツ博士らの研究チームは、「グループの1人目のメンバーに対する評価が、グループ全体の評価に大きな影響を与えるのではないか」という仮説を検証するため、先行する7つの実験や研究を横断的に分析しました。
スーパーのレジで会計を済ませた利用客にスーパーを評価してもらう実験では、「スーパーのレジ係の対応が悪かった場合に、客がスーパーを厳しく評価する傾向」は1番レジを使用した客で特に顕著だったとのこと。逆に、2番以降のレジにいる店員のパフォーマンスがスーパーの評価に与える影響は1番レジと比べて小さいものでした。
by garetsworkshop
また別の実験では、被験者に入国管理局の職員になってもらい、国際的ながん研究者5人から成る研究チームの就労ビザ延長申請を審査してもらいました。この実験では、最初の1人目の審査をする際に、被験者に「この人は重大な不祥事を起こしたことがある」という情報を与えると、残る4人全員も有能ではないとみなされ、ビザの延長が認められる可能性が低くなったとのこと。
同じ実験で2人目以降の研究者が失敗を犯したという情報が付与されても、審査結果はあまり影響を受けませんでした。こうした傾向は、学生の評価やアスリートの成績、競馬の予想といったテーマの研究結果にも共通していました。
このように、グループの1人目がグループ全体の印象を左右してしまうという現象を、研究チームは「1人目の経験則」と呼んでいます。スタインメッツ博士は「1人目の経験則」が起きる理由について、「組織の初期メンバーが後進に大きな影響を与えることと関係がある」と説明しています。
例えば、「会社を興した初期メンバーの方針が後の企業風土を決める」というのはよくあることですが、こうした事例における「初期のメンバー」と「単に最初に接しただけのメンバー」とが混同された結果、グループの1人目がまるでそのグループの代表のように見られてしまうというわけです。
by javi_indy
スタインメッツ博士は「最初のメンバーが素晴らしい場合は、グループ全体が素晴らしいものだと評価され、最初のメンバーが悪印象だと、グループも悪い評価を受けます」と述べて、良くも悪くも相手が接する1人目が組織の顔となってしまう傾向があるとの見方を示しました。
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