何百万匹ものチョウの羽音は「川のせせらぎのような音」であるとわかるムービー
日本にいると数匹のチョウしか同時に見かけることはできず、その「羽音」といっても想像がつかないため、「チョウは無音で飛ぶもの」だと考えてしまいます。昆虫学者兼YouTuberでもあるフィル・トレスさんが、何百万匹ものオオカバマダラがひらひらと舞う様子と、その羽音をチェックできるムービーをYouTube上に投稿しています。
Listen to the magical sound of millions of butterflies taking flight at once
https://mashable.com/video/sound-of-monarch-butterflies-taking-flight/
以下がフィル・トレスさんが投稿したムービーです。ムービーの前半では今回の舞台であるシエラ・チンクアについてや、オオカバマダラの生態が語られ、実際にチョウの飛ぶ様子はムービーの3分28秒頃からスタートします。オオカバマダラが満開の花びらがひらひらと降り注ぐかのように、飛び立っていく光景とともに、実際の「羽音」を聴くことができます。
The SOUND of Millions of Monarch Butterflies! - YouTube
今回のオオカバマダラの群生地帯でその「羽音」を撮影しに来たのは、熱帯を専門とする昆虫学者であるフィル・トレスさん。
トレスさんが訪れたのはメキシコのシエラ・チンクア(Sierra Chincua)という地方。Googleマップで確認すると、シエラ・チンクアはオオカバマダラ生物圏保護区の中でも一般公開されている区域で、「オオカバマダラの聖域」という名が付いているようです。
オオカバマダラは季節によってアメリカ大陸を南北に飛行する渡り鳥のような性質があり、越冬のためメキシコに南下してきます。ムービーを撮影した時期には、オオカバマダラはシエナ・チンクア近郊に約1億4000万匹も生息していたそうです。
シエラ・チンクアはメキシコのミチョアカン州、標高1万500フィート(約3200メートル)の地域にあります。オオカバマダラの群生地に至るまで、車に乗って高速道路を越え、田舎道を抜け……
馬に乗って山を進み、さらに山道を歩く必要があります。
トレスさんはチョウの群生地に向けて山道を歩きながら、「地球上で僕の最も好きな場所だろうね」と話し始めます。「オオカバマダラの群れは、単に見た目に圧倒されるだけでも、感情的に圧倒されるだけでもないんだ。『音』にもまた、圧倒されるんだ」と熱く語ります。
「チョウが何百万匹も飛んでる光景なんて普通では考えられないけど、ここではそれが起こる。そして、その『羽音』はものすごく幻想的なんだ」
群生地に近づくと、足元には冬を越せなかったチョウの死骸がゴロゴロ。
木を見ると、垂れ下がった枝は葉が生い茂っているように見えます。
近づいてみると、枝にはオオカバマダラがビッチリ。葉と同じ数のオオカバマダラがくっついているんじゃないかと思えるほどの数です。トレスさんいわく、「1つの幹あたり1万匹くらいはくっついているかもしれない」とのこと。
「最後にチョウを見た光景を思い出してください。チョウの羽の色には気がついたかもしれませんが、音には気づかなかったでしょう」とトレスさんは語ります。
「しかし、この場所はまさしく、何百万匹のチョウに囲まれる場所です。数百万匹のチョウの羽音が、お互いの羽音と増幅し合って、音を成すんです」
チョウを含む大半の昆虫は、外部の温度により体温が変化する外温動物で、その活動性は日光から与えられる熱エネルギーに依存します。トレスさんがシエラ・チンクアを訪れた朝は気温が低く、オオカバマダラはあまり飛んでいなかったそう。
トレスさんはカメラと録音機材をセットして、昼になって気温が上がり、オオカバマダラが活動を開始するのを待ちます。
待っていると、多数のオオカバマダラが木から飛び立ち始めました。その羽音はあくまでも静かで、まるで小川のせせらぎのよう。鳥のさえずりと相まって、リラックスするような音です。
十分な日光の元では、オオカバマダラは活発になります。木から飛び立ったオオカバマダラは花の蜜などを吸ったり……
つがったりします。
オオカバマダラ生物圏保護区の努力のおかげか、この地域で観測されたオオカバマダラの数は昨年度に比べて約140%増加していますが、まだ20年前に比べて数は少ないそうです。この光景を守るために、トレスさんは春・夏・秋にアメリカやカナダに北上してくるオオカバマダラの食料となる、トウワタなどを植えることを呼びかけていました。
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