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Amazonはなぜ中国市場から撤退することになったのか?

by Christian Wiediger

Amazonが中国向けオンラインショッピング事業を撤退することが報じられ、2019年7月18日にも中国国内でのeコマース事業を閉鎖することが明らかになっています。Amazon Web Services(AWS)やKindleなどの事業は引き続き中国でも提供される予定ですが、なぜ世界最大級のオンラインショッピングサービスであるAmazonが、中国ではサービスを維持できなくなってしまったのかを中国のPandailyが考察しています。

Amazon Quits China Market - Another U.S. E-commerce Giant Failing in China - Pandaily
https://pandaily.com/amazon-quits-china-market-another-u-s-e-commerce-giant-failing-in-china/

Pandailyの記者であるショウ・ワン氏は、「Amazonが中国市場から撤退すると聞いてもそれほどショックは受けなかった」と記しています。ワン氏がアメリカで暮らしていた際は、Amazonが「多数の信頼できる製品」を取り扱っていたため、常にオンラインショッピングにおける最初の選択肢となっていたそうです。しかし中国国内では、他のオンラインショッピングサービスと比較すると、取り扱う製品ブランドが少なかったり、プライム会員であっても配達が遅かったりと、「常に私を悩ませてきた」とワン氏。


中国でのAmazonのサービスは、2004年に中国のオンラインショッピングサイトであったJoyo.comを買収したあとから緩やかに成長していきます。それまでAmazonが世界各地で展開してきたオンラインショッピングに関する経験と、Joyo.comが培ってきた中国市場における専門知識を融合させることで、中国市場でのオンラインショッピングサービスを成功に導くことができると当時は考えられていました。

しかし、実際にはJoyo.comからJoyo Amazonにサービス名を変更するのに3年、さらにそれからAmazon.cnに改名するまでに4年もの年月を費やしています。


Amazon.cnとしてサービスを展開できるようになるまで7年もの時間がかかってしまったわけですが、その間にも競合サービスは急速に事業を成長させていきました。

競合の1つであるオンラインショッピングサービスJD.comのサービスがスタートしたのは、AmazonがJoyo.comを買収した2004年のこと。中国最大級のオンラインショッピングサービスであるAlibabaは、2008年に「独身の日」をスタート。独身の日は2018年には秒速4000万円で物が売れまくるという驚異のイベントにまで成長しており、Amazonはこれら競合サービスの成長速度についていけなかったと言えます。

「独身の日」の売上記録をAlibabaが更新、秒速4000万円で物が売れまくる - GIGAZINE


Pandailyは「Amazonが昔ながらの穏やかで遅い方向転換で目標に向かって前進している間、競合サービスは激しい割引合戦やオンライン広告またはオフライン広告などを駆使して、中国の消費者の目と財布をつかんだ」と記しています。加えて、「Yahoo、MySpace、eBayなどの先駆者同様、Amazonも絶えず変化する中国市場に適応しきれなかった」とも指摘。

調査会社のiiMedia Researchが公開しているデータによると、2018年前半の中国B2C市場におけるAmazon.cnのシェアは1.2%未満にまで低下していました。一方で、Alibaba・JD.com・Tmallといった中国における3大オンラインショッピングサービスのシェアは、合計で83.8%を占めるにいたるまで成長しています。なお、2008年時点ではAmazon(当時はJoyo Amazon)の中国B2C市場におけるシェアは15.4%と、かなりの高い数字でした。

JD.comのCEOであるRichard Liu氏は、JD.comがAmazonと競合しているときに最も感じたことは「Amazonが中国チームに信頼を置いていない」という点であったとしています。Liu氏は「中国の意思決定権はアメリカ本社にゆだねられていたため、反応が遅くなっていました」と語っており、Amazonが中国チームに信頼を置いていなかった点が、中国市場の急激な変化についていけなかった最大の要因であると指摘しています。

対して、競合サービスの1つであったJD.comは、Alibabaと比較しても配達の速さを切り札にシェアを拡大しています。Amazonもプライム会員向けに購入から2日での配達サービスを提供してきましたが、JD.comは半日から1日で配達を済ませるサービスを展開しており、Liu氏は「顧客は6時間以内に製品を入手できることを期待しています。2日では時間がかかりすぎでしょう」と、AmazonとJD.comのサービスの違いを強調しています。

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Amazonは中国市場からオンラインショッピングサービスを撤退させる予定ですが、2019年2月にAmazon.cnと中国のクロスボーダーeコマースプラットフォームのNetEase Kaolaが、海外の購買事業を統合するための動きを加速させていました。ワン氏はクロスボーダーeコマースで「Amazonが自社製の高品質な製品にこだわることができれば、販売促進戦略を変更し、その管理構造を調整することができる」と指摘しています。

実際、iiMedia Researchのデータによると、Amazonの質の高い製品は中国市場に受け入れられる大きな足掛かりとなっているそうです。以下のグラフはiiMedia Researchが2016年に集計した、中国のモバイルユーザーに聞いた「どの海外eコマース企業を信頼しているか?」をまとめたグラフ。1位はNetEase Kaolaの36.7%で、2位がAmazonの30.1%となっており、Amazonのオンラインショッピングサービスは中国市場で不発に終わったものの、Amazonというブランドについては依然として高い信頼性が保たれたままであることがうかがえます。


中国のクロスボーダーeコマース市場は成長段階にあり、取引規模は2018年に1.4兆ドル(約160兆円)に達しており、2019年にはさらに成長すると予想されています。今後、クロスボーダーeコマースがAmazonの中国展開にとって最後の望みとなるのかどうかは不明ですが、少なくともワン氏は「望みはある」とみているようです。

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in ネットサービス, Posted by logu_ii

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