ヒトの新種がフィリピンの洞窟で発見される
歴史で習う「ホモ・サピエンス」「アウストラロピテクス」「北京原人」といった化石人類たちに新しく名を連ねる、ヒトの新種の化石がフィリピンの洞窟で発見されたと発表されました。イギリスの科学誌ネイチャーに報告されたこの発見はムービーに分かりやすくまとめられており、YouTubeで視聴することができます。
A new species of Homo from the Late Pleistocene of the Philippines | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1067-9
New human species found in the Philippines - YouTube
フィリピンの洞窟で、小さい骨のかけらが発見されました。科学者たちはこれを、これまで見つかっていない人種のものだと考えたそうです。
この新しい人種は、骨の化石が発見されたフィリピンの島「ルソン島」からとって、「ホモ・ルゾネンシス」と名付けられました。
これまで、ホモ・ルゾネンシスの手がかりはあまり多くなく、手足の骨がいくつかと、大腿(だいたい)骨がひとつ、歯が7本見つかっているだけでした。それらは全て小さく、ホモ・ルゾネンシスの身長は4フィート(約121cm)ほどと想像されるそうです。
このような小型の人類は東南アジアで2種類目で、2004年には「ホビット」として知られる体と脳が小さい「ホモ・フロレシエンシス(フローレス原人)」という種が科学者により明らかにされています。
ホモ・ルゾネンシスもフローレス原人も、私たちの先祖とされるホモ・サピエンスと同時期の5万年前に活動していたと考えられ、ネアンデルタール人や謎の多い化石人類のデニソワ人と密接な関係があるとのこと。これらの化石人類はアジアを放浪しており、異なる種族間の交配が行われたとも考えられていますが、一方でフローレス原人やホモ・ルゾネンシスは島で独立的に生息していたと想定され、それにより資源が少なかったことも体が小さいことの原因だとされています。
研究者たちは、「ホモ・ルゾネンシスはフローレス原人よりも小さく貧弱だった」と考えているそうです。またホモ・ルゾネンシスの大きな特徴が「歯」にあると見られていて、古代の歯に見られる特徴と現代の歯に見られる特徴を混合した奇妙な化石になっているとのこと。
このような特徴から、ホモ・ルゾネンシスの祖先がホモ・エレクトスである可能性が考えられています。ホモ・エレクトスはホモ・ルゾネンシスやフローレス原人よりも前の時代にアフリカから東南アジアまで移動してきたとされており、そのためそれら化石人類はホモ・エレクトスの小さいバージョンというふうに考えられるそうです。
しかしながら、ホモ・ルゾネンシスの足の骨はホモ・エレクトスにも他の種にも似ておらず、300万年前にアフリカで生息していたアウストラロピテクスのつま先の骨に近い特徴をもっています。この骨の特徴は、「ホモ・ルゾネンシスがどこで誕生しどのように移動した種なのか」という疑問を生みます。
アウストラロピテクスのかかとの骨は少しカーブしており、これは木登りに有利な特徴であることから、アウストラロピテクスは二足歩行するようになってからも木登りをしていたと考えられています。それから250万年も後に同じ特徴を持っているホモ・ルゾネンシスも、同じく四足歩行でありながら木登りをする種族だったかもしれません。
発掘作業はなおも行われており、謎多きホモ・ルゾネンシスの秘密が追究されています。暑く湿気の多い地域のためDNAの生存は期待できないものの、骨から抽出できるタンパク質も他の化石人類との関係を示してくれるそうです。あまりにもややこしくて複雑な、しかしだからこそ魅力的なヒトの進化の歴史が、この発見によってまた新たな一歩を踏み出すことを期待されています。
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