「ARを追究し続ける理由」について「ポケモンGO」を生んだNianticのCEOが語る
「ユビキタス」とは「いつでもどこにでも存在すること」を表す英単語で、そこから転じて「時間、場所、人を問わず、インターネットネットワークにアクセスできること」を意味する「ユビキタス社会」という言葉が使われるようになりました。そうしたユビキタス社会の実現のために拡張現実(AR)を追求する理由について、2019年3月にサンフランシスコで開催されたGDC 2019で「ポケモンGO(Pokémon GO)」を生んだNianticのCEOであるジョン・ハンケ氏が語りました。
Designing a planet-scale real-world AR platform - Niantic
https://nianticlabs.com/blog/nrwp-update/
How Niantic is preparing for AR’s ubiquitous future | VentureBeat
https://venturebeat.com/2019/04/07/how-niantic-is-preparing-for-ars-ubiquitous-future/
ARをゲームとして世界に取り入れエンターテインメントを生むこともNianticが使命としているものではありますが、それはARの可能性の表面的な部分のみです。ハンケ氏は、「ゲームを越えてARが発展する未来をNianticは展望しており、スマートフォンではなく眼鏡を利用したARで生活を向上させることができる」との考えを語りました。
バスのチケットを購入したり、歴史的建造物などの情報を確認したりといった形でのARの活用をハンケ氏は望んでいるとのことですが、技術はその段階に遠く及んでいません。そのため、人気ゲームとなったポケモンGOの開発・運営に携わる人数と同じくらいに、現実世界のARプラットフォームの開発に力を入れているそうです。
ハンケ氏は、AR開発プラットフォームによって広がったAR体験の重要さを説きつつ、同時に「ARはゲームをヒットさせる万能の手段ではありません。ARモードを用いたプレイは2~3分が理想的であり、ゲームの大部分は依然としてARの外で行われるべきです。また、AR体験のためにスマートフォンをかざす行為が『無差別に写真を撮っている』と周囲の人々に受け取られる可能性も考慮する必要があります」と、ARの欠点についても述べています。続けてハンケ氏は、ARを発展させるための正しいアプローチは「AR以外では実行できないAR用のものを設計すること」だと強調しました。
またハンケ氏は、次世代のARがどのように発展していくかを語りました。ポケモンGOでは、ARにより現実の風景にポケモンが現れたように見ることができるものの、それはあくまで現実の背景の前にポケモンの姿が見えるだけで、現実世界の周囲を意識していません。次世代のARでは、現実に段差があるときはそれを乗り越えるように、置いてある植木鉢の前に映るだけではなくその後ろに隠れるように、ホログラムである「ビット」と現実に実在する「原子」を結び付け、より没入型の体験を生み出すことが期待されているとのこと。現実世界とよりリンクしたAR技術「Niantic Occlusion」については以下の記事を読むと良く分かります。
従来のARをはるかに凌ぐリアルとデジタルの相互作用を実現可能なAR技術「Niantic Occlusion」 - GIGAZINE
「原子とビットを区別できないようにすることが、私たちの究極の目的です」とハンケ氏は語っています。ハンケ氏によると、ARは私たちが日常生活を送る中で役立つ情報やサービスを提供しながら、「私たちの世界に対する感謝と理解を深めることができる」という側面もあるそうです。だからこそハンケ氏は、ARを開始する前にARをしっかり理解することが、時間とお金を費やす価値があるものであると考えています。
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