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オンラインゲームのレイテンシを極限まで低下させるスタートアップ「Network Next」の取り組み


オンラインゲームをプレイする際に、「ボタンの入力がサーバーに届くまで何秒かかるのか」というレイテンシはゲーム体験を大きく左右する要素となっています。そのレイテンシを改善する方法について、Network NextというスタートアップのCEOであるグレン・フィードラーさんがゲーム開発者会議(GDC)で行った講演が公開されています。

Fixing the Internet for Games (GDC 2019) | Gaffer On Games
https://gafferongames.com/post/fixing_the_internet_for_games/

オンラインで動作するマルチプレイヤーゲームをリリースすると、プレイヤーの中にはゲームの動作について文句を言う人もいます。ゲームのプログラムや使っているプロバイダに問題がある場合もありますが、そうした要因の一つに「ユーザーからゲームサーバーまでのネットワーク経路が悪い」ことが上げられます。


画像など静的なコンテンツの配信であればユーザーの最寄りのサーバーから配信するエッジキャッシュという仕組みを使ったり、ストリーミングのムービーなどであればバッファリングを行ったりすることもできます。しかしゲームの通信はリアルタイムでインタラクティブなものとなっており、「いかにしてレイテンシを抑えるか」がゲーム体験を改善する大きなポイントとなっています。フィードラーさんはレイテンシを改善する方法として3つの方法を取り上げています。

◆1:数打ちゃ当たる戦法


レイテンシを抑える一般的な方法の一つは、できるだけ多くのプロバイダを利用し、できるだけ多くの場所でサーバーを実行することです。比較的利用されている方法ですが、プレイヤーが分断されたり、友人と遊ぶ際にどのサーバーを選ぶべきかの選択が難しくなったりします。

◆2:クラウドを利用する


クラウドサービスを利用するという選択肢もあります。例えばGoogleのものを利用すれば、Googleのプライベートネットワークを利用できるため、一般のインターネット経路を利用する場合に比べてレイテンシが改善しますが、価格が高いという問題があります。

◆3:ゲーム用に新たにインターネットを構築する


実現化は難しいですが、ゲーム用に専用のインターネットを構築するという方法もあります。実際にLeague of Legendsというゲームを展開するRiot Gamesが独自のプライベートネットワークを構築した例が存在します。League of Legendsをプレイする際には、ユーザーの利用するプロバイダから直接Riot Gamesのプライベートネットワークにパケットが送信されます。

確かにレイテンシは改善されますが、そのコストに見合う価値があるかどうかをきちんと考える必要があります。また、ゲームの数だけインターネットが登場することはエコシステム的にも良くありません。


フィードラーさんがCEOを務めるスタートアップの「Network Next」は上記の3つの方法とは異なり、既存のプライベートネットワークのインフラを間借りすることで安くレイテンシを改善する方法を提供するとのこと。

レイテンシという観点で見ると、プライベートネットワークに比べてパブリックなインターネットは非効率な点が目立ちます。講演の中で、グレン・フィードラーさんは「現在のインターネットがいかに非効率であるのか」を確かめる実験を公開しています。AB間の通信をUDPパケットを往復させて計測し、往復にかかった時間、レイテンシの安定性を示すジッター、そして通信中にパケットが失われるパケットロスの発生率をもとにスコアを付けます。


そして多数のプロバイダー間でそれぞれのスコアを計測します。


もしインターネットが効率的であれば、AB間に別のプロバイダー「x」を挟んで通信するよりもAB間で直接通信した方がスコアは良くなるはずです。しかし実際には「A-x-B」の方が70%から90%の確率でスコアが良くなるような場合が存在します。


上記のようにインターネットはレイテンシの面から捉えると非効率的な構造をしています。そこでフィードラーさんが考えたのは「プライベートネットワークを利用させてもらえば良い」というもの。独自のプライベートネットワークを築いている企業がその通信量の空き枠を販売し、ゲーム事業者が買い取るという仕組みです。


実際にその仕組みを導入すると60%ほどのユーザーの通信スコアが向上したとのこと。そのうち7%ものユーザーが20以上スコアを改善できたそうです。


特に格闘ゲームやMOBAなどリアルタイムの対戦型オンラインゲームをプレイするゲーマーにとってレイテンシは天敵とも言える存在です。こうしたスタートアップが登場したことでレイテンシが将来的に減少することに期待がもてそうです。

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in ネットサービス, Posted by log1d_ts

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