サイエンス

イベント受付・レジ担当・窓口係などを1名から2名に増やすだけで客の待ち時間は劇的に短縮できる


顧客がサービスを受けるために行列に並ぶような場面を、数理モデルを用いて解析することを目的とした理論が「待ち行列理論」です。この待ち行列理論は実際に人が並ぶ窓口やレジなどだけでなく、クライアントとサーバーを備えたあらゆるシステムにも応用可能なものとなっています。そんな待ち行列理論によると、イベントの受付やレジ担当、銀行の窓口係などの数を1つから2つに増やすだけで、行列側の待ち時間は劇的に解消されるそうです。

What happens when you add a new teller?
https://www.johndcook.com/blog/2008/10/21/what-happens-when-you-add-a-new-teller/

Server utilization: Joel on queuing
https://www.johndcook.com/blog/2009/01/30/server-utilization-joel-on-queuing/

待ち行列理論の有用性を解説しているのは、データコンサルタントとして活躍するジョン・D・クック博士。クック博士は「小さな銀行に1人の窓口係しかいない場合」を例に、窓口の人数を1人増やすだけで待機列がいかに減少するかを解説しています。


顧客が銀行の窓口でサービスを受けるのにかかる時間を「平均10分」、1時間あたりの銀行の来客数を「5.8人」と仮定すると、サービスを受けるために列に並ぶ人々の待ち時間はどのくらいになるでしょうか。

「顧客が銀行にやってくるタイミング」および「顧客がサービスを受けるのにかかる時間」をランダムなものと仮定すると、応対する窓口係が1人の場合、顧客がサービスを受けるために列に並び待つ時間の平均はなんと「約5時間」となります。しかし、窓口係を2人に増やすと、平均待ち時間は半分どころかなんと「約3分」にまで劇的に減少します。単純計算で、行列待機時間は窓口を2つにするだけでなんと93倍も短縮可能となるそうです。


顧客と窓口係のやり取りは平均10分、顧客が銀行にやってくるペースは平均10.3分となっているため、顧客の来店ペースが一定であり、応対時間も毎回10分ピッタリで終わるのならば行列はできません。しかし、実際には10分間に2人の顧客が来店したり30分間顧客の来店がなかったり、1人の応対に20分かかるケースや5分で済むケースも往々にして存在するため、条件のような銀行の場合、窓口の前には「平均で28人」の待機列が形成されてしまいます。これは待ち行列理論における典型的な例として用いられるもので、ポアソン分布を用いることで、顧客1人当たりの待ち時間が計算されています。

行列における待ち時間の計算方法については以下のページにかなり分かりやすくまとめられているので、気になる人はチェックしてみてください。

- サルでもわかる待ち行列


待ち行列理論において特に重要なのは、「顧客の来店ペース(上記の例の場合は1時間あたり5.8人)」および「サービスの提供にかかる時間(上記の例の場合は平均10分)」の変動率です。来店ペースおよびサービス提供時間が平均値通りに進んでいる間は行列も最小限で済みますが、これらにバラツキが生じる、つまりは変動率が高いと一気に長い待機列が形成されてしまうというわけ。

この待ち行列理論はイベント受付・レジ担当・窓口係といった実際に人が列を形成するような事例だけでなく、クライアントとサーバーを備えたあらゆるシステムにも応用可能です。以下のグラフは待ち行列理論を用いてサーバーの待機時間がどのように変化するのかを視覚的に分かりやすく表現したもの。縦軸がサーバーの待機時間、横軸が利用率を示しており、利用率が増加すると待機時間は指数関数的に跳ね上がっていくことがよくわかるはず。


ここで銀行に窓口を1つ追加するのと同じようにサーバーを1台追加してやると、1台のサーバーでは長くなりすぎていた待機時間を劇的に短縮することが可能になるわけです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
コミックマーケットでの整然とした待機列形成&行列移動を定点撮影したムービー - GIGAZINE

トイレの列の長さに象徴されるIT企業の欠点とは? - GIGAZINE

複数の長い列ができているとき、どの列に並ぶのが本当はベストなのか? - GIGAZINE

チケットを買う、ただそのために壮絶な死闘を繰り広げるインドの駅 - GIGAZINE

日本再上陸で3時間以上の長蛇の列を作った「タコベル・渋谷道玄坂店」に行って噂のタコスを食べてきた - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.