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命綱なしの素手で1000メートルの岩肌を登りきる様子はこうやって撮影されたというムービーが公開中、撮影陣もみんなクライマー


ロープや命綱、安全確保の道具を一切使わずにフリーソロを行うAlex Honnoldさんは、2017年にヨセミテ国立公園にある一枚岩「エル・キャピタン」を素手で登り切りました。この様子はドキュメンタリームービーとしてYouTubeで公開されているのですが、撮影にも大きな困難が伴ったとして、その舞台裏が明かされています。

ロッククライマーのAlex Honnoldさんが命綱やハーネスなしの素手でエル・キャピタンに挑戦した様子が公開されたのは2017年6月のこと。以下の記事からその様子を見ることができます。

「ゼルダの伝説 BotW」みたいにロープなし・命綱無しで崖をマジで素手だけで登るとこうなる - GIGAZINE


Honnoldさんのロッククライミングを映したムービーは、ドキュメンタリーフィルムを作るElizabeth Chai Vasarhelyiさんと登山家&写真家のJimmy Chinさんによって製作されました。以下のムービーで、2人はムービー撮影の課題や困難を語っています。

How They Filmed the First El Capitan Climb With No Ropes | Vanity Fair - YouTube


画像の女性がドキュメンタリーフィルム作家のVasarhelyiさん。


Vasarhelyiさんの隣にいるのが登山家でありナショナルジオグラフィックの写真家であるChinさんです。


エル・キャピタンは高さ3000フィート(約1000メートル)で、エンパイア・ステート・ビルディングエッフェル塔よりもはるかに高いことで知られています。


Honnoldさんは、安全確保の道具に頼らずにロッククライミングを行うフリークライマーの1人。たとえクライマーであっても、岩肌にダメージを与えず、落下もなくロッククライミングを完遂することができれば、それは人生における「達成」になりえます。しかし、Honnoldさんは安全確保の道具を使わない「フリーソロ」クライミングをメインに行っているとのこと。


エル・キャピタンのロッククライミングのルートはこんな感じ。


VasarhelyiさんがHonnoldさんに興味を持ったのは、「子どもの頃から人と話すのが苦手で、ロープ無しの素手で1人でロッククライミングを行うより、誰かに『パートナーになってくれない?』と声を掛けるほうが怖かった」というキャラクターにあったそうです。


エル・キャピタンを上るには、4~5箇所、非常上るのが難しい場所があり、その1つである「Freeblast Slab」はHonnoldさんにとって心理的にも物理的にも難所だったとVasarhelyiさんは語ります。


「Boulder Problem」や「Enduro Corner」など、さまざまな場所に難所があり、これら全てをカバーしつつ撮影するために複数の人が配置されたとのこと。


ムービー作りにとって最も重要だったのは、プロのクライマーでありながら写真家でもある人材によってチームを作ること。つまり、撮影を行える人自体が世界に数人しかいないわけです。


それぞれのカメラマンが45~50ポンド(20~23キログラム)の機器を持ちながら1000メートル近いロープを扱う必要があります。カメラマンは撮影を行いながら上っていくため、上に上がるにつれ身につけるロープは重くなっていきます。これらの道具を扱う技術や、壁に沿って動きつつ撮影する技術なども必要になります。


エル・キャピタンの難所の1つである「Freeblast Slab」は、凹凸がほとんどなく、手足を引っかけるというよりは岩肌との摩擦によって体を支える必要があるところ。「フリクション・クライミング」と呼ばれるこの行為には、大きな危険が伴います。


靴に使われているゴム素材の摩擦がカギを握るため、このシーンでは「足」に注目を置いたそうです。


Honnoldさんは「Freeblast Slab」から落下したことがあるため、心理的な課題も存在します。そのためムービーでは「物語」にも意識を置いたとVasarhelyiさんは語りました。


「Boulder Problem」という箇所も技術的に非常に難しいところ。


多くのクライマーが恐怖を感じるこの箇所では、撮影しているクライマーの恐怖がHonnoldさんに伝わらないよう、離れた場所から撮影されたそうです。


この撮影の問題は、バッテリーがどのくらい持つか分からなかったこと。カメラを持って下りて全てをダウンロードし、映像を見るまで本当に撮影できているかどうか確信を持てなかったといいます。


撮影された岩肌の映像を今か今かと待っていると、フレームの下からHonnoldさんが現れ……


クライミングの様子が収まっていたのを確認できたそうです。


「Enduro Corner」は指を差し込んで垂直に上る必要がある場所。腕を引っ張って、足で押して……という動きが続くので、非常に腕が疲れるところだそうです。しかし、普通のクライマーなら1時間はかかるここを、Honnoldさんは5~10分でクリアしたとのこと。


技術的に難しいところですが、映像的には見どころであり、真上から撮影されました。


上から撮影するカメラマンとは別に、ChinさんはHonnoldさんと並んで横から撮影していたとのことで、エル・キャピタンの頂上近くで合流。その際、難所を終えたHonnoldさんは笑顔を見せました。


「60秒だけ待ってくれない?」とHonnoldさんに声をかけたChinさんですが、「4時間を切りそうなんだ」と答えたHonnoldさんは待たずに登り切ってしまったそうです。


Honnoldさんの姿を見た人は「死への願望がある」と思いがちですが、これは誤解だとのこと。「Honnoldさんはクライミングの成功を通して人とつながることができる」という部分がもっともムービーの言いたいところだとVasarhelyiさんは示しました。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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