ビール専門家が2つのビールのどちらが高いか格付けチェック、価格の違いを見抜けるのか?

最もポピュラーなお酒の一つの「ビール」ですが、お手頃なものもあれば驚くほど高価なものもあります。ビール専門家がA・B2つのビールの銘柄を見ることなく、いずれの価格が高いのかを当てるブラインドテストを行うとこんな感じです。
Beer Expert Guesses Cheap vs Expensive Beer | Price Points | Epicurious - YouTube

「A、Bどちらのビールが高いのか?」の格付けチェックを行うのは、Brooklyn Breweryのビール専門家ギャレット・オリバー氏。

最初にチェックするのは「Pilsner(ピルスナー)」

「ピルスナーから始めるのはとてもいいね」というオリバー氏。ピルスナーは世界で最も普及しているビールで、日本のほとんどのビールもピルスナーです。

ピルスナーの味を決める要素は、「大麦のモルト」「イースト」「ホップ」「水」の4つで、製法は比較的シンプルです。

まずは外観のチェック。

Aのビールをワイングラスに注ぎます。かつてはワイングラスにビールを注ぐのは邪道という考えがありましたが、「今ではそれほど悪いことではない」とオリバー氏は話します。

「アンティークな金色はとても良いね」

非常に透き通っていて、ピルスナーとして想像する通りの見た目だとのこと。

泡の大きさが揃っていないのは非常に良いサインだそうです。

香りを確かめるオリバー氏。まるでワインのテイスティングのよう。

植物性の良い香りに少し硫黄の香りが混ざる、確かな香りだと高評価です。

続いてBのビール。「瓶だから高いというわけではない」と話しつつ、グラスに注ぐと……

「ちょっと(Aとは)違う色だね。かなり茶色い」

「泡もそろっている」

「香りもピルスナーにしては変だ」

「ちょっとバナナのような香りがするね。薄っぺらくて、いい香りとは言えない。ピルスナーらしくはないね」

外観チェックが終わり、実際に飲んで味を確かめてみます。

まずはAのビール。

思わず「Zap」という感嘆の声を出すオリバー氏。

確かな苦みはまさにピルスナーのもの。「食欲をそそるね」と非常に良い味のようです。

次にBのビール。

甘みがあり、発泡性が良好。ただし、苦みはかなり弱く、伝統的なピルスナーの味とは違うとのこと。

「まったく深みがないね。初めに泡がはじけて、バナナのような味。実験室から来たような風味だね」

「一番問題なのは、おいしくないというところだ」と散々な評価です。

「A、Bのどちらが高いか?」という問いには、迷うことなく「Aの方が高い」とオリバー氏は答えました。

紙を取り除いて正解を確認すると、Aは12オンス(約340グラム)で1.62ドル(約180円)。対するBは0.95ドル(約110円)

「まさかゼロから始まるとは、思ってもみなかったよ」と、Bの激安価格はオリバー氏にも驚きだったようです。

Aのビールについては、ピルスナーらしいフレーバーが楽しめる割にかなり安いとのこと。

また、金欠ならばBも悪くないと述べました。

次は「Belgian White(ベルジアン・ホワイト)」。「白ビール」とも呼ばれるビールです。

今ではビールは大麦のモルトで作られるのが一般的ですが、かつては小麦と大麦を半々の割合で作っていたとのこと。さらにホップやチョコレート、オレンジの皮、コリアンダーを加えることもあったそうです。

まずはAのビールからチェック。

「一般的なベルジアン・ホワイトよりは暗いね。ダークな金色だ」

「泡はとてもいいね。大きく開く泡と、きめ細やかな泡が混ざっている」

「こういうかすみ方は、このビールでは一般的なものだ」

香りをチェック。

「パスタのようだけど、小麦からすれば驚くことではない。コリアンダーの香りは、ホットドックみたいだ」

次にBのビール。

「ああ、これが伝統的な色合いだ。とても青みがある」

香りをかいだオリバー氏は「大好きな香りだね。とてもはっきりしていて、新鮮で、早く飲みたくなる」

実飲

Aのビールを飲んだオリバー氏からは「Wow」という声がもれました。かなり甘いようです。

甘みとともにわずかな苦みも舌に広がりますが、クリーミで「らしくない」味だそうです。

次にBのビール。

「Boon」という感嘆の声が出ました。

「とても良い泡で、オレンジの皮の特徴もとても澄んでいて、苦みもばっちり。飲み干してしまいそうだね」

オリバー氏の答えはもちろん「B」

Aはベルジアン・ホワイトにしては、どこか子どもっぽい味。Bこそが本物だとのこと。

「正解が逆だったら驚くね」と言いつつ紙をめくると、ズバリ正解。

Aは「リフレッシュさ」という点でベルジアン・ホワイトにしては物足りないとのこと。オリバー氏は「Bには1ドル余分に支払う価値がある」と述べました。

次は「IPA」

IPAはインディア・ペール・エールの略だということはあまり知られていないとのこと。1700年代発祥とその歴史は古く、ビールのオリジナルスタイルとでもいうべき伝統的なビールだそうです。

イギリスで生まれたIPAは、南アフリカへ送られ、さらにカルカッタへ送られと、大英帝国の植民地主義を象徴するビールだとのこと。ドライでシャープで苦く強烈なホップの香りが特徴。木製のビール樽に大量のホップを入れて保存することで6カ月の船旅に適応したそうです。

Aのビールをグラスに注ぎます。

昔のIPAは透き通っていたそうですが、最近のIPAにはよくあるかすみ具合だとのこと。

強烈なホップの香り。

ホップは高価なので、ホップを強く感じるビールは高いという分かりやすい目安があるそうです。

次にBのビールをグラスに注ぐと、IPAにしてはかなり暗めの色合い。

悪くない香りだそうですが、IPAのものとは少し違うとのこと。モルトが多いせいかビスケットのような香り。

泡は悪くないようです。

香りを確かめていて、一口飲んでしまったオリバー氏。

「思わず飲んでしまったよ」と苦笑い。

あらためて試飲。

Aのビールは「香りがとても強い。苦みはソフトだけれどバランスがいいね。ホップの香りが舌にとどまり続けるよ」と上々の評価です。

次にBのビール。

少し金属のような味がするとのこと。

技術的な観点から言えば化学的な印象があるものの、ビールの方向性としては悪くないようです。

しっかりとしたIPAらしい味で、大量のホップで作られたと思われるAが高いだろうという予想。

結果は、大きな差。

想像以上の価格の違いにはオリバー氏もびっくり。

ただし、オリバー氏によるとどちらのビールも価格に見合った価値はあるとのこと。芳醇なホップを楽しみたければAで、ハンバーガーやピザにはBが合いそうだと述べています。

IPAらしい舌の上ではじけるような味はAだそうです。

次が「Munich Dark Lager(ミュンヘン・ダーク・ラガー)」

ピルスナー以前は、ダーク・ラガーが最も一般的なビールだったとのこと。

まずはAのビール。

「美しい泡だね」

スモーキーな香りもかなり良く、いく層にもなる深みのあるダーク・ラガーらしいもの。

一方、Bのビール。

「それほどダークではないけれど、悪い色ではないよ」

大きな泡は、「岩」のような密度がなく、Aに比べるといまいちなようです。

シンプルな香りは、キャラメル要素が強め。

Aから飲むと……

飛び出す「Boon」

苦みは柔らかく、モルトから来るものだとのこと。

わずかな甘みと、強いクリーミーさに、休日に大きなローストビーフと一緒に飲みたい味だそうです。

これに対してBは……

軽く、一次元的な味と、評価は低めです。

オリバー氏の答えはもちろん「A」

またしても正解。

2倍近い価格の差はモルトの違いだとのこと。ミュンヘンのモルトで作る伝統的なダーク・ラガーの深みのあるキャラメルフレーバーは、砂糖で作った人工的なものとは違い、価格に見合う価値があるそうです。

「Barrel-Aged Beer(バレルエイジドビール)」

木製の樽で熟成させるバレルエイジドビールは、熟成時間が長いほど価格は高くなるそうです。時短のためにチップを入れる方法もあるとのこと。

まずはAのビール。かなり暗い色合いです。

岩のようなぎっしり詰まった泡は好印象。

香りをかいだオリバー氏は、スコットランドの樽ではないかと述べました。

熟成を早めるためにチップを使うと、バニラやココナッツのような香りがして、このような本物の深みにはならないそうです。

一方のBのビール。Aに比べるとかなり薄めの色です。

「ちょっとバニラやココナッツのような香りがするね。本物の木の香りは少なめだ」

泡のキメもAと比べると落ちるようです。

Aのビールを飲んだオリバー氏は、「Wow」と一声。

「黙り込んだね。トークをしよう」

ダークチョコレートのようで、素晴らしい柔らかみは、まさに樽で熟成させたもの。

「これはチップを使っていないと断言できるよ。本当にゴージャスだ」

対してBのビールは……

間違いなくしっかりした味だけれど、長い時間、樽で熟成させた本物の味には至らないとのこと。

オリバー氏の選択は「A」

純粋に熟成時間の差があらわれているとのこと。

結果、値段には驚くほどの差がついています。

驚くオリバー氏。

正直に言えば、4倍近い差を考えれば、Bを選ぶのはまったく悪くないとのこと。

長い時間かけて熟成された特別なビールを味わいたければAを選べばよいとのこと。きっと、特別な体験になるだろうと述べています。

最後は「Fruit Sour(フルーツ・サワー)」

カクテルなど他のお酒と同じくフルーツを使ってビールにフレーバーを足すことは、昔から行われていたとのこと。特に、樽にフルーツを入れたものが一般的だったそうです。

Bの瓶が「コルク」の栓が付いた伝統的なデザインだと指摘するオリバー氏。

まるでシャンパンみたいと思うかもしれませんが、実は歴史的にはフルーツ・サワーが先。フルーツ・サワーを真似したのがシャンパンだそうです。

Aのビールをグラスに注ぐと鮮やかな赤色。

「ラズベリーのような美しい色だね」

続いてB。コルク栓を抜きます。

注ぐと暗めの色。

「ドラキュラが飲みそうな色だね」

茶色がかった色は、長い時間が経ってフルーツが酸化したことを表しているとのこと。


樽の中の自然なイースト菌が作り出した香りだと想像できるとのこと。

まずはAから。

オリバー氏は、砂糖が足された不自然さを見ぬきました。

これに対してBを口に含むと漏れ出す「Wow」

チェリーのような味わいで酸味は強めですが、洗練された味。

もちろんオリバー氏の答えは「B」

正解。これまでで最大の価格差です。

「Aはまるでチーズケーキのように楽しい味。対してBは、ヤギの乳で作った濃厚なチーズのような味だね」と独特の表現をしました。

オリバー氏によると、ビールの世界はとてつもなく広く、とてつもなく深いとのこと。さまざまな価格帯のビールには、それに見合った「価値」があるもので、高いビールではその価値にあった特別な「体験」ができるので、いろいろなビールを体験してほしいそうです。

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