生き物

動物科学から見る「犬とのより良い接し方」とは?


犬が考えていることは、飼い主であったとしても、なかなか理解できないもの。キール大学で生物学の講師を務めるヤン・フール氏と動物の研究を行っているダニエル・アレン氏が「犬とのより良い接し方」について、さまざまな研究結果をもとに解説しています。

Do dogs have feelings?
https://theconversation.com/do-dogs-have-feelings-101998

「ペットを飼うことが人々にとってプラスの影響があること」を示す研究はたくさんあり、近年の医療の現場でも動物を使ったアニマルセラピーが盛んになってきています。

アニマルセラピーの始まりは、第二次世界大戦にまでさかのぼります。当時のアメリカ空軍に所属していたウィリアム・リン氏は戦地で弱っていたヨークシャー・テリアを見つけ、保護することに決めました。その後、リン氏はどこに行くにも、この犬を連れて行動するようになったとのこと。

その後、同氏がニューギニアの病院で傷ついたある兵士のもとを訪ねたことをきっかけに、犬の治療効果が見られるようになります。この病院で治療を受けていた兵士の多くはケガだけでなく精神的にも苦しんでいたそうですが、入院中の兵士がリン氏の連れていた犬と触れ合うことで、精神状態が徐々に改善していくようになり、「動物と触れ合うこと」が効果があると考えられるようになりました。この効果は後に研究でも示されることとなり、アニマルセラピーが生まれることになります。

By National Geographic

リンカーン大学の研究では「犬が人間の感情を認識していること」が示されています。たとえば、犬が飼い主から怒られる時におびえることがありますが、過去の経験と飼い主の状態から「これから怒られる」と判断して、このような態度を取ることがわかっています。

しかし、犬が人の感情を認識しているからといって、人が犬の気持ち理解できているわけではありません。人が怒られて行動を改めるには「自分の取った行動に対する罪悪感」を持つ必要がありますが、犬の脳では「正しい行動」と「誤った行動」の判別ができないことが明らかになっています。このため、犬は叱られても「自分の取った行動が悪いから怒られている」ということが理解できず、また同じ過ちを繰り返すことにつながってしまいます。


犬がどのように考えているかを知るには、犬のホルモン環境に着目した日本の麻布大学の研究から読み解くことができます。研究では、犬はなでられたときに愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が多く分泌されることが明らかになっています。オキシトシンは人間がストレスの緩和を感じることで分泌されることから、犬も同様の感覚を持っていることがこの研究で示されました。

また、逆に犬が不幸を感じると、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの分泌量が上がることも研究で示されています。このホルモンはストレスを感じたときに分泌されるもので、犬の場合は長時間1匹で過ごしているときなどに増加します。犬は群れて生活する動物であることから、ひとりぼっちで長時間過ごすことは高いストレスを受けると考えられています。


フール氏とアレン氏は「人と犬は生活する上でお互いにとって、とても重要な存在です。お互いのことをちゃんと理解できていなくても、良好な関係を保つための努力が必要です」と述べており、「犬を飼いたいから」という理由ですぐに飼うのではなく、自分や家族のライフスタイルで「犬をひとりぼっちにしない時間を長時間確保できるかどうか」を考慮する必要があるとしています。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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