インターネットチャットのIRCが生誕30周年を迎える

サーバーを介してクライアント同士がテキストベースのやり取りを行えるチャットを早くも1980年代に実現した「Internet Relay Chat(IRC)」が、2018年8月で30周年を迎えます。インターネット全盛のいまなお、IRCの持つ技術思想に共鳴する世界中の少なくないユーザーによって愛され利用されているようです。

History of IRC (Internet Relay Chat)
https://daniel.haxx.se/irchistory.html

Internet chat system IRC turns thirty | University of Oulu
http://www.oulu.fi/university/node/54247

チャットコミュニケーションツールのIRCは、端末やOSに依存することなく通信できるという特長があります。高いカスタマイズ性を持ち合わせているため、PCやスマートフォンはもちろん、望むならばゲーム機からもアクセスできるという柔軟性を持ちます。

1988年の夏にフィンランドのオウル大学の情報処理学部で働いていたJarkko Oikarinen氏がIRCクライアントとサーバーのコードを書いたときにIRCは誕生しました。Oikarinen氏はtolsun.oulu.fiで管理していたBBSソフトを拡張することで、ユースネットスタイルのニュースやリアルタイムの議論、BBS機能を持たせようとしたとのこと。友人のJyrki Kuoppala氏とJukka Pihl氏の助けを借りて、最初に着手したのはチャット機能でした。Oikarinen氏は「tolsun.oulu.fi」サーバー上でテストされたIRCについて、「IRCの誕生日は1988年8月でした。正確な日付は不明です」と述べています。

Jyrki Kuoppala氏は、Oikarinen氏に対してオウル大学以外でもIRCを使えるようにコードの解放を要求するとすぐにサーバーを用意し、のちに「irc.cs.hut.fi」になりました。これが初めてのIRCネットワークでした。Oikarinen氏はヘルシンキ大学とタンペレ大学でもIRCユーザーを得て、IRCサーバーを稼働させました。他の大学も次々とIRCに参加し、この時点でBBSの残りの機能はプログラム内に収まらないことにOikarinen氏は気づいたそうです。

さらに、フィンランド人以外で初めてIRCを使ったVijay Subramaniam氏からプログラムを受け取ったデンバー大学やオレゴン州立大学の有志によって構築されていたIRCネットワークが、フィンランドのナショナルネットワークであるFunetに接続され、さらにスカンジナビアの支局であるNordunetに接続され、ついに1988年11月にはIRCはインターネットで広がっていきました。

IRCはインターネットの普及とともに徐々にユーザーを減らしていき、最も活況を呈していたのは2004年から2005年だったとのこと。しかし、生誕30周年を迎えた2018年8月でさえ、IRCを利用するユーザーはしっかりと残っています。

コンピューターサイエンスを学ぶAtte Jauhiainenさんは、毎日IRCを使ってコミュニケーションを取っているとのこと。チャットの内容はランチデートやその日のニュースなどの日常的な話題ばかりだそうですが、「IRCには膨大な数のチャンネルがあり、チャンネルを簡単に作ることができます。例えば、イベントや趣味などのチャンネルを独自に作ることができます。コンピューターサイエンスを学ぶ新入生は、秋にIRCのトレーニングを受けます。私は大学に入る前にIRCを使ってはいませんでしたが、コンピューターサイエンスの分野ではIRCは役に立ちます。IRCを使うことでLinuxのコマンドラインに慣れることができるのです」とJauhiainenさんが述べるとおり、今なおIRCが多くのユーザーに利用されているようです。