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映画ポスターで「Trajan」フォントがなぜ多く使われるのか?


映画のポスターを1万6000枚以上見てきたというグラフィックデザイナーが、なぜフォント「Trajan(トレイジャン/トラジャン)」がこんなにも多くのポスターで使われているのかを説明する映像が、Voxの公式チャンネルで公開されています。

How one typeface took over movie posters - YouTube


映画館に行くと、予告編の冒頭で「あの映画で称賛を受けた監督の新作!」というような惹句がついていることがあります。画像の例だと、まずコメディ映画なのは間違いありません。


コレはアクション映画で……


コレはラブロマンス。音楽がなくても、フォントだけでなんとなくどういう映画なのかが伝わってきます。


ではこのフォントだとどうかというと、ぱっとすぐにはイメージが思い浮かびません。


このフォントは「Trajan」と呼ばれるフォントで……


ジャンルを問わずどこでも使われています。


「Trajan」とはどういうフォントなのかを語ってくれるのは、グラフィックデザイナーのイヴ・ピータース氏。ピータース氏はここ10年、字体やタイポグラフィについてのブログを書いていて、その過程で月間100枚、通算で1万6000枚という映画ポスターに目を通してきました、


ピータース氏が気付いたのは、Trajanが使われるようになったのはここ20~30年ということです。それがなぜかというと、Trajanはデザイナーのキャロル・トンブリー氏が1989年に生み出したフォントだから。


トンブリー氏は、ローマにあるトラヤヌスの記念柱の碑文の字体をもとに「Trajan」をデザイン。


TrajanはAdobe Photoshopなどに使われ、広まりました。


映画のポスターでTrajanをはじめて使ったのは1991年に公開されたアドベンチャー映画「At Play in the Fields of the Lord」でした。


1992年にはケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが共演した「ボディガード」と……


アル・パチーノがアカデミー主演男優賞を受賞した「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」で使用。


さらに、1993年には「ジョイ・ラック・クラブ」「ペリカン文書」「幸福の条件」とTrajanを使った作品がヒット。


1994年に入ると多くの作品で使用されるようになっていきます。


当初は叙事詩や難局を克服する人々の物語など、壮大な作品に使われることが多かったのですが、やがて、「映画ポスター界のArial」という表現が当てはまるほど「標準フォント」化。


ポスターデザインを急いで仕上げたいときTrajanが重宝されたと、ピータースさんは語っています。つまり、「Trajanにしておけば間違いない」という状況が生まれ、「とりあえずTrajan」状態に陥っていたものと考えられます。


しかし、ありとあらゆるジャンルの映画ポスターにTrajanが氾濫すると、今度は大作でTrajanを使いにくくなっていきます。このため、メジャー作品ではTrajanが使われなくなり、もっぱらホラー映画やB級映画が中心になっていきます。


こうなってくると「大したことない映画だが、ポスターだけはよさそうに見える」という状態に。Trajanに固定イメージがつかなかったからこその悲劇ともいえそうです。


ピータース氏は、「Trajan」の栄枯盛衰がデジタル書体を利用することのマイナス面を示していると指摘。ポスターデザインにおいて文字入力がデジタル化されると、フォントは後からでも自由自在に変更可能です。


しかし、かつては手描きやレタリングで文字を入れていたので、作品によってフォントに個性があったという主張です。


映画ポスターも「見比べてみてそっくり」ということはなく、「ジャンル特有のフォント」というのもありませんでした。


ただ、ジャンル特有のフォントができあがってくると「こういうフォントが使われているなら、こういう作風なのだろう」ということが見ている人に伝わりやすくなります。


音楽の世界では「ビートルズ以降、いいものが出てこない」と言う人がいたり……


「いや、モーツァルト以降、いいものが出ていないんだ」と表現する人もいます。


しかし実際には多くの興味深い新たな音楽が生まれています。これは映画のポスターについても同様。「手描き時代を懐かしむことはあります。しかし現代にも、とてもよいポスターデザインは生まれているのです」とピータースさんは語っています。映画ポスターは海外版と日本版で異なることも多々ありますが、フォントに着目して比較するのも面白いかもしれません。

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in 映画, Posted by logc_nt