「キャンペーンに応募して新車をゲットしよう!」に応募すると思わぬ詐欺に巻き込まれる可能性もある理由
By Stephen Hanafin
高級車や豪華旅行、食べきれないほどの高級肉など、実に魅力的な商品を掲げるプレゼントキャンペーンを目にすることがよくあります。しかしその裏には綿密に練られたマーケティング戦略が隠されているもので、場合によっては詐欺行為にも相当する偽のキャンペーンが実施され、いわゆる「タダほど高いものはない」といわれる状況に陥ってしまう可能性があることは、よく理解しておく必要があります。
Why nobody ever wins that car giveaway at the mall
https://thehustle.co/why-nobody-ever-wins-the-mall-car-giveaway
ある日、アメリカ・カリフォルニア州にあるショッピングモール「Great Mall」で多くの人が集まるセンターホールには、最新型の自動車「アキュラ・TLX」が展示されていました。車両価格が3万3000ドル(約360万円)というこの自動車はあるプレゼント企画のトップ商品として用意されていたもので、車体の周りには応募に際して氏名や年収、クレジットカードの種類や家族構成などを入力するための10台のディスプレイが置かれていました。
ライターのザッカリー・クロケットさんがその様子を観察していると、木曜日の午後の1時間だけでも22人がディスプレイを使ってキャンペーンに応募していたとのこと。しかし、クロケットさんの調査によると、それら応募者が実際にアキュラ・TLXをゲットできるチャンスはほぼゼロであるといいます。
クロケットさんはまず、そのプレゼントキャンペーンを運営しているのが誰であるかリサーチを開始。すると、キャンペーンが実施されていたGreat Mallは1日あたり1500ドル(約16万円)でスペースを貸しているだけで、実際のキャンペーン実施者はGreat Destinations Vacationsという企業であることが判明。この企業は、各地にあるリゾートホテルを複数の利用者が共有(タイムシェア)するタイプのサービスを提供している企業です。
クロケットさんが実際にGreat Destinations Vacationsに電話をかけ、実際の当選率を尋ねてみたところ、電話口に出た「パトリック」と名乗る男性とのやり取りは次のようなものだったとのことです。
パトリック:「名前は?」
クロケット:「ザック」
パトリック:「名字は?」
クロケット:「どうして僕の名字が必要な……」
パトリック:「名字が必要です。じゃないと進めません」
クロケット:「わかった。でも……」
パトリック:「遊んでる場合じゃないんで、OK?じゃ!」(といって電話を切る)
このような仕打ちにあったクロケットさんは、同僚のリンゼイさんに協力を依頼。特殊な方法で追跡不能な電話番号を用意し、「ケイティ・サンダース」という偽名で再び「パトリック」に電話をかけました。再び電話に出たパトリックは、「ケイティ・サンダース」の偽のフルネームや年齢、婚姻状態などの情報を尋ね、最後に「キャンペーンに応募するためには28歳以上である必要がある」といって電話を切ったそうです。
クロケットさんはさらに、別の同僚であるコナーさんに協力を求め、「ケイティ」の父親になりきってもらうことにしました。再び電話をかけ、やり取りを進めているとパトリックはコナーさんに、Great Destinations Vacationsの事務所に来て、タイムシェアに関する90分の説明を聞くように伝え、さらに「ディズニーランドに無料で行けるバケーションプラン」を薦めても来たとのこと。ここでコナーさんが「そういえば、自動車はもう誰かに当たった?」と尋ねると、パトリックは「まだですよ!ひょっとしたらあなたかも知れませんね!お待ちしています!」と答えたそうです。
しかしこの内容は、全くのウソであることがわかっています。ショッピングモールで応募する際に確認を求められる記載の内容には、以下のように「展示されている自動車や船などはイメージです」という条項がひっそりと記されていたとのこと。また、展示されていたアキュラ・TLXは、近隣のアキュラのディーラーから展示するために借りていたものであったことが、ディーラーの証言から明らかになっています。
つまりこの「プレゼントキャンペーン」は全くの架空のものであり、実際の目的は豪華な賞品で応募者を募って個人情報を集め、リゾートホテルのタイムシェアサービスを勧誘するための情報を収集するためのキャンペーンだったというのが、その真相でした。応募の際には「携帯電話番号」「フルネーム」「婚姻状態」「年齢」「旅行に行きたい場所」「総収入」「持っているクレジットカードの種類」などの情報を全て記入し、最後に、「私はGreat Destinations Vacationsおよびその関連企業が私に対してセールスを実施することを許可します。また情報が売られても文句はありません」という内容に合意が求められ、実際に承認してしまうという恐るべき流れが仕組まれていたというわけです。
日本の場合、この手のキャンペーンは景品表示法(景表法)の規制を受けるため、そのままそっくり実施される可能性は低いといえます。しかし一方では、ほぼ全てのサービスを無料で利用できるSNSや、Googleなどのサービスでも一定の情報がやり取りされることがあり、自分が思っているよりも多くのプライバシーが流出しているケースも存在することを、頭の片隅に置いておくべきといえそう。電子フロンティア財団の弁護士であるリー・チェン氏が語った「何かを手に入れるためにお金を払っていないとしたら、あなたはデータを売り渡しているということです」という言葉を胸に刻んでおく必要があります。
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