レビュー

青空文庫の名作が1日3分で読めるメールで小分け配信されてくる「ブンゴウメール」レビュー


まるで文豪からメールが届くかのような形で、青空文庫の名作が毎日ちょっとずつ小分けで送られてくるサービスが「ブンゴウメール」です。「時間がなくて本を読めていない」という人や「名前だけ知っているけれどあまり古典を読んだことがない」という人に対する新しい形の読書体験となっているとのことだったので、実際に使ってみました。

ブンゴウメール | 文豪から毎朝メールが届く、新しい読書体験
https://bungomail.notsobad.jp/

ブンゴウメールの登録を行うには、トップページにある「メールアドレス登録(無料)」というボタンをクリック。


こんな感じの登録フォームが現れるので、テキストフォームにメールアドレスを入力して「送信」をクリックすればOK。なお、Gmailや携帯キャリアアドレスを使っているとフィルタに引っかかって届かないことがあるとのこと。その場合はここから解決策を探れます。


すると1カ月間毎日、こんな感じで朝9時すぎにメールが届きました。2018年5月は太宰治の「走れメロス」が配信されたのですが、Gmailで確認するとメールの差し出し主のアイコンが太宰の写真になっており、まるで太宰からメールが届いたような雰囲気です。なお、2018年6月からは9時ごろだった配信時間が朝7時ごろになるとのこと。


メールを開くと、中には文字数と、読了時間の目安が書かれていました。走れメロスは短めの小説なので、1メールあたりの内容は1分程度で読める文章量になっています。


たとえば5月1日のブンゴウメールは以下のような感じ。文字数は400字なので、Twitterでいうと3ツイートぐらい。これくらいの量であれば「時間がない」と思うことなく、さっと目を通すことができます。

メロスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(こ)のシラクスの市にやって来た。
メロスには父も、母も無い。
女房も無い。
十六の、内気な妹と二人暮しだ。
この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿(はなむこ)として迎える事になっていた。
結婚式も間近かなのである。
メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
メロスには竹馬の友があった。


5月17日はこんな感じ。基本的には区切りのいいところで文章が途切れるのですが、セリフの途中で区切れることもあり、翌日「どういう流れだっけ……?」と前日のメールを読み返すことも。

満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻(か)きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。
押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。
ありがたい。
メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。
一刻といえども、むだには出来ない。
陽は既に西に傾きかけている。
ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。


「待て。」

「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」

「どっこい放さぬ。


メロスが山賊に襲われてやる気を失ってから再び走り始めるまでにかかった時間は、ブンゴウメール換算では5日間でした。1日ずつ分けて読むと「メロス、まだウジウジしているのか……!」とやきもきします。

約束を破る心は、みじんも無かった。
神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。
動けなくなるまで走って来たのだ。
私は不信の徒では無い。
ああ、できる事なら私の胸を截(た)ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。
愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。
私は、よくよく不幸な男だ。
私は、きっと笑われる。
私の一家も笑われる。
私は友を欺(あざむ)いた。
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。
これが、私の定った運命なのかも知れない。
セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。
君は、いつでも私を信じた。
私も君を、欺かなかった。
私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。


そして、5月31日、ついに走れメロスが完結。

おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

 どっと群衆の間に、歓声が起った。


「万歳、王様万歳。」

 ひとりの少女が、緋(ひ)のマントをメロスに捧げた。
メロスは、まごついた。
佳き友は、気をきかせて教えてやった。


「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

 勇者は、ひどく赤面した。


(古伝説と、シルレルの詩から。)


ブンゴウメールの作者はウェブディレクター&デベロッパーのほげにしさん。「最近、仕事以外の本を読んでいない……」という人でもブンゴウメールなら1日1~3分程度の時間を取る事で、名前は知っているけれど読んでいなかったという名作を読めるようになります。


6月から何が配信されるかは、届いてからのお楽しみですが、太宰治の「ヴィヨンの妻」、フランツ・カフカの「断食芸人」、新美南吉の「ごん狐」などが「1日3分のメールを読み続けるだけで1年で読める作品」の例として挙げられています。


5月31日付けで走れメロスは完結し、6月1日からは新しい作品の配信がスタートします。6月からは以下の3点で少し運用が変わるとのこと。朝9時すぎの配信だと学校なり仕事なりが始まっていてメールを読むタイミングを逃し、どんどん読めていないメールがたまっていく……ということもあったのですが、朝7時だとその問題が解決しそうです。

・配信時間が早くなり、朝7時ごろに届くようになります
・月の最終日より1日早く作品が完結するようになります
・毎日の文章量がもうちょっと長くなります


なお、5月に行われた走れメロスの配信はここから確認することが可能。ほげにしさんのTwitterにはメロスの3日間を整理した年表も投稿されていました。

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in レビュー,   ネットサービス, Posted by logq_fa