サイエンス

肌から栄養を吸収することはできるのか?

by Hanna Postova

人間が栄養を摂取しようとする時、通常は口から食べ物をとることを考えます。サプリメントなどの栄養補助食品についても同様で、形が丸薬だったり粉末だったりの違いがあるにしろ、基本的に口から摂取するのが一般的。しかし、一部の企業がそういった栄養補助食品の在り方を変えようとしており、口ではなく皮膚に直接塗布して摂取する方法が開発されています。

Can You Absorb Nutrients Through Your Skin?
https://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/trends-fads/can-you-absorb-nutrients-through-your-skin

ニコチンパッチやエストロゲンパッチのような「経皮吸収パッチ」から、化粧水やクリームまで、皮膚に塗布する形で体内に物質を伝達しようというものはいくつも存在します。それではビタミンやミネラルといった栄養素は皮膚経由で体内に伝達することができるのでしょうか。アメリカ軍は、食品から十分な栄養を得ることができないような「高強度の紛争期間中」などに備え、栄養素やその他の化合物を皮膚から摂取するためのパッチを開発しています。しかし、このパッチの開発に取り組んでいる科学者は、「今後10年のうちに実地テストが行えるような段階にまで持っていくことは難しい」と考えているそうです。

実際、人間の皮膚は付着した成分が容易に体内に伝達されない構造となっています。肌に触れたものすべてが血流に溶けるとすれば、大変なことになることは容易に想像できるはず。ローションや美容液に含まれる栄養素が皮膚の表面に美容上の影響を与えることはありますが、驚くほど丈夫な皮膚の外側から内側に浸透することはほとんどありません。それゆえ、亜鉛などが用いられるミネラルベースの日焼け止めを肌に塗ることが可能となるわけです。ある研究によると、亜鉛を含む日焼け止めを使用しても、血液中の亜鉛の含有量への影響はごく微量であることが明らかになっています。それでも一切影響がないわけではないという点には注意が必要です。

by Hello I'm Nik

また、成分によっては皮膚の吸収しやすさが異なってきます。特にマグネシウムは皮膚から効果的に吸収することができないことが研究により判明しているため、もしも皮膚から栄養素を摂取する方法を開発する場合は、成分ごとの吸収しやすさまでしっかり考慮する必要があります。

皮膚から栄養を体内の血流に吸収するには、吸収される化合物が少なくとも「親油性もしくは脂溶性である」という特徴と、「化合物の粒子が小さい」という特徴を持っている必要があるそうです。基本的に既存の市販されている「栄養補給パッチ」をうたう商品に含まれる化合物は、このいずれも満たしていないため、安全性や有効性について十分に検証されたものでないケースが多いとのこと。

軍などで開発されている栄養補給パッチでは、「親油性もしくは脂溶性である」「化合物の粒子が小さい」という特徴を持たない化合物を体内に取り込むため、「大きな分子をナノ粒子に分解する」や「皮膚の脂質層で拡散しやすい物資の中に化合物を注入する」など、さまざまな方法で試行錯誤が繰り返されています。他にも、小さな針を使って皮膚に小さな穴を開けることで物質が体内に浸透しやすくするという方法や、化学物質を使って皮膚の表面を多孔性に変える方法、電気刺激を使って毛穴を広げてそこから化合物を侵入させる方法、微量透析などを用いる方法なども提案されています。

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こういった方法が製薬会社や軍により試験されているわけですが、そのどれもが開発中の段階であり、どの方法が成功するかはわかりません。ただし、数百円で販売されているようなビタミンパッチなどにこういった最先端の技術が用いられていないことは明らかであり、その効能は言うに及ばずというのが現状だそうです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii