宇宙人と人類は「言葉」によるコミュニケーションができるのか？

by tutincommon

人間は宇宙人や地球外生命体の存在について多くの議論を交わしており、「地球の生命は宇宙からやってきた」という主張がなされたり、「宇宙人を探索する計画」が行われたりしています。そこで気になってくる「もし人間が宇宙人に会えたとして、コミュニケーションがとれるのか？」という疑問について、言語学者らはさまざまな主張を行っています。

Decoding Alien Messages Could Be the Biggest Citizen-Science Project Ever
https://www.livescience.com/62678-decoding-alien-messages.html

Alien languages might not be that different from ours - CNET
https://www.cnet.com/news/alien-languages-might-not-be-that-different-from-humans-says-noam-chomsky/

オハイオ州ボーリング・グリーン州立大学の言語学者であるシェリー・ウェルズ・ジェンセン氏は、「地球外生命体にも理解しやすいこと」を目的に設計された人工言語Lincosを用いていくつかのパズルを作り、被験者の学生たちに解かせる実験を行いました。

その結果、学生たちは基礎的な数学的パズルは解くことができたものの、複雑なパズルになると解くことができなくなってしまったとのこと。あるパズルでは、ジェンセン氏が「円の円周を求める方程式」と「円周率」についてLincos化されたコードで学生に伝えた後に、「今伝えた概念は、一体何を表したものでしたか？」と尋ねました。すると学生たちは円周の方程式や円周率といった解答にたどり着くことはほとんどなく、「世界」「無限」「刑務所」といったさまざまなバリエーションの答えを述べたそうです。

ジェンセン氏は人間自身によって作られた人工言語ですら、同じ人間の中で解釈の幅が存在することを指摘し、共通の文化を持っていない宇宙人の言語解読はさらに困難になるだろうと考えています。そこでジェンセン氏は、「宇宙人の言語を解読するには、大規模な市民プロジェクトによって人々の知恵を結集し、一つの納得できる答えを決める必要があります」と語っています。

by FolsomNatural

「現代言語学の父」ともいわれる言語学者のノーム・チョムスキー氏は、2018年5月に開催された国際宇宙開発会議(ISDC)のカンファレンスにおいて、「火星の言葉は人間の言葉とそれほど変わらないかもしれません」と述べました。

チョムスキー氏は「もし火星人が地球にやってきたとしたら、『人間はみな一つの言葉の方言を話している』と感じるでしょう」と以前にも語っており、地球上で人間が使う言語には共通の基礎構造があるとしています。また、ISDCで発表された論文においてチョムスキー氏は、「宇宙人の言葉にも人間の言葉と共通の基礎構造があるかもしれない」と主張しており、宇宙人と人間のコミュニケーションは可能だと考えているようです。

サウスカロライナ大学のブリジット・サミュエルズ氏と南イリノイ大学のジェフリー・プンスク氏は、宇宙全体における普遍的な物理法則が言語の共通基礎を形作る可能性があるとしています。プンスク氏は「宇宙人との接触やコミュニケーションは非常に困難ですが、物理学や論理学、数学といった普遍的概念がコミュニケーションの足がかりになるかもしれません」と述べました。

by mzeecedric

一方でローレンス工科大学のゴンサーロ・ムネヴァ教授は、紫外線を目で見ることができるガや熱を見ることができるヘビの例を挙げ、「地球上の生物であっても異なる世界の捉え方をしている」ことを指摘。「もしも地球外生命体が視覚ではなく、電気を感知して世界を把握している生命体であれば、人間とは全く違う世界の捉え方をしている可能性があります」として、宇宙人が地球と類似の科学的言語や数学を持っていると期待するのは間違いだとしています。

いまだかつて人間が宇宙人と接触したという事例はありませんが、言語学者らは来たるべき地球外生命体との接触に向けて、さまざまな説を検討しているようです。