バラの遺伝子の秘密がようやく明らかに、思っていた以上に「いちごに近い」
by Laura Ockel
バラは品種によって多様な色と香りを持ちますが、バラの遺伝子は非常に複雑で、どの遺伝子がバラの香りや色を決定しているのかは、長い間わからないままでした。そこで、フランス・ドイツ・中国・イギリスの科学者40人以上によって調査が行われ、初めてバラの遺伝子情報が明らかになりました。これまで考えられていた以上に、バラは「いちご」に近いそうです。
The Rosa genome provides new insights into the domestication of modern roses | Nature Genetics
https://www.nature.com/articles/s41588-018-0110-3
A genetic bed of roses: scientists sequence the complete genome of the rose
https://www.zmescience.com/science/rose-genome-sequenced-30042018/
Genetic secrets of the rose revealed - BBC News
http://www.bbc.com/news/science-environment-43950743
バラは装飾用としても、香水の材料としても重宝され、文化的・経済的に重要な花の1つとして存在します。古代ギリシャから装飾用のバラが育てられてきたとのことですが、バラの遺伝子は複雑極まりなく、研究者らはDNAの断片情報をつなげて対象ゲノム配列を復元する「ゲノムアセンブリ」にこれまで成功していませんでした。バラのゲノムの解析結果が断片的で、全体としての解読が困難だったというのがその理由です。
そんな中で、リヨン高等師範学校のモハメド・ベンダマン氏が率いる研究チームはロサ・キネンシスという品種のゲノム配列を高精度で解明することに成功しました。ロサ・キネンシスは中国を原産地とする、さまざまなモダンローズの原種となっているバラで、「オールド ブラッシュ」とも呼ばれています。研究者らは7組の染色体の遺伝子情報を解読し、3万6377の遺伝子全てを特徴づけることに成功したとのこと。
by Midori
「高品質なゲノムアセンブリのおかげで、バラの香りの生合成や、色、盛時、生物的・無生物的ストレスに対する抵抗力など、遺伝子が調整する情報を知ることができました」とベンダマン氏は語っています。
また、研究者がバラの進化や原種について探るべく、いちごやアプリコット、もも、りんご、なしの遺伝子と比較したところ、バラといちご、ラズベリーの3つは進化的に非常に近い位置にあることが判明しました。これまで考えられていたよりも、バラといちごが近い種であることがわかったわけです。
by Kelly Sikkema
研究によって盛時や花の発達、繁殖、香りや色素の合成といったことの生合成経路や主たる遺伝子が明らかになり、研究チームはこれらの遺伝子が介入する生合成経路の復元にも成功しています。特に研究チームはバラの香りと色を同時に調整する遺伝子のグループが存在することを強調しています。
この調査で明らかになったバラの遺伝子情報は、「花瓶の中で美しさを長く保つ品種」や「害虫に対して強い品種」といった特定の特徴を持つ品種を開発する上で役立てられるものとみられています。
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