生き物

コアラの遺伝子情報を解読することで種の保存につなげるという研究が行われる

by May Wong

オーストラリアに生息するコアラはかわいらしい外見から非常に人気の高い動物ですが、近年では環境の変化や病気によって個体数が減少しています。そんなコアラの保全に役立てるため、「コアラの遺伝子情報を解読する」という研究が行われています。

Adaptation and conservation insights from the koala genome | Nature Genetics
https://www.nature.com/articles/s41588-018-0153-5

Koala genes might reveal how they survive a toxic diet | Popular Science
https://www.popsci.com/koala-genome

オーストラリア野生生物ゲノムセンターの設立者であり生物学者でもあるレベッカ・ジョンソン氏によれば、オーストラリアに生息するコアラ全体の個体数はおよそ10万~60万頭の間であり、地域によって異なる大きさや毛の色を持っていることから、3つの亜種に分類できるとのこと。しかし、ジョンソン氏らの研究チームがコアラの遺伝子情報を解読したところ、3つの亜種は外見等の違いはあるものの、遺伝子的には1つの種であることが判明しました。

3つの亜種は生息する環境や繁殖状況にそれぞれ違いがあり、たとえばオーストラリア南部に生息するコアラは近親交配率が高いものの、個体数は豊富です。一方、北部は道路の建設などにより生息範囲が狭まりつつあり、個体数は減少傾向にあるものの、遺伝的には多様性を維持しているとのこと。ジョンソン氏は、南部のコアラにおける遺伝的多様性が欠如しているという問題を、北部のコアラを南部に移動させることで解決できるとしています。

by NH53

また、研究チームはコアラ内の亜種における遺伝的多様性を突き止めるだけでなく、「コアラという種そのものがどのように他の種と違うのか」という点にも着目しました。コアラと最も遺伝的に近い動物は、コアラと同じくオーストラリアのみに生息するウォンバットとされており、2つの種は数百万年前に遺伝的に分離したことが推測できるそうです。

コアラはほとんどの動物に対して毒性を有するユーカリの葉を主食にしており、1日に小さなレタス1玉分ほどの葉を食べるそうです。コアラの腸にはユーカリの葉を分解する微生物が生息していることが知られていましたが、今回の遺伝子情報解読によって、他の動物と比べて解毒酵素の生産に関わる遺伝子を、コアラが多く持っていることがわかりました。

さらに、コアラの主要な水分源はユーカリの葉であり、水分量の多いジューシーなユーカリの葉を選択して食べることがわかっています。今回行われた遺伝子情報の分析により、コアラにはユーカリの葉の味や香りをもとに、葉が含む水分量を評価する機能が備わっていることも判明しました。

by Dave Hunt

コアラの個体数減少の理由は人間の開発による生息域減少だけでなく、クラミジアへの感染レトロウイルスの感染などの病気による影響も非常に大きいとのことで、「これらの病気を治療するにあたり、根本的な遺伝子情報の解読は役立つだろう」と研究チームは考えています。また、「病気に対する治療法を研究すると共に、遺伝的多様性を維持するために遺伝的に離れたコアラたちの生息地をつなげる必要がある」と研究チームは結論づけています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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