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挿絵に隠された謎を解いてリアルに宝探しをする絵本が生んでしまった衝撃の歴史


仮面舞踏会」は1979年にキット・ウィリアムズによって書かれた絵本であり、挿絵に隠された暗号を解読すると実際に宝の在りかがわかる仕組みになっていました。さらに、最初に見つけた人に宝物が贈呈されるルールとなっていたことから、多くの人々が宝探しに参加し、後の宝探しブームのきっかけになったことで知られています。また仮面舞踏会は宝探しの参加者に衝撃を与える事件も起こしており、その経緯がYouTubeで公開されています。

The Crazy Story Of A Real Life Treasure Hunt - YouTube


1970年代半ば、イングランドの大手出版社に勤めていたトム・マシュラー氏は、当時そこそこ名の知られていた美術家のキット・ウィリアムズ氏のもとを訪れました。


ウィリアムズ氏に対して、マシュラー氏は「これまで誰も作ったことのない絵本を作らないか」と仕事の依頼を行ったそうです。


仕事の依頼を引き受けたウィリアムズ氏は「一度目を通された後、すぐに読まれなくなるような本は作りたくない」と考えていたようで、「どうすれば、読者により長く、そして内容を吟味させることができるか」について悩んでいました。


そして考え出されたアイデアが「パズルブック」でした。


このパズルブックは普通の絵本のように見えますが、ウサギや人などの16枚の挿絵にキーワードが隠されており……


誰よりも早く解読に成功すると、ウィリアムズ氏自身が作成してイングランドのどこかに隠した「18カラットの金や宝石で作られたウサギの首飾り(以下、金のウサギ)」を手にすることができるというものでした。


「仮面舞踏会」とタイトルが付けられたウィリアムズ氏のパズルブックは、1979年に出版され瞬く間に大ヒット。


ウィリアムズ氏に仕事を依頼したマシュラー氏は「出版から1日後に5万部の増刷しましたが、勢いは止まらず、3日後に再度5万部増刷するという異常事態となりました。ここまで大きな反響を呼んだ本は見たことありません」と語っています。


また、「仮面舞踏会」に記された金のウサギは、遠方の人に不公平にならないように、事前に解答をウィリアムズ氏に送付し、掘り起こす前に承認を得る必要がありました。


そして、出版から2年たち、数千万人がこの本に挑戦。ウィリアムズ氏の元には大量の手紙が届きましたが、誰も正確な解答を導き出すことはできませんでした。


しかし、1982年3月に金のウサギの正確な位置を示す解答が、ウィリアムズ氏のもとに送られてきました。


正解を導き出したケン・トーマス氏の手紙には、絵本に隠された暗号に関する考察が欠けていました。しかし、金のウサギの正確な位置が記されていたため、ウィリアムズ氏はトーマス氏の解答を信用して正解と認めました。


その後、ウィリアムズ氏はトーマス氏に金のウサギを掘り起こすように指示をしたことにより、多くの人を巻き込んだ仮面舞踏会の宝探しゲームは幕を閉じることになりました。


仮面舞踏会に隠された暗号は、ウィリアムズ氏が独自に考案したとてもユニークなものでした。


仮面舞踏会の全ての挿絵は、複数のフレーズが書かれた枠で囲まれています。


この枠内に存在する複数の生き物に着目することが、謎を解くヒントとなっています。たとえば、この絵の中にはウサギ、人、犬の3つの生き物がいます。


そして、挿絵の中に存在する各生き物の左目と左手を結ぶ直線を引き、延長線上の文字を見つけます。


次に、右目と右手。


各動物の「左目と左足」「右目と右足」を結んだ延長線上にある文字を特定していきます。


すると、この挿絵から、6つのアルファベットが出現し、並べ替えると「Buried(埋めた)」という単語になります。


この要領で全ての挿絵から単語を集めると「Catherine's Long finger Over Shadow Earth Buried Yellow Amulet - Midday Points The Hour In Light of equinox - Look you(春分の光が正午、黄色い首飾りの埋まる地面の上にキャサリンの中指の影を落とす)」という文が完成します。


さらに、各単語の頭文字だけを集めると……


「CLOSE BY AMPTHILL(アンプトヒルの近く)」となり、明確な場所も特定できます。


これらの情報を総合すると、「イギリスのアンプトヒル公園にあるキャサリン・オブ・アラゴン記念碑の先端が、春分(または秋分)の日の正午に落とす影の真下に金のウサギがある」ことを示しており、金のウサギが隠された場所が明らかになる仕組みでした。


しかし、1982年に解決したと思われた宝探しに問題があったことが明らかとなります。金のウサギがトーマス氏のもとに渡った6年後の1988年、イギリスのサンデー・タイムズがスキャンダルを報じました。


「仮面舞踏会で金のウサギを手にしたケン・トーマスという人物は実在しておらず、デュガルド・トンプソン氏が名乗っていた偽名であったこと」がサンデー・タイムズによって明らかにされたのです。


さらに、当時トンプソン氏のビジネスパートナーだったジョン・ガード氏の交際相手が、作者のウィリアムズ氏と以前同居していたヴェロニカ・ロバートソン氏であることも明らかになります。


ロバートソン氏は、ウィリアムズ氏が仮面舞踏会を執筆していたときに同居しており、金のウサギの正確な位置は知らなかったものの、だいたいの位置は把握していたそうです。


そして、ロバートソン氏、トンプソン氏、ガード氏の3名が金のウサギの場所を探しだし、ケン・トーマスを名乗って「場所のみを特定した」解答をウィリアムズ氏に送ったことが真相であると、サンデー・タイムズが報じました。また、ウィリアムズ氏のもとには、ケン・トーマス氏の解答が承認された直後に、2人の物理学者が正確な解答を記した手紙が届いていました。このため、ウィリアムズ氏はこの物理学者たちに金のウサギを渡すべきだったとショックを受けていたそうです。


スキャンダルが発覚した頃、トンプソン氏は「Hare Soft」という名前のゲーム会社を立ち上げており、「HARERAISER」という名前のゲームを開発し、販売していました。このゲームはウィリアムズ氏の「仮面舞踏会」のアイデアをそのまま流用しており、ゲームの謎を解き明かした人に「金のウサギ」を贈呈するというものでした。


しかし、HAIRRAISERのゲーム画面に映し出される映像やテキストには情報が不十分と見られるものが多く、プレイした多くの人が全く理解できなかったとのこと。この結果、誰も金のウサギを受け取ることはありませんでした。この影響からか、Hare Softも事業に失敗し会社は倒産してしまいました。


Hare Softの倒産後、金のウサギは競売にかけられており、3万1900ポンド(約480万円)で落札されました。しかし、誰が落札したかは明らかになっていません。


そして、21年後の2009年8月、BBCが金のウサギの所在を追いかけたところ所有者が判明しました。その後、金のウサギがウィリアムズ氏のもとに無事戻ってきたそうです。

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