シリア政府が行った攻撃で化学薬品が使われていたという証拠の入手は困難になると専門家が予想
By REUTERS
2018年4月7日にシリア政府は、東グーダ地区のドウマを攻撃しました。この攻撃で40人以上が死亡し、数百人の負傷者がいたと報告されています。このシリア政府が行った攻撃には、化学兵器が使用された疑いがあったため、化学兵器禁止団(OPCW)はシリアに調査団を派遣しました。OPCWの調査団は2018年4月14日にシリアのダマスカスに到着しているのですが、治安状態が良くないとの理由から記事作成時点ではドウマ入りできていない状態が続いています。この調査団が現地入りできない状況は、シリア政府軍とロシア軍により、化学兵器使用の隠ぺい工作が行われているからではないかと専門家は指摘しています。
Douma 'attack': How do you test for chemical weapons? - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43801091
現地の医師によると、患者は口から泡を吹き、皮膚と唇が青ざめ、角膜熱傷とけいれんの症状を併発しているとのこと。これらの症状から推測すると、患者たちは塩素または神経ガスによる被害を受けたと考えられています。
By Ninian Reid
シリア政府とロシア政府は、事件が明るみになった後、OPCWの調査団に化学兵器の使用有無を調査するよう要請しました。その後、OPCWの調査団は2018年4月14日にシリアに入国。しかし、記事作成時点でも現地に入ることができておらず、調査が行えない状態が続いています。さらに調査団を悩ませるのは、現地入りした後だと考えられています。
化学兵器と思われる武器を使って攻撃が行われたのは、2018年4月7日。その後「化学兵器は使用していない」と主張するシリア政府軍によってドウマは管理されています。このため、シリア政府軍が化学兵器を使った攻撃を行っていたとしても、調査団がその物的証拠を集めることができるのかという点が疑問視されています。
過去のシリア攻撃で、実際に化学兵器の使用有無を調査した経験のあるハミッシュ・デ・ブレットン・ゴードン氏は「調査団は、環境、生物医学的なもの、記録の3つの証拠を探すことになる」と話しています。「環境」の証拠とは、爆弾の破片、土壌サンプル、建物などのコンクリート片などが該当します。また、「生物医学」とは被害者の血液、毛髪、尿などが含まれます。また、「記録」とは証言、映像、ソーシャルメディアへの投稿を調査することです。
By National Eye Institute
デ・ブレットン・ゴードン氏は「尿は塩素の存在を確認することに適しており、血液サンプルや毛髪のサンプルは、神経ガスの使用を示すことになるでしょう」と語っています。このため、負傷者と死者、そして生物医学サンプルを見つけることは、化学兵器の使用を裏付ける大きな証拠になります。
しかし、ロシア軍は2018年4月9日の週にドウマを訪れたと考えられており、証拠隠滅の疑いが指摘されています。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は「いかなる干渉も行っていない」として証拠隠滅の可能性を否定しています。
デ・ブレットン・ゴードン氏は、仮に証拠隠滅を行っていたとするのであれば、最初にがれきの中から爆弾の破片を見つけて全て取り除き、化学薬品を使って清掃することになるはずだと述べています。また、生物医学的な証拠と記録の証拠を取り除くため、ドウマの住民を証言させないようにしたり、立ち退かせたりすることが考えられるとのことです。
デ・ブレットン・ゴードン氏は「調査団がドウマを調査して遺体を見つけられなければ、それは、あなたに何かを伝えます。遺体が消滅していた場合、何かが間違っていることを示す強い兆候になるでしょう」と語っています。
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