2018年04月08日 20時00分アート

アートを使って世界をひっくり返す「Inside Out」プロジェクトとは？

JR氏はストリート・アーティストとして活動しており、さまざまな紛争地域や危険とされる途上国のスラム街などを訪れ、現地の人の顔をカメラで撮影し、その白黒写真を至る所に貼るというアートプロジェクトを行っています。JR氏の活動は、世界的な講演会を開催しているTEDで「世界に影響を与える活動」として評価され、10万ドル(約1000万円)の賞金を手にしました。そして、JR氏はこの賞金を使って世界中の人々がアートプロジェクトに参加できる「Inside Out」プロジェクトを開始しています。

How Artist JR Is Helping Connect Our Humanity Through Street Art | TED + GBS Present Torchbearers - YouTube

「アートは世界の見方を変えることができます」

「だから、私は皆さんにグローバル・アート・プロジェクトに参加して立ちあがってもらいたいと考えています」

「私の名前はJRです。自分のことをアーティストと呼ぶのが好きです」

「私の仕事をシンプルに説明すると、壁に白黒の画像を貼ることです。この仕事は人々の心をつなげると信じています」

JR氏は紛争地域や悲惨な事件のあった地域を訪れて、さまざまなアートプロジェクトの活動を行っています。ブラジルの貧民街では、3人の学生が拉致された後に殺害される事件が発生しました。メディアやNGO団体ですら無法地帯と称される現地に行くことを拒む中、JR氏はかまわず貧民街を訪れ、学生が拉致された場所に被害者の一人の祖母の顔写真を階段に貼るなど、街中に数多くの人の大きな写真を貼るという活動を行いました。

JR氏が2008年にケニアのキベラを訪れた際には民家の屋根や……

電車などに女性の顔写真を貼るプロジェクトを行いました。なお、これらの活動はJR氏個人で行えるものではなく、現地の人々の協力を得ることで達成されています。

戦争中のイスラエルとパレスチナを訪れた際には、同じ職業をしている両国民の顔写真を至る所に貼るという活動を行いました。軍の監視塔などにも無断で貼っていたようですが、何年経過しても意図的に剥がされた写真はほとんどなく、ほぼきれいな状態で残されていたそうです。

「芸術とは無縁な地域のコミュニティであっても、私が想像した以上にアートプロジェクトを行いたいと考えていました。しかし、私の力だけでは限界があります。そこで、私以外の人たちでもできることはないかと考えました」

「この思いを実現するために、私はInside Out Projectというウェブサイトを立ち上げました」

「ウェブサイトに顔写真を送信すると……」

「あなたの顔写真を大判でプリントアウトし、世界中どこにでも郵送します。つまり、誰もが私のかわりに、街中に写真を貼ることができる仕組みになったというわけです。2018年現在では、30万人以上の顔写真を印刷し130カ国以上に送っています」

そして、これ以外にも写真ブースを積んだトラックも走らせています。

「私は、このトラックを使って旅をしています」と語るのが、ルアナ氏。

彼女はジョシュ氏、バゼル氏、ジェイミー氏の3人と一緒に、アメリカの30都市を回っているそうです。

トラックが現地に到着し、撮影準備ができたら……

参加者はトラックに乗り込み、自身の顔写真を撮影します。

すると1分ほどで、トラックの側面から大判の白黒写真がプリントアウト。

プロジェクトに参加する人のほとんどが、自分の大きな顔写真を見たことはなく、プリントアウト後に記念写真を撮る人が多くいます。

その後、プリントアウトした顔写真は、壁に運ばれます。

顔写真は壁紙用のりを使って……

1枚ずつ貼られていきます

プロジェクトに参加したカリナ・ペレスさんは「このプロジェクトは、いつも『何かしたい』と考えていても、実行に移すことのできなかった人に絶好の機会をもたらしてくれます」と話しています。

JR氏は「この活動を、ただの迷惑行為で意味のない活動と感じる人もいるかもしれません。しかし、実際に紛争地域で写真が剥がされなかったり、危険とされる地域で見知らぬ現地の人が活動を手助けしてくれるなど、何かしら影響があることは事実です。どんな影響が起きるかは誰もわかりませんが、試してみる価値があります」と話しており、人々に何かを訴えることができることに意味があると説明しています。