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テスラの「Autopilot」とGM「SuperCruise」のどちらの半自動運転システムが優れているのかを徹底比較


完全な自動運転技術の確立にはまだまだ時間がかかりますが、テスラの「Autopilot」のような「半」自動運転システムは、確実にドライバーの負担を減らす効果があり、安全性を向上させるためにも不可欠な技術になりつつあります。他社に先駆けて公道での半自動運転システムをいち早く導入してきたテスラのAutopilotと、巨大な自動車メーカーであるGMが高級車キャデラックに満を持して導入した「SuperCruise」について、The Driveのアレックス・ロイ氏が徹底比較して、その優劣を評価しています。

The Battle for Best Semi-Autonomous System: Tesla Autopilot Vs. GM SuperCruise, Head-to-Head - The Drive
http://www.thedrive.com/tech/17083/the-battle-for-best-semi-autonomous-system-tesla-autopilot-vs-gm-supercruise-head-to-head

テスラの半自動運転機能「Autopilot」は、モデルS、モデルX、モデル3で利用できます。ただ、モデル3のAutopilotはユーザーインターフェース(UI)が変更されており、ロイ氏によると別のシステムと考えているとのこと。そこで、今回はより優れたUIを持つモデルS・X版のAutopilotを使っているそうです。なお、GMの半自動運転機能「SuperCruise」は、現時点ではキャデラックCT6のみで利用可能なので、比較テストにはCT6が使われています。

◆Operational Domain(運用領域)
半自動運転機能(運転アシスト機能)がどの場面で働くかを示す用語に「Operational Domain(OD)」があります。ODが大きいということは頻繁に半自動運転機能を使える場面が多いということで、逆にODが小さければ半自動運転機能が使える場面はより限定的だといえます。

テスラのAutopilotは前方を向くカメラとレーダーが視界良好であればかなり機能するとのこと。しかし、これはAutopilotの強みでもあり弱みでもあるそうで、ドライバーがODの限界を明確に認識できないため、システムへの過信が起こりえるとロイ氏は考えています。


これに対して、GMはLIDARを使って取得した高分解能の地図データを活用できます。GMのSuperCruiseのマッピングは完璧とは言えないものの、ロサンゼルス周辺に限定すれば非常に正確に機能する優秀なものだとロイ氏は評価しています。とはいえ、ニューヨークでは極めて限られた場面でしかうまく機能しないなど、地理的な問題を抱えているそうです。

GMにはSuperCruiseが認める道路マップを公開して、さらに車載ディスプレイでそれを確認できるようにするべきだという注文をつけつつも、ODに関しては僅差でSuperCruiseの勝利としています。


◆機能アップデート
テスラのAutopilotは、ソフトウェアアップデートをOTAで行えるという強みがあります。OTAによるアップデートの頻度も非常に高く、アップデートにおいてユーザーの手をわずらわせることもありません。

これに対してGMのSuperCruiseはOTAでのアップデートは不可能。GMは四半期ごとにアップデートを行うと主張していますが、作業はディーラーで行う必要があります。ディーラーはGMとフランチャイズ契約にあり、直轄ではないため当たり外れも多いものです。GMのディーラーは総じて良いとはしつつも、ディーラーでの更新作業は過去のもので、OTAこそ未来のものだとして、ロイ氏はAutopilotに勝利をあげています。

◆モードの視認性
これがAutopilotの運転席からの眺め。「Autopilotが起動しているかどうかを一体どうやって知れば良いのだ?」とロイ氏は述べており、モードの認識性の悪さはAutopilotの最大の弱点の一つだとしています。


対してSuperCruiseの眺め。緑色はSuperCruiseによる半自動運転モードであることを示してます。


ドライバーが手動でレーンチェンジをした場合は青


SuperCruiseが解除されるときの最初に赤色の警告表示がされます。


SuperCruiseが解除されるとこんな感じ。


モードの認識性はSuperCruiseの圧勝です。

◆システムONの容易さ
Autopilotの導入法は、灰色のハンドルアイコンがディスプレイに表示されているときに、ステアリングコラム左にあるクルーズコントロールを2回引くだけ。音が鳴り、AutopilotがONになったことが分かります。


SuperCruiseの場合、すでにレーダークルーズコントロールが有効な状態にあることが条件になっています。スーパークルーズボタンを押せば、モードが起動します。


ロイ氏は、操作性の良さでAutopilotに軍配を上げています。

◆強制解除の警告システム
道路状況に応じて、半自動運転機能が強制的に解除されることはあります。このときにドライバーにシステム解除を警告するシステム「TWS」が採用されています。AutopilotとSuperCruiseともにダッシュボードが点滅して視覚的に強制解除を知らせる仕様ですが、SuperCruiseにはシートを振動させる機能もあるため、この点でSuperCruiseがリードしているそうです。

◆手放し運転
ロイ氏によると、初代のAutopilotは非常に優れていて、30分間ハンドルから手を離して運転することができたそうです。しかし、テスラは「Autopilotはハンドルから手を離して使うものではない」と方針を変え、基本的にハンドルに手を置くことを強制しているとのこと。

これに対して、半自動運転モード時はハンドルから手を離す、自分で運転するときにはハンドルを握るという仕組みのSuperCruiseはより分かりやすく優れたものだとロイ氏は述べています。ということで、手放し運転ではSuperCruiseの勝ち。

◆ドライバー監視システム
Autopilotはドライバー監視システム(DMS)を持ちません。この点だけでSuperCruiseの勝利。もちろんDMSがあるからと入って安全性は保障されませんが、確かに役立つ機能であり、半自動運転機能の有無にかかわらず、すべての自動車に搭載すべきだとロイ氏は考えています。2年前にリリースされて以来、半自動運転機能をリードし続けてきたテスラにとって、DMSが完全に他社に遅れている領域だとロイ氏は指摘しています。


◆車線変更
Autopilotは車線変更が自動で行え、SuperCruiseは車線変更を自動で行うことはできません。しかし、これだけでテスラが優れているとは言えないとロイ氏は述べています。

Autopilotでは手動で車線変更をするとすぐにモードが解除されあらためてAutopilotをONにする必要があるとのこと。これに対してSuperCruiseは、手動での車線変更時には待機モードに入ります。車線変更が終わればすぐに半自動運転モードが継続されるため、不便はないとのこと。

本当に安全な自動車線変更システムが実現するまでは、SuperCruiseの考え方が完璧だとロイ氏は述べています。

◆状況認識
以下の画像は、1年前の第1世代のAutopilotを搭載したモデルSのディスプレイ表示。カメラが道路標識を認識していることや、前方に自動車が集団で走行していることなどが分かります。


Autopilotが作動すると以下の様にハンドルアイコンが点灯します。左の車線が点灯しており、レーンを認識していることが一目瞭然。信頼性が高い状態での走行であることがわかるとのこと。


なお、車線が点灯しない以下の画像は、前方のトラックに頼って半自動運転している状況で、少し頼りないものだそうです。


その後、テスラはHW2と呼ばれる第2世代のAutopilotでは表示を変え、2輪車も自動車として表示されるなど変更があったそうですが、ロイ氏は第1世代の表示の方が優れていたと感じているそうです。

対してSuperCruiseの情報表示は以下の通り。


テスラ車のような巨大な中央ディスプレイを持たないCT6では、タコメーター横に小さな自動車が表示されており、システムが信頼の置ける状況にあるかどうかを示す手がかりはなし。


ということで、状況への認識性の高さはAutopilotが優秀です。

◆レーダークルーズ
前方を走る車両との間隔を一定に保ったまま走行するレーダークルーズコントロール機能のもっとも不満な点は、車間を空けすぎるため間に別の車両が入ってくることだとロイ氏は述べています。車間の最低間隔を設定できるAutopilotにも、車間距離を伸ばせるSuperCruiseでも、他の車両の割り込みを完全に防ぐことはできないとのこと。

ただし、テスラ車はEVという特性上、トルクに優れており減速した場合のリカバリーが非常に得意で、おかげで3LのV6ツインターボエンジンを備えるCT6よりも遅延をより小さくできるとのこと。さらに、内燃機関を持つCT6にはギアが不可欠で、ギア変更がスムーズに行かない場合は急な割り込みでストレスがかかるそうです。

ということで、レーダークルーズに関してはAutopilotが勝利。

◆レーンキープ機能
ロイ氏によると、SuperCruiseのレーンキープアシストシステムはステアリング入力が穏やかで、不安を感じたりすることがまったくないレベルで革新的とさえ言えるものだとのこと。それに比べるとAutopilotは緊張を覚えるものだとのこと。わずかな差でSuperCruiseに軍配を上げています。


◆どちらが優れているか?
ロイ氏は最高の半自動運転技術について「キャデラックのドライバー監視システム・地図を持ち、テスラ車の状況認識の良さ、UI、レーダークルーズコントロール機能を持つもの」だろうと述べており、AutopilotとSuperCruiseは一長一短であり、ユーザーが何を重視するかで答えは変わると述べています。

とはいえ、GMのSuperCruiseの性能について非常に高く評価しているロイ氏に言わせれば、GMがこの機能をそれほどアピールしていないのが残念だとのこと。投資家向けの発表でもSuperCruiseにメアリー・バラCEOが触れることはなく、すでに諦めているとさえ感じているそうです。他社はGMの動向を注視しており、仮にSuperCruiseを埋没させてしまうとすれば、半自動運転システムの技術の進歩にとっても痛手だとロイ氏は感じているようです。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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