「パタゴニア国立公園」設立のため100万エーカーの土地を寄付したトンプキンズ氏はどんな人物なのか?
2018年1月29日(月)に非営利団体である「トンプキンズ コンサベーション」のクリス・トンプキンズ氏とチリのミシェル・バチェレ大統領が国立公園誓約に署名し、「パタゴニア国立公園」と「プマリン国立公園」がチリの国立公園システムに加えられることが決まりました。この誓約を実現するにあたり、「トンプキンス コンサベーション」側は100万ac(約40万5000ha)の土地をチリに寄付しています。これだけの広さの土地を寄付するという行為は、私有団体が国に対して行った史上最大の土地の寄付にあたるようです。なぜトンプキンズ氏が、広大な土地を寄付することができたのかについて、The New York Timesが報じています。
With 10 Million Acres in Patagonia, a National Park System Is Born - The New York Times
https://www.nytimes.com/2018/02/19/world/americas/patagonia-national-park-chile.html
バチェレ大統領はチリの首都サンティアゴから南に715マイル(約1150km)ほど離れたホルノピレンから南アメリカ大陸南端のホーン岬に至るまでの広大な土地を国立公園とする誓約に署名しました。パタゴニア国立公園の設立は、ザ・ノース・フェイスとエスプリ・ホールディングスの設立者であるダグラス・トンプキンズ氏とその妻であるクリス氏の功績であり、夫婦が財産の大半を使って、パタゴニア地域の土地を購入し続けたことで国立公園化に至りました。
ダグラス氏は1961年に、初めてパタゴニアを旅行し、これがきっかけとなったのか、30年後に4万2000ac(約1万7000ha)の土地を購入します。そして有機農業を始め、1993年に妻のクリス氏と結婚。クリス氏はアパレル企業のパタゴニアのCEOに昇格することになりますが、その後退職し、ダグラス氏と暮らしていました。
そしてダグラス氏はレニウエの南にあるコルコバド山の近くに20万8000ac(約8万4000ha)の土地を購入。さらにその南部の土地を次々と購入していきます。その後は公園を作るために、長い年月をかけて所有者のいない土地を購入し続け、7万ac(約2万8000ha)以上の広大な土地を手に入れ、「プマリン公園」として開発を行っていくことになります。夫婦の努力の甲斐もあって、2005年には「プマリン公園」が自然保護区に認定されることになります。
トンプキンズ夫婦は後の「パタゴニア国立公園」となるヴァレ・チャカブコにある76万4000ac(約31万ha)の広大な牧場を購入し、「パタゴニア公園」と名付けます。ロッジやキャンプ場、ハイキングコースに道路を建設する他、自然生態系を元に戻すため、野生動物を再導入するプログラムも実施しました。
ダグラス氏は2015年12月にカヤック事故により72歳で亡くなることになりますが、その後クリス氏主導のもと非営利団体である「トンプキンズ コンサベーション」はチリ政府に対し、「政府が所有するパタゴニア地方の土地を譲り、国立公園化するのであれば、団体が所有する土地100万ac(約40万5000ha)寄付する」という案を提出しました。
この申し出に対してチリ政府は、団体が所有する土地の面積をはるかに凌ぐ900万ac(約364万ha)の土地を国立公園のために寄付し、5つの国立公園の新設と3つの公園の拡張を約束しました。国立公園となる1000万ac(約405万ha)の土地はヨセミテ国立公園の面積とイエローストーン国立公園の面積の3倍以上の大きさに相当します。パタゴニア国立公園の誕生により、ピューマやコンドル、フラミンゴ、そして絶滅の恐れのある動物の保護地域を拡大することになります。
バチェレ大統領は「国立公園はチリだけでなく、地球にとっても良いことです。そして、自然保護の決定を行うのは、決して先進国だけではありません。必要なのは意思と勇気だけなのです」と語っています。
なお、トンプキンズ コンサベーションは隣国アルゼンチンの北東部にも大規模な土地を持っており、この土地もアルゼンチン政府に寄付する活動を行っています。
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