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カスタマーサポートの写真を「女性」「男性」「ブロンド美女」「猫のキャラクター」に変更すると、何が起こるのかという記録


ウェブサイトやアプリの開発を行っている場合、ユーザーと直接連絡が取れると製品のフィードバックに役立ちますが、同時に心無い中傷に担当者がストレスを受けてしまう可能性もあります。ウェブサービスの運営者がカスタマーサポートの写真と名前を「女性」「男性」「ブロンド美女」「猫のキャラクター」にすることで、届くメッセージにどのような変化が見られるかを実験しており、写真1つでストレスを格段に減らせる可能性が示されています。

Why I don't use my real photo when messaging with customers on my website · Kapwing Blog
https://www.kapwing.com/blog/why-i-dont-use-my-real-photo/

オンライン・ムービー編集ツール「Kapwing」の開発者で創業者の1人である24歳の女性・Julia Enthovenさんは2017年10月にウェブサイトを立ち上げ、ユーザーとメッセージが直接やりとりできるようなチャット機能を設置しました。


これがKapwingのウェブサイト。右側にある「Team Kapwing」と書かれたポップアップがチャットツールです。Team Kapwingという文字の左側にはトラ猫のイラストが描かれていますが……

Kapwing - The Online Video Editor
https://www.kapwing.com/


当初、イラストのある場所にはEnthovenさんの顔写真が表示されていたそうです。


チャット機能を設置すると有用なフィードバックを得ることができたそうですが、すぐに1日に2回は「攻撃的なコメントや中傷の言葉」「Enthovenさんの見た目に関するコメントや性的なジョーク、誘い文句」「不快な言葉やいやみ」などが送られてくるようになったそうです。

これが実際のメッセージ。「fuck off(うせろ)」から始まり……


「愛してる」「ビッチ」など、製品と関係のないメッセージが連なります。


最初の1カ月はこのような嫌がらせメッセージを笑って流していたEnthovenさんですが、11月30日には会社に到着する前に7通の侮辱を受け取るまでになってしまったとのこと。そこで、Enthovenさんが取った行動は、自分の写真を共同設立者であるEric Luさんの名前&写真とを交換するというものでした。

これが実際に使われたLuさんの写真。メッセージのやり取りは依然としてEnthovenさんが行っていたそうです。


すると、これまで届いていたような攻撃的なメッセージはぴたりとなくなったそうです。多くのメッセージはムービー編集ツールに関するもので、内容もフレンドリー。


1週間のうち、失礼なメッセージを送ってきた人は1人だったとのこと。


写真のもたらすインパクトをさらに調べるべく、Enthovenさんは今度は魅力的な容姿のブロンド女性の写真と「Rachel Gray」という名前をチャット機能に表示させました。


すると、写真の変更から1時間もしないうちに性的な嫌がらせメッセージが届きだしたといいます。


「Rachel Gray」が受け取った嫌がらせメッセージは、Enthovenさんの写真を表示していた時以上でした。人々は「Rachel Gray」をデートに誘い、ヌード写真を要求し、性的な行動を求めました。「Rachel Gray」に変更したことで製品に関する質問が増えたのかどうかは未分析のため不明ですが、嫌がらせのメッセージについて言えば爆増したようです。

最後にEnthovenさんは、「Rachel Gray」の写真をKapwing kittenと呼ばれるキャラクターを変更、名前を「Team Kapwing」として表示させました。


すると、製品がうまく動かなくてイライラしている人はいたものの、人々は「Rachel Gray」が表示されている時と比べてフレンドリーかつ敬意を表して連絡してくるようになったとのこと。「人々は猫を攻撃しない」とEnthovenさんは記しており、Kapwing kittenのおかげでしばらくハラスメントを受けずに済んだとのこと。

運営して3カ月で、Kapwingのウェブサイトには5万5000人以上が訪れ、10万ものムービーが編集され、2100通ものメッセージが届きました。ということで、以下のグラフが4種類のアバターが「失礼あるいは不快なメッセージ(オレンジ)」「やじやセクハラメッセージ(青)」を1週間あたりに受け取った数を示したしたもの。女性、特にブロンドの女性のアバターが受け取った攻撃的なメッセージがずばぬけて多いことがわかります。


もちろん、上記のテストは実施条件が異なっており「科学的」とはいえないものです。しかし、シリコンバレーで働くEnthovenさんにとって、これは「インターネット上では性別を変えると扱いが変わる」ということの初めての経験だったとのこと。そんなEnthovenさんがウェブサイト所有者に送るアドバイスは以下の通りです。

◆もしチャットボックスを担当しているのが女性の場合、ペンネームを使ってもよい
社名やロゴを利用するとカスタマーサポートは容易に、かつストレスのたまりにくいものとなります。Kapwingの場合、「Team Kapwing」という名前を使うことでユーザーは自分がやりとりしている相手が男性だと思う傾向にあるそうです。

◆サポート担当の見た目に留意する
カスタマーは「かわいらしく」「まやかし」の担当者ではなく、「信頼に値する」「現実」の担当者を望みます。運営するビジネスがどのようなものであっても、「会社のイメージに沿った専門家」としての見た目を心がけてください。

◆カスタマーサポートは人間的である
インターネットによってカスタマーと物理的な距離ができたといっても、スクリーンに面しているのはカスタマーも企業の担当者も、どちらも人間だということを覚えておくべき。人は互いのことを知らなくても、おしゃべりし、相手をいじめ、友だちになるもの。間違いも犯せば結論にと飛びつくことや、無感覚になることもあります。ユーザーは時にあなたを傷つけますが、あなたの作ったプロダクトを使っている人々と直接つながることは楽しいものだ、とEnthovenさんは語っています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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