体罰を受けて育った子どもは発育に遅れが生じる傾向がある
幼少期に受けた体罰によって、肉体だけでなく精神的にも大きな傷を負いかねない危険性が指摘されています。ドミニカ共和国で行われた研究では、体罰を受けた子どもは、社会適応性、言語能力、運動能力などの発育に遅れが出ることが明らかになっています。
Parenting Practices and Associations with Development Delays among Young Children in Dominican Republic - Annals of Global Health
http://www.annalsofglobalhealth.org/article/S2214-9996(17)30659-8/fulltext
Study Finds Spanked Children Are More Likely To Have Developmental Delays | IFLScience
http://www.iflscience.com/health-and-medicine/study-finds-spanked-children-are-more-likely-to-have-developmental-delays/all/
世界保健機関(WHO)の調査によると、低・中所得の国では2億人を超える子どもたちが発育に遅れがみられる「developmental delays」(発育遅延)の問題を抱えています。所得の低さと相関関係があると思える発育遅延ですが、子育てにおける「体罰」が関係しているという見解もあり、発育遅延を生み出す環境要因を明らかにし、子どもの健康的な成長を目的に世界的に研究が進められています。
そんな中、ドミニカ共和国ラ・ロマーナにある月齢6カ月~60カ月の子どもたち向けの発育支援施設に通う74組の保護者とその子どもについて、発育遅延が及ぼす環境要因の調査が行われました。子どもの発育状況を調べる手法としては、発展途上国で一般的なMalawi Development Assessment Tool(MDAT)と呼ばれるツールを用いて、年齢に応じたスキルをチェックすることで、社会適応性、運動能力、言語能力などの発育状況が調べられています。
調査では、約3分の2にあたる64.8%の子どもが少なくとも1つ以上の要素で発育遅延にあることが判明しました。発育の遅れが目立ったのは、32.4%が該当した「社会適応性」、31%が該当した「細かな運動能力」で、特に「言語能力」に関しては発育遅延児全体の62%が該当したという顕著な結果となっています。
次に、発育遅延が見られた子どもの育て方を調べたところ、44%の保護者がspanking(お尻たたきなどの肉体的な体罰)を、43%が叱責(精神的な体罰)を使っていることが分かりました。そこで、これらの「体罰」が与える影響度を詳しく調べたところ、spankingでのしつけを行う保護者の子どもの54.5%が言語能力に遅延を持っていたのに対して、spankingのしつけを受けていない子どもは21.9%にとどまるという有意な差が現れました。また、社会適応性の遅延は、叱責を受けた子の40.6%で見られるのに対して、叱責を受けない子どもは20.6%にとどまるなど有意な差が現れています。なお、今回の調査では「体罰」には含まれないものの、キスや抱擁、おもちゃを買い与えることなどの保護者による子どもへの積極的な関与が少ないほど、社会適応性における発育遅延の割合が高いことも確認されています。
今回の調査では肉体的・精神的な体罰が子どもの発育遅延を発生させる傾向にあることが確認されました。ただし子どものサンプル数が60人と非常に少ないことから、より規模を拡大した追加調査が必要だと考えられています。
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