時代劇映画の聖地「松竹撮影所」でドローンを飛ばして撮影するDJIの空撮ワークショップに潜入してきました
数々の名作時代劇を生みだしてきた京都・太秦(うずまさ)の松竹撮影所を舞台に、本物の時代劇のセットを使ってDJIのドローンなどの最新の機器を駆使して映像作品を撮影するワークショップ「DJI PROFESSIONAL AERIAL WORKSHOP」が2017年11月10日(金)に開催されました。由緒ある撮影所で最新鋭のドローンを使った撮影が行われるという、他に類を見ない日本初のイベントに潜入することができたので、取材してきました。
DJI | PROFESSIONAL AERIAL WORKSHOP
http://www.japan-create.jp/landscape/djipro/
何はともあれ、太秦の松竹撮影所+ドローンで撮影され、編集を経て1本の作品になったのが以下のムービー。時代劇の見せ場である殺陣(たて)のシーンで、これまでは大がかりなクレーンやレールなどが必要だったアングルを簡単に実現し、さらにはまったく新しい表現までもが実現されていることがよくわかるデモ映像となっています。
DJI - Sword Battle of Ronins - Samurai Spirits - YouTube
取材当日、京都市内から路面電車に揺られ、松竹撮影所へとやってきました。近くには東映太秦映画村があり、そちらは一般の人が楽しめるテーマパークになっていますが、松竹撮影所は完全プロ向けの撮影所。そのため、なかなか普通の人が足を踏み入れる機会はありません。
セット内に入ると、本当に時代劇の世界にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。数々のスターが多くの作品を残してきたこの場所で、ドローンを使った本邦初のワークショップが行われるというから驚き。この日に来場できた参加者は、間違いなくまたとない機会に巡り会うことができたといえます。
当日のワークショップは、まず松竹撮影所の試写室でデモ映像を見て、実際にセットへと移動してどのように撮影されたのかを見学します。
デモ映像では、3人の浪人による殺陣(たて)を、ドローンによる空撮と、ラジコンカーを使ったローアングルからのカット、そして手持ちのスタビライザーによるカットの3パターンで撮影して、1本の殺陣シーンが造り上げられています。
デモ映像上映後は、実際のセットでの撮影シーンを見学。この日はカラッと晴れて絶好の撮影日和りでした。
まず登場したのがラジコンカーに載せられたカメラ一式。セット内を縦横無尽に走り回ることで、演者に近い場所から迫力のショットを撮影します。
ラジコンカーの上には、3軸で揺れを打ち消して安定した映像を実現するスタビライザー「Ronin 2」のジンバル部分だけをマウントし、その上にRED社製のハイエンドデジタルシネマカメラがセットされています。
ちなみにラジコンカー単体はこんな感じ。1/5スケールのラジコンカーにバネを介してフローティングさせた台の上に、カメラを載せる形になっています。最高速度は時速45kmにも達するとのことで、スポーツ中継に使われることや、アーティストのPV撮影に使われることも多いそうです。
このラジコンカーで実際に撮影をしている様子はこんな感じ。従来の方法だと、セット内にレールを敷いてカメラをトロッコの上にセットし、人力で移動させながら撮影するためにアングルの制限が多いなどの難点がありましたが、このラジコンカーであればセット内を自由に駆け巡って撮影することが可能です。
撮影用ラジコンカー+DJI RONIN 2で殺陣を撮影している様子 - YouTube
次に実演が行われたのが、RONIN 2を丸いフレーム「リグ」にセットし、さらに肩から伸びるアーム「ProArm」につり下げる形で手持ち撮影ができるフルセットでの撮影。ちなみに、リグ付きのRONIN 2とProArmをセットにすると価格は100万円を超えるという完全プロ仕様モデル。
このカメラで撮影している様子はこんな感じ。実際の完成ムービーを見ると非常に安定した映像になっていることがわかります。簡単に動きながら撮影しているようにも見えますが、実はフルセットで総重量は15kgを超えているとのこと。実際に自分でもこの状態で背負ってみましたが、とてもこのカメラマンさんのように中腰で移動できるものではなかったので、まさにこれはプロならではの撮影といえます。
DJI RONIN 2+ProArmで殺陣シーンを手持ち撮影している様子 - YouTube
そして最後に、DJIのドローン「Inspire 2」を使った空撮が行われました。写真左下を見ればわかるように、ドローンを飛ばすパイロットと、実際の映像を見ながらカメラをコントロールする担当の2名体制で撮影が行われます。1人での操縦と撮影も可能ではありますが、パイロットがドローンから目を離すことは法律で禁じられているのと、確実に画をおさえるためには、プロの撮影現場では2名体制は欠かせません。
実際に撮影している風景はこんな感じ。演者とドローンが同じフレームに収まらないために長さを大幅にカットしてありますが、後半のように演者に近いところで空撮を行うこともドローンなら可能というわけです。
DJI「Inspire 2」の空撮で殺陣シーンを撮影する様子 - YouTube
当日の様子をまとめた、DJI公式映像も公開されています。
DJI - Professional Workshop in 京都 - YouTube
実演後は、スタジオ内に設置されたブースでプロダクションに関連するメーカーの製品も展示されていました。
撮影後に行われるノンリニア編集やカラーコレクション、グレーディングなどの機材やソフトウェアを開発・販売しているBlackmagic Designや……
編集作業を巨大なディスプレイ上で行うことが可能なDell Canvasも展示されていました。27インチのディスプレイには映像素材と編集機能が表示され、デジタルペンで直接作業することができるために直感的な操作が行えそう。
映像機器向けのラインナップとしてSIGMAが発表したシネレンズもズラリと展示。
4K映像や、その先の8K映像の撮影ともなると、ストレージに対する要求も飛躍的に高くなります。ということで、耐衝撃性を備えることで厳しい現場でも生き残れそうなG-Technologyのストレージ関連製品や……
プロ御用達、EIZOの液晶モニターも展示されていました。
そしてもちろん、DJIのブースも。最新のInspire 2やRONIN 2などが展示されていました。
Inspire 2の送信機は、同社のPhantomシリーズと同じデザインですが、素材には金属が使われているためにズッシリ感が全然違います。ストラップ必須の送信機ですが、そのぶん信頼性は高そう。
この送信機はカメラを操作するためのセッティングが施されており、右手側にはピントを調節するストッパー付きのフォーカスリングが装着されていました。
また、実際にRONIN 2とProArmを背負ってみる人も多数。取材に訪れた編集部員も実際に持ってみましたが、歩き回っても安定した映像はまさにプロ級、ただし、実際の撮影に必要な体力もプロ級ということで、プロの世界というのはかくも厳しいものかと実感してしまうワークショップでした。
◆おまけ
なかなか足を踏み入れられない撮影所ということで、いろいろ撮影した写真を少しだけ。敷地内には、実物大の建物がこのように建てられています。
この小さな小屋は……
キャスターで移動が可能。
下町っぽい集落にポツンとたたずむInspire 2の強烈なアンマッチ感。「時代考証」を完全に超越した光景には、笑いすらこみ上げてきます。
非常によい味を出していた大八車。
セットはいわゆる「ハリボテ」ではなく、本当に生活する人がいてもおかしくないぐらいしっかりと建てられており、路地に目を移してもまるで本物の集落のような光景が広がっていました。
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