サイエンス

初期段階のがん患者から血液検査で腫瘍由来のDNAを検出する方法が誕生

By Alisha Vargas

初期段階のがんを血液検査で見つける新しい方法が科学者たちの手で開発されました。この血液検査は患者の血液中から腫瘍由来DNAを検出することでがんを発見するというもので、「腫瘍から排出されるDNA」と「がんのバイオマーカーと誤解される可能性のあるDNA」の違いを区別できるという点で、既存の方法とは異なります。

Scientists Develop Blood Test That Spots Tumor-Derived DNA in People With Early-Stage Cancers - 08/16/2017
http://www.hopkinsmedicine.org/news/media/releases/scientists_develop_blood_test_that_spots_tumor_derived_dna_in_people_with_early_stage_cancers


ジョンソン・ホプキンス・キンメルがんセンターの科学者が初期のがんを非侵襲的な方法で検知するために、血液中に存在する微量のがん特有のNAを使い、がんを特定する血液検査方法を開発しました。この血液検査方法により、比較的早期の結腸直腸がん・乳がん・肺がん・卵巣がんを発見することに成功したそうです。

腫瘍由来のDNAを検出可能な血液検査に関する研究報告は、2017年8月16日にScience Translational Medicine上で公開されました。研究ではアメリカ・デンマーク・オランダの3か国に存在するあらゆるステージのがん患者200人から、血液および腫瘍組織のサンプルを集めて調査が行われています。血液検査はさまざまながんに広く関連した58種類の遺伝子内突然変異について、患者の血液サンプルをスクリーニングしたそうです。

具体的には、200人の被験者を対象とした検査で、ステージIおよびステージIIのがん患者のうち、62%を検出することに成功したそうです。がんの種類とステージ別に検出率を見ていくと、結腸直腸(がん患者数42人)のうちステージI(8人)の検出率は50%であったものの、ステージII(9人)ならば検出率は89%、ステージIII(10人)ならば90%、ステージIV(15人)ならば93%とステージが進行するにつれて高い検出率を記録したそうです。肺がん患者(72人)の場合、ステージI(29人)は45%、ステージII(32人)が72%、ステージIII(4人)が75%、ステージIV(6人)が83%の検出率でした。卵巣がん患者(42人)は、ステージII(4人)が75%、ステージIII(8人)が75%、ステージIV(6人)が83%という検出率。 乳がん患者(45人)は、ステージI(3人)が67%、ステージII(29人)が17%、ステージIII(13人)が46%という検出率です。また、被験者の中には44人の健常者の血液サンプルも含まれていたのですが、これらの中でがん由来の突然変異が検出されることはありませんでした。

By Manuel Medina

「この研究は血液中のDNA変化を用いて早期のがんを特定することが可能であり、我々の高精度シーケンシング法が目標を達成する有望なアプローチであることを示しています」と語るのは、研究を主導したジョンソン・ホプキンス・キンメルがんセンターの腫瘍学教授であるビクター・ベルクルスク氏。さらに、ベルクルスク氏は「ヒトの腫瘍に存在する遺伝的変異を知らないまま、がんの存在を予測できるような血液検査を開発することが課題でした」と研究の課題点についても語っています。

研究に携わった同校の大学院生であるジリアン・ファレン氏は、研究のゴールはがんを正確に検出するスクリーニング法を開発することであり、不必要な過剰検査や過剰治療につながるような「誤った診断」が起こるリスクを低減することとしています。この血液検査は、がん由来の突然変異と血中細胞内で起きる遺伝的変異の中で異常を発見する必要があるため、非常に複雑な作業であると説明しています。なお、新開発された血液検査では生殖細胞系列の突然変異については排除しているそうです。これは、生殖細胞系列の突然変異はDNAの変化ではあるものの、個体間の正常な変異の結果として生じるものなので、通常は特定の癌に関連していないため。

By AJC1

ベルクルスク氏らにより新しく開発された血液検査方法は、がんの早期発見につながる有望な結果を示しましたが、より多くの人々の手で検証される必要があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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