火山の噴火で失われたはずの「世界八番目の不思議」ピンクテラス&ホワイトテラスは火山灰に埋没して残っているかもしれない
The Terraces, 1885, by Charles Blomfield. Purchased 1946. Te Papa (1992-0035-1647)
かつて「世界八番目の不思議」と称えられたものの、火山の噴火によって失われたと思われていたニュージーランドの名勝「ピンクテラス&ホワイトテラス」。2011年の調査で湖底に沈んでいるのが「再発見」されたのですが、のちにやはり噴火の影響で大半が破壊されていると結論づけられていました。ところが、新たな資料に基づいた調査で、テラスの場所を特定したと研究者が報告しています。
Forensic cartography with Hochstetter’s 1859 Pink and White Terraces survey: Te Otukapuarangi and Te Tarata: Journal of the Royal Society of New Zealand: Vol 0, No 0
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/03036758.2017.1329748
Lost natural wonder in New Zealand may be found, say researchers | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2017/jun/12/lost-natural-wonder-in-new-zealand-may-be-found-say-researchers
ニュージーランド・北島の北部にあるロトマハナ湖畔にはかつて「ピンクテラス&ホワイトテラス」という温泉があり、景勝地として知られていました。
名前に色の名前が入っているようにケイ酸(シリカ)が飽和した状態のお湯が地熱で噴き上げられて形成されたもので、ホワイトテラスは広さ30ヘクタールで高低差は30m、ピンクテラスの低いところは適切な温度になっていたので入浴が可能だったそうです。ニュージーランドの先住民族であるマオリからは、ピンクテラスは「Te Otukapuarangi」(雲海の温泉)、ホワイトテラスは「Te Tarata」(入れ墨の岩)と呼ばれていました。
ニュージーランドの画家チャールズ・ブロムフィールドが1885年に描いたピンクテラス
The Terraces (the pink terraces), 1885, by Charles Blomfield. Purchased 1946. Te Papa (1992-0035-1649)
同じくブロムフィールドが1885年に描いたホワイトテラス
The Terraces (the white terraces), 1885, by Charles Blomfield. Purchased 1946. Te Papa (1992-0035-1648)
初めてこの地を訪れたヨーロッパ人はドイツの博物学者・探検家だったエルンスト・ディーフェンバッハだといわれています。彼は1841年から1842年にかけてニュージーランドを探検して、翌1843年に「ニュージーランドの旅」という本を書き、この中でピンクテラスとホワイトテラスについて触れました。ニュージーランドを訪れたヨーロッパ人の間では噂になる景勝地だったようで、ニュージーランド政府観光局はテラスを「ニュージーランド初の観光名所」と表現しています。世界各地から、人々が船でニュージーランドへやってきて、さらに陸路を150km経てテラスを訪問するようになり、「世界八番目の不思議」とも称えられました。
ちなみに、世界八番目の不思議とは「世界の七不思議」につぐ建造物などを指す言葉。「世界の七不思議」というとギザの大ピラミッドをはじめ、なにやら「超文明」的な香りがして、名勝・景勝地がそれに次ぐものとして考えられることに違和感を覚える人がいるかもしれませんが、元ネタは発明家であるビザンチウムのフィロンが書いた「世界の7つの景観」。英語の「Seven Wonders of the World」が「世界の七不思議」と訳されたために変なニュアンスがついただけで、もともとは「必見のもの」「素晴らしいもの」ぐらいの意味合いです。
ピンクテラス&ホワイトテラスの盛況は1886年6月10日夜、湖の北東に位置するタラウェラ山が噴火したことで終焉を迎えます。周囲の7つの集落が飲み込まれ、湖は流路が遮られて水位が40m上昇し、以前の20倍の大きさになりました。ピンクテラスとホワイトテラスも、この噴火で失われたと考えられていました。
湖底からテラスが「再発見」されたのは2011年のこと。研究者らが自律型無人潜水機(AUV)を用いて2月に行った湖底調査で、水深50~60mの泥の層の下にピンクテラスの一部とみられるものが見つかりました。さらに、6月にはホワイトテラスの一部も見つかりました。
by Julian Thomson、GNS Science
ただ、この再発見に対して、上昇した水位とテラスのあった場所を考えるとテラスは水深10mぐらいのところで見つかるはずなので、調査で見つかったものは19世紀に「世界八番目の不思議」と称えられたテラスではなく、先史時代のテラスではないかという指摘が行われました。このため研究者らは5年かけて内容を検討、やはりテラスは噴火で大部分が破壊されてしまったと結論づけました。
Multi-pronged investigation lays out the latest word on Lake Rotomahana - 10/04/2016 / Media Releases / News and Events / Home - GNS Science
https://www.gns.cri.nz/Home/News-and-Events/Media-Releases/Multi-pronged-investigation-lays-out-the-latest-word-on-Lake-Rotomahana-10-04-2016
その後、新たに研究を行ったレックス・バン氏とサシャ・ノルデン氏は、地質学者のフェルディナンド・フォン・ホーホシュテターが1859年4月に行ったロトマハナ湖の測量図に着目しました。これはホーホシュテターが日記に記していたもので、日記は子孫によって保管されていて、2010年にノルデン氏が地下室で発見しました。
バン氏とノルデン氏は測量図から「ブラック・テラス・クレーター」と「テ・アリキ・データム」と呼ばれる場所を推定。水路、谷、植生による検証を経て、テラスは湖底ではなく、火山灰に10m~15mほど覆われたところにあるという答えを導き出しました。
バン氏とノルデン氏は発掘調査を主張していますが、ホーホシュテターの測量図の正確性や日記の真贋の検証、さらに現地の土地所有者やニュージーランド政府の方針などもあることから、すぐに次のステップに移れるわけではないようです。
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